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ゆめ か うつつ か
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 テールランプが踊る。



バケツをひっくり返したような雨がばしゃばしゃ降ることが多くなった。異常気象だというけど、雨季のインドネシアでは毎夕こんなかんじにスコールがあったぞ。「熱帯」の定義は「椰子が生育する環境であること」らしいが、わたしの実感から言うと、椰子が生い茂る地域の人々はみなゆったり生きているので、日本が椰子の葉揺れる南国になったらそれはそれでステキかもしれない。

まあ熱帯って虫はやたらでかいわ(特にゴキブリ)蚊も年中居るわ、毒蛇なんかも居るし、そういう意味ではわずらわしさ全開だけど。

全然関係ないけど、スコールっていうカルピスソーダみたいな炭酸飲料(東日本ではマイナー)があって、てっきりスコールのあるような熱帯雨林地方出身の飲み物だと思ってたら「スコールとはデンマーク語で乾杯の意味です」って書かれており、へーそうなんだデンマーク出身の飲み物なんだ、と思いきや、思い切り日本の、しかも宮崎県で開発されてたのを、こないだ知った。

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大学のころ、民俗学の演習で、分野は問わず・自分が興味ある研究者について調べて発表するというものがあった。柳田・折口あたりの有名どころから、南方熊楠や高群逸枝、はてはクリステヴァなんかも飛び出して、けっこう面白かった。

それでわたしは、宇野円空という戦前の宗教学者について調べた。

何でこのひとを選んだのかというと、まあいろいろあるけど、一番の理由は当時マレーシアに長期旅行に行ったばかりで、マレーシアを対象にした研究者って居ないかなー、居るわけないか、と冗談のようなつもりで調べてみたら、この人が『マライシアにおける稲米儀礼』とゆう本を書いていたから。

円空さんは、戦時中に空襲で自宅および研究の大半が焼けちゃって、失意のうちに亡くなられるという痛ましい最期を終えられたのだけど、そういや修論でわたしが扱った文学者(を目指して、結局なれなかったひと)も、最終的には戦争でなにもかも全てを無くしてしまったひとだった。

なんか、そういう、地味な徒労のひとに、こころうたれる傾向があるらしい。

蒲松齢やカフカやルルフォなんかが好きなのもそういう理由かなあと思う、まあこのひとたちは立派に評価されているが。んーでもやっぱ、少数派の中の評価にすぎないか。

百年でも二百年でも残る本のことをわたしは書物だと思っているが、今の時代、そういう書物を読む人間は既に少数派だろう。

 

そういうわけでいつもどおりコーヒーの香りと傍らにmがうずくまる気配で覚醒し、お昼のニュースを眺めつつ朝餉を食し、掃除や後片付けをしつつMTVなどを観てからでもギリ間に合いそうだったので緑の牧場(まきば)へ。

   

1200円で滞在時間は一時間たらず。いまどき映画館でももうちっとコストパフォーマンスたけえよ、と思いつつ、でも一応、牛も羊もヤギも見れたしミルクは冷たくて濃厚で旨かったしまあmと一緒だったしそれがなによりまあいっか、とか思った。mはなんか金色の牛のオブジェをほしがってた。おうし座だからか? そういやわたしは小さい頃サソリのキーホルダーを手に入れて悦に入った。

牧場の牛乳ってほんとなんであんな旨いんだろ。







もはや毎月恒例となりつつある上州行。

今回はmんとこの造園のお手伝いのつもりで作業着完備で行ったのに、二日とも雷雨に降りこめられっぱなしで、もしも怠惰の神というものがおられるのなら、怠け病がしみわたるよーな御采配ぶり。いやまあこちらもなかなか、寝過ごし過ぎたのですけれど。

 雷雨のあとの夕陽。いっそうすがすがしい。

 土地の名物、豚しゃぶ。あぶらみが、とろーりやわらか。
 ひとしきり味わった後、ラーメンを入れて完食。

この直後、雷鳴とどろくなかを、歓声もろとも水しぶき上げ車まで走った。雷雨は好きだが、それは恐怖にうらうちされた、いわゆる克服する愉しみなのかしら と思うと、つみぶかさに震える。

「ふたりで打たれて死ぬのならそれもいい」

って、mが言って、

ちょっと陶然としたのでした。






 

でかいビルが取り壊されているのは、なんだかちょっと印象深い。
自分にはあんなもの、作ることすらままならないし、・・・・・・・そもそもどうやって作ったのだろう?

わたしに作れるものなんて、日々のごはん、料理、ちっぽけな食卓上の、児戯に等しい構造物、

だけど、

それが破壊(=食)されるときのことを考えてせいいっぱい、味覚上の化学反応を考慮したつくりにしている。

こんぶだし と かつおだし、動物性と植物性の出汁が調和するように、
ベーコンとキャベツを炒め、卵とトマトを煮て、鶏肉と茄子を揚げる。

ああいうものも、作るときには壊すことを考えているんだろうか と思ったら、なんだかとても厳粛な気分になったのだった。

この世界に 人 というものがつくられたとき、既に、滅ぼされることを考えられていたのだろうか などと思って。

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