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ゆめ か うつつ か
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父が筍を掘っている。

空を覆い隠すほど伸び満ちた竹林は昼だというのに薄暗く、風に乗りときおり降りこぼれる光のなか、父はざくざくと軽快に小さな鍬で足元の土を堀り返してゆく。筍はたちまち山のように積みあがり、見つめるわたしは湿った土のにおいにふわりと包まれる。

今まで筍が植わっていたあとはぽっかりと黒いうろになり、そこにわたしは見覚えのある腕輪を見つける。それはわたしがまだおさないころ、お守り代わりに姉にもらった銅の腕輪で、手に入れたばかりのころのように真新しいあかがね色に光っている。おやなぜこれがこんなところにあるのだろう、これはもうずっと以前になくしてしまったものを。そう思いながら土にまみれたそれを眺めた。寝るときも湯を使うときも肌身はなさずにいた、川遊びの折、知らないうちに流してしまったとばかり思っていたが、しかし、こんなところでわたしが見つけ出すまで待っていてくれたとは。

小さな記憶がほどけた途端、うろからは次々といろいろなものが出てくる。おもちゃの時計やネックレス、人形にお気に入りだったペン。淡く燐光を発するそれらは、いずれもなくしてしまった宝物たちだ。

素手で掘り返すと、土はスポンジケーキのようにあっけなく崩れた。うろの中に半ば埋没しながら、やわらかい土にまみれた思い出、なくしたはずの宝物を、わたしは夢中でかき集める。









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