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ゆめ か うつつ か
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漆黒の 闇に浮かぶは匂いなりけり。





満月に梔子(くちなし)。共に黙(もだ)し易く、かつ饒舌。


(満月の夜道、芳しき香を辿り、くちなしの白い花を探りあてた歓び)





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遅い朝、欠伸をこらえながら階下にゆくと、母がバタバタと走り回っていた。傍目にも明確に取り乱しているようなので尋ねると、95になる祖母が倒れたという。
仕事の都合をつけてもらい搬送先の病院まで車で駆けつけると、青白い貌でぐったりと目もろくに開けられぬ祖母が様々な管に繋がれていた。検査、入院とことこまかな手続きは母に任せわたしは家族や親類への連絡係に徹し、なお予断をゆるさぬ祖母に後ろ髪を引かれるように仕事へ向かった。

次の日の朝、ぎらぎらするような空の下、冷たい汗をかきながら祖母をおとなうと、繋がれた管をすべて自分で引き抜き「ご飯が食べたい、命が短くなってもいいからご飯が食べたい」などと我が儘を言うほど回復していた。

ばあちゃんスゲーわ。


裁縫は苦手だったし今でも得手ではない、が、手芸小物は好きで、何を作るという当てもないのについ買い込んでしまう。

着なくなった洋服の釦やアップリケ、壊れたアクセサリーやカバンの部品なども無闇と取っておくものだから、いつの間にかそういったパーツが溢れんばかりになっており、片付け目的も兼ねてそれらを組み合わせ、パズル感覚でヘアアクセサリーを作ってみた。

フェルトの土台にリボンを束ね刺繍パーツを載せて縫い込み、後ろにスリーピンをボンドで接着して出来上がり。

――釣竿が欲しいなあ

――生の魚に触ったこともないのに?

――人魚を釣るのさ、この滝の下は竜宮に続いているんだろう

――よほど長い糸が要るんだろう

――そりゃそうさ、ただの釣竿や糸じゃあいけない。百年にいちど、花を咲かせる直前の若竹を伐り、黄金の蚕から取れた絹糸に処女の髪の毛を寄り合わせた糸を数尋。餌はなにがよいかねえ、女を釣るにはやはり宝石?

――バカだな竜宮なんてのは、白に血赤に桃色さんご、虹色きらめく黒蝶貝、ひかり輝く真珠の大小が惜しげなく散りばめられた宝物殿と相場は決まってる。だいいち人魚だか鮫人だかは、泣けば涙がしらたまの真珠になるってんだ、土臭い宝石なんざ目もくれないよ

――それじゃあやはり食い気で釣るか。人魚の好物はいったい何だろう、やはり魚かしら

――いやむしろ、人のほうじゃないか? やつらはきっと、海に落ちた人の軟らかい肉を食いつけているに違いない……



底知れず落ち込んでゆく吹き割れの滝を眺め、そんな話をする夢をみた。


別に片眉剃り落として修行してるわけではなく、二日くらい前から山(小屋)に(引き)こもり中。

常時20度くらいなので非常に快適。

 小指の爪の先くらいしかなかったすみれ。

 しらかば。

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