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ゆめ か うつつ か
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①喫茶店では隣席の高校生カップルが臆面も無く痴話喧嘩していた、女のほうが多情で男はやきもきしている風情だった、女は色が白く北海道訛りでたしかになかなか可愛い顔立ちをしている。聞くとも無く聞いてしまった会話では男が女に「いつになったらキスさせてくれるのか」などと情けないことを言っており私は苦笑した、その笑いを感じ取り、同じテーブルに就いていた別の女子高生が私ににこりと同意の笑顔を送ってきた。制服を見ると先ほどのカップルと同じ高校らしい。彼女はここで試験勉強でもしているのか、机の上には教科書とノートを広げている。私は彼女と話してみたくなったがその勇気は無く、ただ黙ってタバコをふかしていた。

②そもそも何故私はここにいるのだろう?誰かとここで約束をしているような気もするが…

そこまで考えたとき、見知らぬ男が私の前にぬっと表れた。男は棒切れのように細いジェラルミンの杖を持ち、体が不自由で足をひきずっていた。その顔には真一文字の傷跡があり、奇妙にひきつれた表情には憎しみの色が浮んでいる。「とうとう見つけたぞ」、とその男は言った。「オレをこんな姿にしやがって。お前のせいでオレの一生はめちゃくちゃだ、どうしてくれるんだ。」私は思っても見ないことを言われてあっけに取られた。そのような男に見覚えは無かった。「失礼ですけど、どなたさまでしょうか」、と尋ねると男は益々たけり狂い、その杖をふるいあろうことか私を打ち据え始めた。私は悲鳴を上げ、周囲の人々は仰天して彼を押し留めた、その間に私はそこを逃げ出した。彼は悲痛な声で「このままでは済まさないぞ、追い詰めてやる、絶対に復讐してやる」、と叫び続けていた。

③町に出て混乱した頭の中を整理し、さっきの男のことを考えてみたがやはり私とは一面識も無いように感じられた、大体あんな大男を、どうやったら私が傷つけられるというのだ。頭の中ではそう整理をつけたが、心ではじわじわと恐怖感がこみ上げてきていた、そう、どこかでこんな日が来るような気がしていた、どこかで私は、いつか自分が殺した男が私に復讐しにやってくるのだと知っているような気がした、自分でも覚えていないような過去 あるいは前世において私が傷つけた人間が私を責め苛み破滅させる日がやってくるはずだと…

④突然名を呼ばれ私はこわばった顔で振り返った、先生だった、私はあからさまに安堵し「どうなさったんですか、なぜここにいらっしゃるのですか」と尋ねると「オーケストラの招待券をもらったから一緒に観ようと約束していたじゃないか」とおっしゃる。それで私は先ほど誰を待っていたのかようやく思い出した、そう私が待っていたのは先生であって断じてあんな凶暴男ではない…そう思うと少し気がラクになった、先生にその話を冗談めかして伝えてしまえばその男の存在も希薄になるのではないかと期待すらした、しかし私はそのことを先生に伝えることはできなかった、口にしたら再びあの男をここに呼び生けてしまうのではないだろうかという危惧のために。

⑤開演の時刻が迫っているのでタクシーを飛ばしてコンサートホールへ行くことになったが、雨が降り出してなかなか車が捕まらない。ようやく捕まえた白タクの助手席に私は乗り、行き先を指示した。運転手は低い声で諾と答えると、ものすごいスピードで走り出した。水しぶきを上げて走る車の中から青看板が見え私はふと不安になり言った、「おじさん、青梅方面じゃないよ、反対…」

ミラー越し、運転手の顔を覗き込み 私はそこに 先の男の一文字の傷跡をみた。




夢でよかった、と心底思った。
覚えの無い(あるいは忘却の彼方の)過去の悪事が蘇ってくる悪夢ってほんとうにこわい…後味がわるい…
私にはわりと…自分はどこかで人を殺しているんじゃないだろうか、という恐怖感があるんだけど、それって特殊なのかしら。ああ怖かった。
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