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ゆめ か うつつ か
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今はもうカラスしか住んでいない廃墟の島へゆく。灰色の海に囲まれた小さな島へ。

崩れかけた船着き場からゆるやかに続く山道をたどっていくと、旧びた神社跡があった。落葉し立ち枯れた林檎の木が白骨のようにそびえ、そこここに黒い羽根が散っている。目にうつる全てが陰鬱で、堪らずふりかえると、重たげにたゆとう海に木の葉のように小さくなった船が見えた。

置いていかれたのだ、

そう覚った瞬間、それまでわたしの足元で不気味に沈黙していたカラス達が一斉に飛び立ち、地面が黒く鳴動した。


*


目を閉じればまなうらに残る、閃く身体。

晴れ渡った白銀の峰を、わたしは歩いている。前方には見知らぬ青年がひとり、力強くラッセルで雪を掻き分け進んでゆくのが見える。わたしの手には、冬空を閉じ込めたように冷たく光る氷柱があるだけだ。よろめき凍えるわたしと青年との距離は、開いてゆくばかりで。

意気ようようと遠ざかってゆく青年の赤いウエアが白い雪ににじむ、ひとしずくの血のように。不意に邪悪な意志に命ぜられ、わたしは青年の背中めがけ氷柱を投げつけた。

氷柱は谷から吹く突風の勢いを借りて銀色の矢のように虚空を切り裂くと、青年の背中にあやまたず命中した。

彼はきらきらと光る雪の粉を撒き散らしながら墜ちて行った。

閃く身体がまるで蝶のようだとわたしは思い、そっと瞼を閉ざした。


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