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ゆめ か うつつ か
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日いちにちと厳しさを増す寒さに木々が色づいてくる季節だった。

炎のように燃え立つ楓、黄金に輝く落葉松、渋みをとどめる椿の樹の、とりどりに重なり連なる錦の森を縫うように白金色のボルボが疾走している。

乗っているのは二人の女。輝くような金髪の女が器用にハンドルを操ってくるりとカーブを曲がると、冷たい銀の髪の女が無言で窓を開けてみせた。たちまち冷たい空気が、温かい車内を切り裂いてゆく。

「豊かな森ね。豊かで、そしてとても儚い」
銀色の女が優しく吐息を漏らすと、その息はたちまち木枯らしとなってひるひると空の彼方に去ってゆく。

「おやめ」。金色の女が眉をしかめた。「ここはまだあたしの領域だ」。銀色の女が笑った。「いや、残念だけどここいらはもうあたしの領地だね。ほら、あたしのベンツが停めてある」。

つややかに光る銀黒色のベンツの前に、ボルボが緩やかに停まる。「やれやれ、ついこの間、ここに赤のポルシェと来たばかりなんだがね」。「すぐに緑のクーパーが追いついてくるさ、あの風のように軽やかなやつが」。

銀色の女が大地を踏むと、草も木も薄い銀色の膜に包まれる。華奢で儚げな霜に覆われた地を、黒のベンツが重々しく去っていく。







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