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ゆめ か うつつ か
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本当に水、米、パンの順番で無くなっていくのにはびっくりした。買いだめに走る人々を見ると、人間の生への執着の凄まじさがわかる。

とりあえずパンは自家製でまかなうことにした。こういうとき、焼き機があると便利。


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さてこのたびT電のかくも見事な「計画」「停電」のおかげでみんごと「出勤難民」になりおおせたわけだが・・・・、

出勤・帰宅に何千円もかけてちゃやってらんねえーよ、と思って今日はお泊り支度でやってきた、ら、職場が明日は「自宅待機」になった。

帰らせてくれた上司は泣きたい気持ちが高じて笑っていた、気持ちはいたいほどわかる。

いや、、被災者の方々に比べればこんな苦労心労、笑い飛ばせる範囲だろう。先日読んだ小説の一節を思い出す、「彼女は君に代って煉獄を歩んでゐるのだ。見ろあの悲しい足取りを」。そう、彼らは今、わたしたちに代わって煉獄を歩んでいる。悲しくも確かな足取りで一歩一歩、その歩みの痕にいつか花咲くことを信じて。





震災直後、祖母の様子を見に行った父に、彼女は語った。

「88年前、わたしが5歳のころ、関東大震災が起こったの。そのときわたしには7歳と10歳の兄が居てね、そのうちひとりは、戦争で死んでしまったけれど。わたしは、針仕事をしていた母のそばで、二階で、遊んでいたの。そうしたらぐらぐら揺れてね、それでお母さんと、『おにいちゃんたち、またお相撲してる』って笑ったの」。

祖母は長野の山深い地の産で、だからたいした揺れもなかったのだろう。
敗戦時の満州を駆けぬけた烈婦(死語?)だけあって、今度の震災にもまったく動じていなかったそうだ。



時経ればこれも歴史の一頁、などて目方は日本列島。



わたしもいつか、祖母くらい達観したおばあちゃんになれるかしらねえ。


 

電灯が消え、歌舞音曲も控えめな今の日本はまるで国まるごと喪に服しているかのようだ。

それにしても日本人は本質的にストイックなのだと思わずにはいられない。未曾有の災害を耐えうるためには、かつて宮本常一が『忘れられた日本人』『家郷の訓』で描いていたような、或いは小泉八雲が称賛していたような、忍耐、質素、禁欲、善意というような美徳が最大級に発揮されなければならないだろう。そして既にその一端は明らかだ。

良くも悪くも日本人は、つくづく団体でなければ生き残れないシマウマのような草食動物の性質を持っていると思う。資本主義、個人主義が爛熟腐敗しギスギスしていた一週間前よりもあきらかに今の日本は輝いている。敗戦から奇跡の復興を果たした日本のこと、災害に一致団結し立ち向かう『みんなで頑張る』という思いが、何より日本を建て直す第一歩なのかもしれないと思う。

とにもかくにも、この震災で明らかに日本は新しい区切りを迎えたと言えるだろう。それは戦前戦後の時代区分にも匹敵しうるのではないだろうか。


わたしは同僚のKと神保町のドトールでコーヒーを飲んでいた。

旅の話や休暇中の過ごし方について話題もあらかた出尽くしたころ、かたかたとコーヒー茶碗が揺れ始めた。おや地震だ、と余裕に構えていたのもつかのま、揺れはだんだん酷く大きくなってゆく。硝子越しの往来では人が凍ったように立ちつくしていた。直感的にやばいと思い、Kの手を牽いて外に出、四つ辻にそして更に広い道へと逃れた。地面はゆらゆらと揺れて頼りなく、信号機が撓み、高層ビルがしなう。


崩れた本の山を横目にようよう会社に帰ると、社内も騒然としていた。既にコンビニからはおにぎりやパンが消え、電話も繋がらない。余震のなか他にできることなく仕事を進めた、テレビからはひっきりなしに地震速報。

電車も全線不通、タクシーも配車不可能となり帰宅を諦めたころ、会社から毛布や缶詰めが配布され、あとは皆でテレビを眺めて過ごした。相次ぐ地震警報、やがて訃報に次ぐ訃報。「死亡しました」ということばをこんなに聞くことがあるとは。打ち寄せられた遺体の数に、悪夢を見ているような気分。

明け方、私鉄が動き出したのを見計らい帰宅、わらわらと集まってきた勤め人はみな一様に暗い顔。隙間を詰めて席をつくってくれる、その思いやりにも涙が出そうになる。
途中電車の速度制限が解除され、車掌がしどろもどろに「今よりは速度を出して運転しますので、通常よりは遅いのですが、しかし多少は早めに運転します」などと歯切れの悪いアナウンスをしていた。


朝日が上るころ、駅に降りたった。身を切るような寒気は多分気候のせいだけではないだろう。
冷たい朝だった。





ツアー行程が早めに終わった夜、タクシーを飛ばして七階建ての書店、上海書城へ。着いたのが閉店20分前で、閉店合図の中国伝統音楽の銅鑼と太鼓がけたたましく鳴り響くなかを、あわただしく見て回る。日本ならばさしずめ「蛍の光」といったところか。お国柄だろうが、こんな選曲じゃてんでしんみりしないしましてや帰宅を急ぐ(ホーム・スイート・ホーム)気にもなれやしない、と苦笑。
写真集二冊、連環画(あちらでいう子ども用絵本)一冊の首尾。

台湾同様、外国文学の売れ筋に日本ものが多い。漫画コーナーといい、娯楽、エンタメ系は日本がダントツ独走状態。喜ぶべきことか否か。

東野圭吾がベスト10中三冊ランクインの快挙。そして何故か今さら黒柳こてつの『窓際のトットちゃん』が4位。こてつさん凄いな!


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