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ゆめ か うつつ か
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その海沿いの街では、冬になると赤い雪が降った。

「昔、この街の巫女が海の向こうから来た男と恋をしたの。時が来て男は船に乗り街を去った、遠くとおく、新たな楽土を目指して。巫女は狂気のうちに嵐を呼び寄せ、男の船は空に巻き上げられた。不実な男は風にさらわれ、その身体は永遠に虚空をさまようことになった。そうして冬になるとこの街にやってきてはそのばらばらになった身体から血を滴らせるのよ」

「かなしい話だね」
ぼくは女の瞳を覗き込んだ。女は弱々しくぼくを見詰め返すと、次の瞬間にはもうこときれていた。

雪が降り始めていた。

世界はほの明るい桃色にけぶりはじめ、ぼくはやつざきにした女の手足、すんなりと美しい身体を庭のそこここに飾りつける。赤く染まった君、もの言わぬ君の残骸に、新しい赤が積もってゆく。

ところでこの度裏切りを犯し血を流したのは女の方だったが、虚空ならぬ地上に取り残された男は、一体いつまでさまよえば良いのだろう?


目の前は ただ 一面の

赤。



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