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ゆめ か うつつ か
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なだらかな丘が何処までも続いていた。

かすかなモーター音が空から聞こえてくる、見上げると無人のスキーリフトが運行している、誰も居ないのに廻り続けているそれを追い、無心に丘を駈けた。

突然、柔らかな草が茂る初夏の高原の急斜面で足を滑らした私は腕をばたつかせた、鳥じゃあるまいしそれで空が飛べると思ったわけではない、ただなんとかして体のバランスを保とうとしたのだ―しかし、次の瞬間、私の体は宙に浮いていた!

それはけして高く、また美しい飛翔ではなく、わたしはおぼれかけた人のように空気を掻いてようやく浮き上がっているという風情だった、ふわり ふわり…1・2メートルも浮いた後、疲れのためにもがくのをやめた私は途端に地に堕ちた。

飛ぶというのは思ったよりも簡単だが、また思ったよりも疲れるものだと思った。





浮いた感触も土のやわらかさもありありと覚えている。
それにしても、せいぜい頑張って1・2メートルの高度、ってとこがリアルだよね。どうせなら鳥の視点を持ちたかったな、夢なのにけちくさい飛び方をしたものだ。

この後アステカの古代神殿ばりのマヨヒガに迷い込んでしばらくうろつくんだけど、そこには人々が普通に暮らしを営んでいる、彼らは実に楽しそうに日々の仕事を片付けていて、あたしの存在には気づこうとしない。
あれおかしいな、マヨヒガといえば無人が相場なんだけど…って思いながら煮炊き女もかまびすしい台所にぼんやりたたずんでいると、まだ少女と言えるほどの女の子があたしを見て小さく叫んだ。

それで、あたしは、ああ、ちがう、ここがマヨヒガなんじゃない、

あたしがザシキワラシなんだ、

っていうことに気づいたのだった。


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