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ゆめ か うつつ か
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暗い。

さっきまで明るい真昼の街を歩いていたのに、いつのまにこんなに暗くなったのだろう。日が暮れるには早すぎる、まして街の灯までが消える深夜にはまだ間があるはずだ。

ともかくどこか明るいところへゆきたいとわたしは早足になった、そうしてしばらく歩いていると、いつのまにか少女が後をついてくる。十代半ばくらいだろうか、夢遊病者のようにふらふらと歩くやせぎすの体が痛々しい。わたしは思わず自分の不安も忘れて声をかけた、「どうしたの、迷子かな?」。

すると少女は思いがけずまっすぐわたしの顔を見て、「お母さんだ」と呟いた。

娘を産んだ覚えは無い、それは何かの間違いだ。わたしは幼いころに母を亡くして、それからずっと天涯孤独なのだから。そう言おうとしてわたしは気づく、少女の顔の懐かしい面影に。一文字に引き結ばれた唇、固くこわばって青ざめた顔、そこだけが窓のようにぽっかりと、世界に向かって開かれたような、黒い黒い瞳。鏡に映したわたしの顔にも似ている。

当惑するわたしに彼女はもう一度、よどみない口調で言った。

「お母さんだよ。お前を迎えに来たんだ、さあ行こう。みんなが待っているからね」









母に手を引かれ、死出の旅路。





 

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