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ゆめ か うつつ か
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どこからか、花のような、香料のような、えもいえわれぬよい香りがしている。

香りをたどると、路傍の人だかりに出くわした。覗いてみると、背が高くどこか高貴な様子の老人が、大きな鍋を火にかけている。いくつもの壺から自在に粉や液体を取り出し鍋に加える老人の後ろには、粗末な身なりの青年が神妙に目を瞑って控えていて、とんと仙人とその弟子といった風情。「あれは仙丹を練っているのだそうだ」と訳知り顔の男が囁き、わたしは感心しながらその鍋と老人を見つめる。

しかし芳香は次第に悪臭となり、老人は焦ったように火をかきたてるが、鍋は焦げ付くようなにおいを放つばかり。と、それまで老人の後ろで慎ましく控えていた青年が、あくびをしながら立ち上がった。閉じていた眼が開かれ炎のように炯炯と光り、見る間に身体がまばゆい光に包まれる。青年は笑いながらつま先でとんと地を蹴った。途端に鍋も壺も、青年自身も地の底に呑まれてゆく。老人があわれっぽく地面にひざまずき、後には高らかに笑う青年の声だけが残った。

「おい間抜け、仙丹を作り損なったのがわからぬか。お前は仙人にはなれぬ。一生を人として過ごすがよい」










 

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