ゆめ か うつつ か
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「けど、あのゴールはなかったね」
弟の語る声は怨ずるでもなく低く穏やかで、わたしはただうなずきながら川辺に落ちる夕陽を眺める。
「ぼくが居たら、あの試合はもっと面白くなったはずだよ」
がっしりした体で地面を蹴って立ち上がる、弟の顔は逆光に翳る。かれはフットボールの選手になりたかったのだ。
「お前のせいじゃないよ」
呟き、わたしはうつむく。陽が眩しくて目がくらむ。
「ねえきっと、もしぼくが生まれていたら、よい選手になっていたはずだよね?」
わたしは叫び出したかった、お前のせいじゃない、お前は悪くない、お前は生まれなかったんだから、生まれる前に死んだのだから、お前はこの世界に居もしないんだから。
―泣かないで、姉さん―
夕闇に、未生の弟のささめきだけが残るなか、わたしはひとり。
弟の語る声は怨ずるでもなく低く穏やかで、わたしはただうなずきながら川辺に落ちる夕陽を眺める。
「ぼくが居たら、あの試合はもっと面白くなったはずだよ」
がっしりした体で地面を蹴って立ち上がる、弟の顔は逆光に翳る。かれはフットボールの選手になりたかったのだ。
「お前のせいじゃないよ」
呟き、わたしはうつむく。陽が眩しくて目がくらむ。
「ねえきっと、もしぼくが生まれていたら、よい選手になっていたはずだよね?」
わたしは叫び出したかった、お前のせいじゃない、お前は悪くない、お前は生まれなかったんだから、生まれる前に死んだのだから、お前はこの世界に居もしないんだから。
―泣かないで、姉さん―
夕闇に、未生の弟のささめきだけが残るなか、わたしはひとり。
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