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ゆめ か うつつ か
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ようするに、はじめから罠だった。



わたしは博士の助手だ。

博士は時空間移動の権威であり、
古代生物学の大家であり、
古物鑑定の専門家であり、
人間行動学の碩学でもある。

あまりにも雑多な分野に首を突っ込んでいるため詐欺師やペテン師のたぐいだと博士をののしる人もいるが、つまり博士は、本物の天才なのであった。

博士の偉業のなかでもっともすばらしいものは、タイムマシンの発明である。

博士は文字通り世界中のいたる処、いたる時の中から珍しいものを探してきては、それを大富豪の好事家たちに高値で売りつけていた。そうして莫大な研究費用をひねり出していたのだ。正直言って博士には敵が多い。彼にとっては好奇心がすべてで、それ以外のものは塵芥に等しかった。金持ちや貴族など特有の優越感を持つひとびとにとって博士のそういう態度は侮辱以外のなにものでもないようにうつったらしい。



水棲動物マニアであるX夫人主催のその会で、博士とわたしは特別ゲストとして悠然と水槽の間を闊歩していた。ルビーのうろこを持つ親指ほどの金魚、七色の魚が群れとなって泳ぐ虹の魚群、きらきらと真珠化した巨大なサメの歯や、世にも美しい音色で鳴く亀。

そうした珍しい動物の鑑賞会後、夫人と博士と助手のわたしはタイムマシンで7000万年前に乗り込み、「シーラカンスの刺身」を客に振舞う予定だった。ところが――夫人はナイフで博士を魚のようにかっさばき、タイムマシンを奪うと、わたしを7000万年もの昔に放り出してしまった。

まったく博士ったら、と わたしは博士の遺骸を眺めて呟いた。
脳みそばかり働かせて、腕っ節のほうはからきしなんだからな。

そしてわたしは落ち着いて、7000万年後の博士にあてた手紙の暗号文面を考え始める。問題はその手紙をどうやって博士に届けるかだが、なあに、心配はいらない。博士自身にメッセンジャーになってもらおう。
暗号を骨に刻んで、あとはよさそうな土地に埋めてしまうのが一番だろうか。それか、樹液にでも突っ込んでおけば、博士は7000万年後に輝く琥珀となってよみがえるだろう。何せ「白亜紀の人間の化石」なんてオーパーツ、現代の博士が放っておくわけがない。まさかそれが自分の化石だなんて思いもしないだろうけれど。

7000万年後、博士はわたしの書いた手紙を発見し、解読し、そしてタイムマシンで助けに来てくれるはずだ。
その点について、わたしはまったく何も心配してはいなかった。


***


パラドックスの問題はおいといて。
こういう複雑なストーリーを夢で見たのは初めてかもしれない。



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