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ゆめ か うつつ か
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姉は水を、私は地図を、弟は兄の死体を曳きながら、砂漠を歩いていた。

そこは真昼の国で、太陽はいつでも真上にあった。ぼろぼろになったぶあつい布をすっぽりと被り日差しを除けながら私達はただ歩いた、地図に示されているのは「始まり」と「終わり」だけで、北も南も東も西も何も無い…

とどのつまりあてどなく私達は歩いていた、お互いに言葉を交わすことも無かったが私達は安らいでいた、沈黙を守ることは自分を守ることであり兄への弔い…兄の死体はひどい暑さにも拘らず・腐りもせずに砂の上を音も無く滑った、ひとすじの跡が砂丘に、とおく、しるされていく。

そしてながいこと歩いた後に唐突に私は気づく、砂は砂でなく氷だったのだと。この事実を皆に告げようと振り返る私の目に、兄の死体がゆっくりと起き上がるのが見えた。

起きてから一番最初に思ったこと。「お兄ちゃん殺してごめん」。

夢の中ではなぜあんなにも穏やかに速やかに全てを受け容れられるのかしら…現実では、なにひとつ、上手に受け容れることなどできないのにね。

 

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