ゆめ か うつつ か
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わたしは友人の引越しを手伝いに来ている。友人は女流画家だ。無機質な部屋には彼女の絵が溢れ、まるで一個の展覧会を片付けにきているような錯覚に囚われる。
「気に入った絵があったら持っていって」と言うので、小さな額に入った木筆画をもらうことにした。尻尾のある悪魔を描いた、どこかユーモラスなスケッチだ。
ひときわ大きな額に入った絵が、刻々と変化するのには驚いた。桜の花が散るなかで結ばれた男女が、やがて子を生み家を成し、老いて死ぬまでの営みが描かれている。それを、桜の樹木一本の変化だけで現しているのがこころにくい。咲いて散る、それだけの間に一年という時を刻む桜を眺めていると、自分が仙人になったかのような気持ちがする。
わたしが見惚れていると、友人はさっさと額を取り外した。
額の下には、テレビが置かれていた。
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