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ゆめ か うつつ か
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山小屋で眠っている。
うとうとしているのだが、何となく落ち着かない。雨戸が半分くらい開いているようで、薄明かるいのだ。

開きかけの扉や雨戸って何かが覗いていそうでいやだなあ、と、寝返りをうっていると、ただならぬ寒気に襲われる。そのうち室内に得体の知れぬ気配がしてきて、ぞっとしてわたしは塩を取りに立ち上がった。やたらに眠かったが、恐怖が眠気を上回った。寒気は増すばかりで、全身が逆毛立つようだ。これはいけない、となるべく辺りを見ないようにお勝手へ行き、ちりかみに塩を盛ると部屋の四隅に置く。

『やめてよ そんなこと』

あどけない子供の声がした、それがわたしの緊張のピークだった。全身の力が弛んでゆくのを感じながら、わたしは言った。

「なら、怖がらせないで」

声は小さく笑った。

それからたまにおかしなことが起こるようになった。テレビやラジオが勝手についたり、本を置いておくとひとりでに挿し絵の部分が開いていたり、ぬいぐるみの位置が移動していたり。それはひどくかわいらしいイタズラだったので、全く恐怖は感じなかった。それどころかわたしはそれら他愛ない異変を待ち遠しいくらいに思うようになったのだ。

東京に帰る日に、わたしはツツジの小さな花枝を折りとると、机の上に置いた。扉がさよならを言うようにぱたぱたと開いては閉まった。


冬になったころ再び小屋を訪れると、机にそのまま根を生やし、炎のように咲きほこるツツジの木があった。


おかしなことはもう二度と起こらなかった。


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