ゆめ か うつつ か
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昼過ぎまで母の相手をしてバレンタイン節の仕入れなどをし、それからmの運転で山梨に向かったので陽は大部傾いていた。連日のカラカラ日照りに奥多摩湖はだいぶ水かさが減って、縞目状になった乾いた底が露出していた。水の退いてしまった湖の底には、首を絞めた痕が紅くあらわれる――と書いたのは中井英夫だったが、むしろその縞目は首を絞めたロープそのもののような気がした。猿の子供がきゃきゃと遊ぶ道を飛ばして温泉へ、山が全体的にあかく、そして金色にけぶるのはおそらく杉の花粉だろう。まがまがしい景色。
つめたい風に吹かれながらあつい湯に入った、湯屋の入り口に剪定でもしたのかつぼみをつけた桃の枝がたくさん置かれていた。そういえば山梨は桃が有名なのだったと思い返す。食べるほうも観るほうも。三月三日、上巳の節句までには咲くだろうか。壺に投げ入れておいて、花が咲けばさぞ見栄えがするだろう。そんなことを思いながらライトセイバーさながら桃の枝を構え帰宅した。
なめらかにあかく、やせぎすな桃の枝。
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