ゆめ か うつつ か
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
①わたしは三十年来行方不明である、伯母の住まいを訪れた。
夏の暮れかた、湯上がりに裸足のままでベランダに消えた伯母は、そのときかぞえで二十二だったという。
「暑い日だったよ」
と、母は懐かしそうに語るのだった、振りかかった突然の不幸に戸惑い嘆く時期はとうに過ぎただ運命に従う人間の穏やかさだった。わたしはそんな母に不満を覚えた。伯母の物語を過去のことだと思いたくなかった、もしかして今再びひょっこり現れるかもしれないではないか。何にせよいわくのある家を訪れることに、冒険めいた感情を抱いていたのだ。
今は住む人もまばらな寂れたアパートの、伯母の部屋は四階だった。黴臭いソファに横たわり寝返りをうつと、たちまち眠気がやってくる。わたしはそのままうとうとと眠りこんだ。
夜半過ぎだったろうか、背後でかたりと音がしたかと思うと、瞬く間に気配が増えた。すわもののけか、と思うわたしの耳に、ブツブツニャアニャア、ラジオのノイズのように聞き取れない喧騒が聴こえてくる。楽しげに歌いさわぐ、そのささやかな宴を背中に聴きながら、わたしはいつしか深い眠りに落ちた。
夜が明けると、ベランダにはたくさんの足跡が入り乱れていた。
そしてわたしはわたしが神隠しに遇わなかったことを、少しだけ残念に思うのだった。
②わたしは夕暮れの海辺に佇んでいる。ところせましと屋台が並ぶチャイナタウンを抜けたところに、思いがけなく海が開けていたのだ。やわらかな砂の上に様々な貝が落ちている。戯れに幾つか手のひらに乗せてみた、穴の空いたもの、渦を巻いたもの、いつしか夢中になって拾い集めた。
そのうちに、紫色の薄い殻からころんとましろい粒が転げ落ちた。それは針の頭ほどしかなかったが、紛れもなく真珠だった。
小さな幸福感とともにわたしは顔を上げた。なまぬるい潮が満ちてわたしの膝を濡らす。
じきに夜だった。
*
昨日は通り魔が無差別射撃しているのを横目で眺めつつ、会社に急ぐ夢を見た。いくら走っても会社にはたどり着けず、通りすがりに梅林でよい香りの梅の花をもらったり、ソーダアイスを食べたりした。
夏の暮れかた、湯上がりに裸足のままでベランダに消えた伯母は、そのときかぞえで二十二だったという。
「暑い日だったよ」
と、母は懐かしそうに語るのだった、振りかかった突然の不幸に戸惑い嘆く時期はとうに過ぎただ運命に従う人間の穏やかさだった。わたしはそんな母に不満を覚えた。伯母の物語を過去のことだと思いたくなかった、もしかして今再びひょっこり現れるかもしれないではないか。何にせよいわくのある家を訪れることに、冒険めいた感情を抱いていたのだ。
今は住む人もまばらな寂れたアパートの、伯母の部屋は四階だった。黴臭いソファに横たわり寝返りをうつと、たちまち眠気がやってくる。わたしはそのままうとうとと眠りこんだ。
夜半過ぎだったろうか、背後でかたりと音がしたかと思うと、瞬く間に気配が増えた。すわもののけか、と思うわたしの耳に、ブツブツニャアニャア、ラジオのノイズのように聞き取れない喧騒が聴こえてくる。楽しげに歌いさわぐ、そのささやかな宴を背中に聴きながら、わたしはいつしか深い眠りに落ちた。
夜が明けると、ベランダにはたくさんの足跡が入り乱れていた。
そしてわたしはわたしが神隠しに遇わなかったことを、少しだけ残念に思うのだった。
②わたしは夕暮れの海辺に佇んでいる。ところせましと屋台が並ぶチャイナタウンを抜けたところに、思いがけなく海が開けていたのだ。やわらかな砂の上に様々な貝が落ちている。戯れに幾つか手のひらに乗せてみた、穴の空いたもの、渦を巻いたもの、いつしか夢中になって拾い集めた。
そのうちに、紫色の薄い殻からころんとましろい粒が転げ落ちた。それは針の頭ほどしかなかったが、紛れもなく真珠だった。
小さな幸福感とともにわたしは顔を上げた。なまぬるい潮が満ちてわたしの膝を濡らす。
じきに夜だった。
*
昨日は通り魔が無差別射撃しているのを横目で眺めつつ、会社に急ぐ夢を見た。いくら走っても会社にはたどり着けず、通りすがりに梅林でよい香りの梅の花をもらったり、ソーダアイスを食べたりした。
一年ほど前から右上奥歯に違和感を感じてて、虫歯だったらやだなあと思って医者には行かないでいた。
逆じゃね?と思う人は正しい。わたしは正しくない人間なのでその辺は曖昧にしときたかったとゆうか、虫歯と断定されるくらいなら痛い方がマシとゆうか、とにかく判断の仕方が明らかに間違っているのだが・まあ・そこは虫歯をこじらせて亡くなった伯父に似たのだと思う。
それでも眠れないくらい痛みがひどくなり、飲み食いが辛いほどになったので、もはやこれ迄、と覚悟を決めて医者に行った。
虫歯じゃなかった。
が、親知らずが他の歯肉を圧迫してて口内が腫れあがってると言われた。
虫歯じゃないんだ!わーいわーい!って思いながらガリガリ、歯を削られて帰宅。
何かこう、負けたような気分になるんだよ虫歯って。何に負けるかって自分の不摂生とかそういう類の、まあ下らない意地なんだけどさ。
逆じゃね?と思う人は正しい。わたしは正しくない人間なのでその辺は曖昧にしときたかったとゆうか、虫歯と断定されるくらいなら痛い方がマシとゆうか、とにかく判断の仕方が明らかに間違っているのだが・まあ・そこは虫歯をこじらせて亡くなった伯父に似たのだと思う。
それでも眠れないくらい痛みがひどくなり、飲み食いが辛いほどになったので、もはやこれ迄、と覚悟を決めて医者に行った。
虫歯じゃなかった。
が、親知らずが他の歯肉を圧迫してて口内が腫れあがってると言われた。
虫歯じゃないんだ!わーいわーい!って思いながらガリガリ、歯を削られて帰宅。
何かこう、負けたような気分になるんだよ虫歯って。何に負けるかって自分の不摂生とかそういう類の、まあ下らない意地なんだけどさ。
山菜採りに行った父が、採った山菜を鍋ごと小屋に置いてきた(!)ので回収してはくれまいかという打診を受け、急遽出動。
もともとmとドライブに行く予定だったので、ちょっと遠出だけどまあいっか・と高速を120キロで飛ばして二時間半ほど。山の上に車で上ると、みるみる雲に巻かれていくのがちょっと楽しい。
対向車が見えないほどの濃霧。
山小屋の庭にも霧が降りてきていた。やわらかな水の匂いにひたる。

小屋はつつじが盛りだった。無事山菜を救出し、時間の都合で賞味一時間ほど休んでから帰路につく。
それでも温泉には寄った。おにぎりなどぱくつきながらのんびり帰宅。渋滞はいただけないが、高速1000円はよいなあ。。もっと活用したい!
*
花の亡骸。
もともとmとドライブに行く予定だったので、ちょっと遠出だけどまあいっか・と高速を120キロで飛ばして二時間半ほど。山の上に車で上ると、みるみる雲に巻かれていくのがちょっと楽しい。
小屋はつつじが盛りだった。無事山菜を救出し、時間の都合で賞味一時間ほど休んでから帰路につく。
それでも温泉には寄った。おにぎりなどぱくつきながらのんびり帰宅。渋滞はいただけないが、高速1000円はよいなあ。。もっと活用したい!
*