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ゆめ か うつつ か
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半月の真夜中、窓のそとに、ひっそりと咲いている白い花が見えた。

わたしは喉が渇いたので階下へと降りてきていた。冷たいミルクをコップに注いでいると、眠っていた犬がむくりと起き上がり、よりそってくる。その穏やかな、やさしいいきものの呼吸を聞きながら、わたしは、月の光を照り返して白というよりもはや銀のしずくのような花を見ていた。そこだけ月の世界のような、地球上ではないような、荒涼として凄絶な光景だった。

――かつてこうしてミルクの入ったコップを片手に、途方にくれたことがあった――

遠いときを思い出そうとわたしは束の間たたずんだ、が、見る間にコップはひび割れて硅砂となり、犬は白骨となって崩れ落ち、窓や壁は腐食していく。

ただ花だけが、つきあかりの下、凍ったように咲いていた。





・・・・・・・目覚めるたびに違う場所に居るような気がするのだった、わたしは、どうも夢見がよくない。

「夢くらい好きなのを見なさい、体に悪い」

そういって友人はわたしをコンビニに連れて行くと、いろとりどりの小さなカプセルを指し示すのだった、

密林を鳥となって飛ぶの夢 春の霞に包まれ惑う夢 宇宙を流れ星となって進む夢 海の中をくらげとなってただよう夢・・・・・・・・

「これを のめば すきな ゆめが みられる のだよ」

まるで入浴剤のように安易でここちよい夢の群れを前に、わたしはうんざりして一刻も早くこの夢から目覚めたい、と願うのだった。


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