忍者ブログ
ゆめ か うつつ か
[1271]  [1270]  [1269]  [1268]  [1267]  [1266]  [1265]  [1264]  [1263]  [1262]  [1261
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

わたしは同僚のKと神保町のドトールでコーヒーを飲んでいた。

旅の話や休暇中の過ごし方について話題もあらかた出尽くしたころ、かたかたとコーヒー茶碗が揺れ始めた。おや地震だ、と余裕に構えていたのもつかのま、揺れはだんだん酷く大きくなってゆく。硝子越しの往来では人が凍ったように立ちつくしていた。直感的にやばいと思い、Kの手を牽いて外に出、四つ辻にそして更に広い道へと逃れた。地面はゆらゆらと揺れて頼りなく、信号機が撓み、高層ビルがしなう。


崩れた本の山を横目にようよう会社に帰ると、社内も騒然としていた。既にコンビニからはおにぎりやパンが消え、電話も繋がらない。余震のなか他にできることなく仕事を進めた、テレビからはひっきりなしに地震速報。

電車も全線不通、タクシーも配車不可能となり帰宅を諦めたころ、会社から毛布や缶詰めが配布され、あとは皆でテレビを眺めて過ごした。相次ぐ地震警報、やがて訃報に次ぐ訃報。「死亡しました」ということばをこんなに聞くことがあるとは。打ち寄せられた遺体の数に、悪夢を見ているような気分。

明け方、私鉄が動き出したのを見計らい帰宅、わらわらと集まってきた勤め人はみな一様に暗い顔。隙間を詰めて席をつくってくれる、その思いやりにも涙が出そうになる。
途中電車の速度制限が解除され、車掌がしどろもどろに「今よりは速度を出して運転しますので、通常よりは遅いのですが、しかし多少は早めに運転します」などと歯切れの悪いアナウンスをしていた。


朝日が上るころ、駅に降りたった。身を切るような寒気は多分気候のせいだけではないだろう。
冷たい朝だった。





PR
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
ryu
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
忍者ブログ [PR]