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ゆめ か うつつ か
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 空色の地、白の花弁に朱色の萼(うてな)。花は辛夷か白木蓮(マグノリア)か、いずれ春の茫洋とうすぐもった空に似合いの花に相違ない。

小さなつまみのついた蓋を払い、中の一段は茶漉しとて、蓋の内側にぴったり収まる寸法。茶の葉を除けた暁に、ようやく碗を傾け熱き甘露を味わう次第。

日本の細かくつきくだされた茶粉は合わない、あくまで茶葉の大にして拙なる、それゆえに野趣に溢れた茉莉花茶(ジャスミンティ)や茶餅(茶葉を押し固め多年を経たもの=プーアル茶)などがよく似合う。



十代後半、家出同然に中国を訪った際、助けてくれた恩人に「はいこれ、あなたの」とマヨネーズの空き瓶をきれいに洗ったものを渡された。水筒の代わりにくれたものらしい。中国のひとはそうしてよく空き瓶に茶を蓄えていた、なんのことはない、器に茶葉と湯をそそぐだけのいたって簡単な煮出し方法、バスの運転手など今でもそうして空き瓶で茶を飲む。わたしもしばらくその空き瓶を使っていた、真夏だった、茶葉が底に沈んだら、ごくごく飲めるほど冷めた証。

綺麗な茶碗を手に入れた今、飲むお茶は、なぜかマヨネーズの香りがしたあの茶にとおく及ばない。



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