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ゆめ か うつつ か
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友人と街を歩いていると、華奢な車を牽いて、見事な白馬が足音高くやってくる。

美しい仮面に中世ふうの衣装をつけた男がしなやかな動作で馬車から降り立つと、たちまちのうちに荷台を広げ始めた。びろうどを張った台の上にはところ狭しと仮面が並べられる。

意匠はさまざま、犬猫鳥の愛玩動物から、白馬や牝牛、獅子に虎、美女や青年、老婆の面もある。そのどれもが素晴らしく凝ったつくりで、思わず手にとって眺めたくなるようなできばえ。

そして男は鈴を振って歌い始めた。「さあいらっしゃい、着ければその仮面のとおりになれる魔法の仮面、試すだけならお代はいらない、世にも珍しい仮面売りだよ」。

「面白そうじゃないか、ちょっとだけ見ていこう」と友人はわたしを引っ張ってその店にゆくと、鳥の仮面を手に取った。

「よくできてるな、魔法だなんていわなくてもこれは売れるぜ」。友人の言葉に仮面男がへりくだる。

「いえ、いえ。その魔法が特別なのでして。さあ、ためしにお着けください、お連れの方も」

 友人は無造作に鸚鵡の面を取り、額に着けた。途端、その背にみるみる翼が生え、自由自在に空を飛ぶ。わたしは息を呑んでその光景を見た。仮面男はしきりにうながす。

「さ、あなたも、さあどうぞ、ほらこのカナリヤなんてどうです。お友達は鸚鵡、あなたはカナリヤ、お揃いで着けるのはいかが」

 驚異と感嘆のうちに、言われるがまま、わたしは仮面を手に取ろうとした。そのとき突然馬が高くいななき、鸚鵡となった友人は驚いて空から墜落、どさりと倒れて動かない。あわてて駆け寄るわたしよりはやく、いつの間に店じまいしたのか、仮面男が鳥を攫う。

男は逃げ去り、毒々しい呟きだけが残される。

「ち、馬のやつ、まだ人の意識があるのか。あと少しでもう一匹手に入ったのに。まあいい、今日の獲物は鸚鵡一羽、もとが人間だから言葉を覚えるのも早かろう。高く売れるさ」





 

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