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ゆめ か うつつ か
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学校は家から歩いて30分ほどのところにあるが、世界の果てのように遠い。

毎日まいにち道筋が変わる森の迷路を辿り、ぬるぬるした暗闇を抜け、雲つくような山の頂きを越え、いくつもの国境を越えて、なぜこんなに長い道のりを行かねばならぬのかさっぱりわからない。が、とにかく行かねばならない。

無表情な門番の居る校門から先は、バスに乗る。切り立った崖っぷちを走るバスは席だけで壁も天井もなく、急カーブに差しかかるたびに鞄を吹っ飛ばしそうになる。谷底にはいくつも渦が巻いている急流があり、一度沈んだものは二度と浮かんでこないので、「大喰いの川」と呼ばれていた。わたしはかつてこの川で本と上着と友人を無くしていた。友人を無くしたときも悲しかったが、本を落としたときは悲しみのあまり後を追おうとしたほどだ。書名まではっきりと覚えている、『サルパルナサス王の戴冠』上巻だった。下巻を失うよりも悲しいことだ、わたしのサルパルナサス王の物語は始まることすらなかった。

そんな思いをして教室に着くと、鰐そっくりの教師が欠伸をしている。なにひとつ教えてなどくれない教師。たまに腹が空くと生徒にかぶりつくのは、鰐だったころを思い出すのだろう。生徒のなかには子鰐そっくりなやつも居て、気がつくと共食いしている。

退屈と苦痛と恐怖。苦難の旅のあとに待ち受けているのはざっとこういうものなのだ。或いはその徒労感こそ学校教育の全てなのかもしれない。

ゆううつな気持ちでわたしは今日も。

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