ゆめ か うつつ か
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「けど、あのゴールはなかったね」
弟の語る声は怨ずるでもなく低く穏やかで、わたしはただうなずきながら川辺に落ちる夕陽を眺める。
「ぼくが居たら、あの試合はもっと面白くなったはずだよ」
がっしりした体で地面を蹴って立ち上がる、弟の顔は逆光に翳る。かれはフットボールの選手になりたかったのだ。
「お前のせいじゃないよ」
呟き、わたしはうつむく。陽が眩しくて目がくらむ。
「ねえきっと、もしぼくが生まれていたら、よい選手になっていたはずだよね?」
わたしは叫び出したかった、お前のせいじゃない、お前は悪くない、お前は生まれなかったんだから、生まれる前に死んだのだから、お前はこの世界に居もしないんだから。
―泣かないで、姉さん―
夕闇に、未生の弟のささめきだけが残るなか、わたしはひとり。
弟の語る声は怨ずるでもなく低く穏やかで、わたしはただうなずきながら川辺に落ちる夕陽を眺める。
「ぼくが居たら、あの試合はもっと面白くなったはずだよ」
がっしりした体で地面を蹴って立ち上がる、弟の顔は逆光に翳る。かれはフットボールの選手になりたかったのだ。
「お前のせいじゃないよ」
呟き、わたしはうつむく。陽が眩しくて目がくらむ。
「ねえきっと、もしぼくが生まれていたら、よい選手になっていたはずだよね?」
わたしは叫び出したかった、お前のせいじゃない、お前は悪くない、お前は生まれなかったんだから、生まれる前に死んだのだから、お前はこの世界に居もしないんだから。
―泣かないで、姉さん―
夕闇に、未生の弟のささめきだけが残るなか、わたしはひとり。
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横美(よこはまびじゅつかん)に松井冬子展を見物しがてら、中華まんを食べにチャイナタウンへ。
松井冬子展は女性が多かった。この前のヌード展とは対照的、おんなの情念なんて男にとっちゃ悪夢以外のなにものでもないもんな。
で 中華街。四年ぶりくらいかな? ちょうど春節(旧正月)の最中で、イルミネーションも華々しかった。中華まんうめえ。くろごまくるみあんと肉まん両方いただきました、ごちそうさま!
ほんの数年前、この場所で、現実に果てしなく後悔していた。今は現実にひどく満足している。幸せすぎて明日の自分もわからないくらい、だって結局生きるのはどこもかしこも苦痛ばかりで、だからその隙間を縫って不意に訪れる幸福にせめてすがってもいいじゃない。
松井冬子展は女性が多かった。この前のヌード展とは対照的、おんなの情念なんて男にとっちゃ悪夢以外のなにものでもないもんな。
ほんの数年前、この場所で、現実に果てしなく後悔していた。今は現実にひどく満足している。幸せすぎて明日の自分もわからないくらい、だって結局生きるのはどこもかしこも苦痛ばかりで、だからその隙間を縫って不意に訪れる幸福にせめてすがってもいいじゃない。
いろいろむしゃくしゃしていたので、その勢いを借りて富士急ハイランドに絶叫しにいくことにした。
富士急ハイランドはとりわけ絶叫系の乗り物に力を入れている遊園地で、以前から絶叫マシン好きのmに「行こうよ」と誘われていたのを、わたしが言を左右にして逃げていたのだが(わたしは絶叫マシンはたしなむ程度で好むほどではない)、家庭内のいざこざにちょっと叫びたい気分に駆られたので。
で
当日、マイナス3度。園内のめぼしい絶叫マシーンは凍結で動かないのであった。。これは観覧車からの眺め。床までスケルトンの観覧車、高所恐怖症の人にはまた違った意味で絶叫体験かもしれない。ちなみにわたしは高いところは比較的平気なほうなので、楽勝。
ふきすさぶ富士の山おろしに、噂の高飛車も動かず。ほっとしたような、残念なような・・・・・。いや、後のことを考えると乗れなくて正解だったんだけど。。
これは乗った、鉄骨番長。高所へのぼり、高速でぐるぐるまわされる。空中ブランコのようなのでわりあい楽しかった、富士も町並みも一望に見渡せる絶景だし。が、なにせマイナス3度なのでとにかく顔が寒い!!! 眼球凍るかと。
そしてトンデミーナという、これまた高速で縦横にぐるぐるされるマシンにて、180度回転のため逆さ富士を拝んだわたしは絶叫を通り越して絶句してしまった。すなわち声も出ないくらいに、酔った。おえええ。
ああいうのを心から楽しめる年代は中学生くらいまでかもしれないなあ、とちょっと寂しい気分になった。
富士急ハイランドはとりわけ絶叫系の乗り物に力を入れている遊園地で、以前から絶叫マシン好きのmに「行こうよ」と誘われていたのを、わたしが言を左右にして逃げていたのだが(わたしは絶叫マシンはたしなむ程度で好むほどではない)、家庭内のいざこざにちょっと叫びたい気分に駆られたので。
で
そしてトンデミーナという、これまた高速で縦横にぐるぐるされるマシンにて、180度回転のため逆さ富士を拝んだわたしは絶叫を通り越して絶句してしまった。すなわち声も出ないくらいに、酔った。おえええ。
ああいうのを心から楽しめる年代は中学生くらいまでかもしれないなあ、とちょっと寂しい気分になった。
眼精疲労が極まってか、「薄手ニット」を「薄毛ニット」と読み違えた。スッカスカだね! 寒そう!
と、思っていたら、なにやら右目から涙が。異物感や痛みも伴い、調べてみたら眼球に水ぶくれが出来ていた。しばらくコンタクトレンズはお預け。
*
mは某良品の「不揃い黒豆~」を、「不味い黒豆~」と読み間違えていた。まずかったら誰も買わないし!
ちなみに、この前とある小説で「庇」に代わって「屁」が誤植されていて、五分ほど笑い咽んだ。シリアスなシーンなだけに。。
と、思っていたら、なにやら右目から涙が。異物感や痛みも伴い、調べてみたら眼球に水ぶくれが出来ていた。しばらくコンタクトレンズはお預け。
*
mは某良品の「不揃い黒豆~」を、「不味い黒豆~」と読み間違えていた。まずかったら誰も買わないし!
ちなみに、この前とある小説で「庇」に代わって「屁」が誤植されていて、五分ほど笑い咽んだ。シリアスなシーンなだけに。。
飛行機雲が、青すぎる空を大きくまっすぐに切ってゆく。
まふたつに分断された空の裂け目から、夜が漏れる。しずくのようにひそやかに、やがてほとばしり世界を闇に包む。行き場をなくした太陽がおろおろとわたしの陰に逃げ込み、わたしはやさしくかれの手を引いてやる。冷たい月がしずしずと現れ、盲いた太陽を嘲るように、意地悪な星がちらちら瞬いた。
また夜が来たね、と太陽が消え入りそうな声で言う。いつも突然やってきて、ぼくを苛める。わたしはうなずき、太陽の熱い、小さなてのひらを握る。
まふたつに分断された空の裂け目から、夜が漏れる。しずくのようにひそやかに、やがてほとばしり世界を闇に包む。行き場をなくした太陽がおろおろとわたしの陰に逃げ込み、わたしはやさしくかれの手を引いてやる。冷たい月がしずしずと現れ、盲いた太陽を嘲るように、意地悪な星がちらちら瞬いた。
また夜が来たね、と太陽が消え入りそうな声で言う。いつも突然やってきて、ぼくを苛める。わたしはうなずき、太陽の熱い、小さなてのひらを握る。