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ゆめ か うつつ か
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南の島 だった、

あたしはごとごとと揺れるトラックの荷台でしとど流れる汗をぬぐい同乗する彼女の横顔に見入った、むせかえるような緑が延々と続く単調な景色を眺め彼女は言った、「あなたの予言どおりになったわ」

あたしは彼女のことを知らなかった、そもそもなぜ自分がこんなところに居るのかよくわかっていなかった、

眠る時は確かに冬の東京のアパートの一室に居たはずなのに目覚めたら南の島でトラックに揺れている…

しかしその手の違和感はあたしがいつも現実に対して感じているものだった、ひょっとしたらこちらのほうが現実なのかもしれないと思いながらあたしは「あなたとは初対面だったように思う」と言った、彼女はくすくす笑って

「あなたはわたしにこの人形と予言をくだすったわ」

と 言い、手のひらくらいの大きさの奇怪な人形を取り出した、それは布と糸だけでできている素朴な人形だった、右手が異様に短く左手には長い剣を持っているその人形は、しかし、確かに見覚えがあるような気がした。

「わたしは近く嫁ぎます、あなたのお告げどおりに」

彼女は言った、黒い長い髪が涼しげに揺れた、幸福そうだった、唐突に、あたしはこれから彼女の結婚式に行き彼女達を祝福する役目を担っているのだと思い出した。

唐突にあたしはあたしを理解した、

「水の匂いがする」 あたしは言った、

「スコールがくるよ」

 

 

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