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ゆめ か うつつ か
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まるで陰鬱な空気が私を取り巻いていた。

じめじめと暗くしめったベンチ、木々に埋もれた庭でわたしは本のページを繰っていた。この奥はあまりにも有名な社だったが、しかしそこに神が居ないことをわたしは知っていた。ここに神は居ない。神の代わりに、戦争で死んだ人間の魂が集められているのだ。人間の魂・・・それはあまりになまなましく、崇高さや清浄さよりはもっと別の類の感情を催させる。いったいに、人の魂をかき集めて何を練成しようというのだろう。この装置は一体何なのだろう。人の魂の純な部分はすぐに揮発してしまい、濁って汚れた部分だけがこの地上に残る。その汚れた部分の、ここは、いわばゴミ処理場に近いのではないだろうか。

考えながら読んでいるせいで本がちっとも進まない。それはNという不世出の作家のミステリーで、私は以前何度かそれに目を通したことがあるはずだった。しかし登場人物は見覚えがあるものの筋にはまったく覚えが無い…どうやら続編のようだ。続編が出ていたのか、と私は少し驚いた。それで少しは集中しようという気分になった。獅子の噴水、冬の庭、図書館に吊られる死体、月夜に笑うネレイデスの声の謎・・・

夢中になりかけたその時、ふわりと体が浮き上がる感覚がした。思わず取り落とした本がみるみる小さくなっていく。

見えない糸で吊りあげられながら、この細工仕立ての東京は昔私が夏休みの宿題で作りあげた玩具なのだということを思い出した。






夢の中で見た本の内容を覚えているうちに再現したいのだが肝心のトリック部分を忘れてしまった。ルルーの『黄色い部屋』系の密室トリックだったんだけど・・・

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