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ゆめ か うつつ か
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見渡すかぎりの荒野を、列車が走る。

それは衣装や大小の道具類、役者から脚本家までまるまる一座を乗せた劇団列車で、線路の続く限りどこまでも旅をしながら興行しているのだ。

座長はほかならぬこのわたしで、次の出し物は海が舞台の「海神転生」という物語に決めていた。この乾ききった大地にかりそめの海を出現させるという思いつきは、考えただけでもわくわくした。

わたしたちは苛烈な陽の光を避け、夜毎稽古に励んだ。月光がみなぎる潤んだ夜に、ビニイルの天幕、かきわりの空と水、セロファンのさざ波を割って、にせもののうろこやひれをつけ、魚や海獣に扮した仲間が入れ替わり立ち代わり現れる。

いちばんの見どころは海神に魅入られた娘が龍に変化する終幕で、煙幕とライトを巧みに使った影絵の仕掛けに合わせ、歌い手たちが悲痛なコーラスを和する場面だ。

それにしても今夜の歌はとくに高らかだ。わたしは思わず陶然と目を瞑りその声に聞き惚れる。

そして目を開けたわたしは、闇のなかそこだけきらめく炎のような瞳をした猫の群れが魚を――

――いや、豹の群れが、仲間を貪っているのを見た。











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