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ゆめ か うつつ か
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落ちてゆく飛行機で。

まず先にパイロットが空中へと飛び出した、それから乗客が、芥子粒のように飛行機から零れ落ちていく。

わたしは海面すれすれになって、ようやく自分が飛べる事に気付いた。波の飛沫を浴びて、仲間たちと次々に、燕のようにくるりと鮮やかに空へと取って返す。さっきまでとはうってかわって、ひどく愉快な気分だ。まるで肉体を脱ぎ捨てたかのように軽やかに、隊列を組んで、わたしたちは飛ぶ。ジェット機よりも速く、雲を風を切って飛翔する、青い海と戯れる。

やがて中国の古い都が見えてきた。それはもう誰も住んでいない亡都で、廃墟のなかを、わたしたちは飛ぶ。目にも留まらぬ速さで、石づくりの燈篭を、はげてしまった朱が残る欄干を、腐った多重塔を眼下に、灰色の都をすり抜ける。

海のいろが紺碧から群青に変わるころ、突兀とした岩山が見えてくる。溶岩のように黒く穴だらけの岩に難破船の残骸がうちあげられ、白骨がまばらにひっかかる、その間に財宝がきらめいている。魚の彫刻がほどこされた白玉の判子、翡翠の帯留め、珊瑚のブローチ、真珠の首飾り、瑠璃の指輪、玻璃の杯・・・・・・・。重くなったら飛べないよ、と言われ、数顆を身に付けふたたび空へと舞い上がる。

そうして海と空のはざまを自在に舞っていると、とうとう海の終りに着いた。海の終り、そこでは水が光の滝となってどうどうと零れている。水と光のあわいにそびえる大樹のつらなりが光を弾くなかを、小鳥のように飛び回った、美しかった、世界の何もかもがありえないほど美しかった。




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