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ゆめ か うつつ か
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ここんとこ一日3冊以上読んでるので感想書くのがおっつかない、ていうか めんどくさい。とりあえず走り書きでもメモをとどめるようにはしたけどそのメモが見当たらないというていたらく。これから本は月締めで一気に上げようかとか、月ごとに作家を決めて読み込むことにしようかとか、いろいろ考えている。

あたしの読書は、常に平行して二冊以上の系統の違う本を同時に読む というやり方なので、傍から見ると実にとらえどころが無いらしい。組み合わせはその都度変わるけど今の傾向は、仏典・中国古典+推理モノ+哲学やら社会学や歴史なんかの学術系、を合わせてる。常に読みかけの本が二冊以上ある状態で無いと落ち着かないし、まだ読みきってない本が傍らにないと安心できないんだな。

長くてよみづらい本の合間に軽く読める本を配置するととても、気分転換になる。

こういう本の読み方をしてる人を他にきかなかったんだけど、この前新聞で読んだ財界のおっさんが似たような読書法をしてるとゆっていたので少し、安心した。



そんなわけで本の感想を書いてたら日常に言及する時間が全然無いんだけど・相変わらずいろいろ動いてはいます、とりあえず次辺りは先週行ってきた横須賀の話をしたい。

あああそれにしても時間が足りない、本読みたい、もっと読みたい、人間はもともと嚥下という動作はできない、幼い頃の訓練によって何かを飲みくだすことができるようになる・その動きを覚える・のだけど、それは喉に何かが通過することを「快感」として捉える作用が働くからだってきいたけど、あたしの場合なにかまかり間違って眼球に快感を感じる機能が備わってしまって、文字を読むたびに快感を味わうようになってしまったんではないかとか思う。いや眼球ったってバタイユは関係ないよ、視角からくるエロスは脳に接続され意識を刺激するけどあたしの場合は眼という身体器官が文字の刺激によってダイレクトに作用をおこすんだって話。





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元岡っ引の半七の名推理が冴える捕り物帳。

日本のホームズといわれるとおり、理屈がしっかりしてて常に現実、事実に基づいた半七の推理は冴えてるんだけど…何だかイマイチ…、事件のトリック、肝心なとこは全部半七が喋っちゃうので読者は推理に参加する楽しみがあまりないかもなあ…もうちょっと冒険的スリル要素があったほうが読みやすいかも、と、最初は思ったけど、慣れてくると段々半七の語りに引き込まれて、まるで自分が傍らで話しを聞いてるみたいな気分になってくるから面白い。そしてなんといっても江戸風物の描写!!杉浦ヒナコさんが絶賛するのもわかる。

あと、半七爺さんがえらい男前。芝居好きで昔かたぎだけど、家にはランプなんか仕込んで、新しいものも興味たっぷり。いなせだ。声に出して読むのも良い。それにしても綺堂は博学だなあ…


*ネタバレあり・随時増加


4/14
「河豚太鼓」 河豚の皮で作ったでんでん太鼓を手がかりに、行方不明の子を探す。そのころ普及してきたばかりの種痘を恐れて子守の下女が主家の子供を攫い隠してしまう女中の話。

「菊人形の首」 幕末江戸の異人についての話も面白かったけど、管狐を使う狐使いの女が出て来て、江戸期の信仰の一面が見えるのが面白い。

「十五夜御用心」 四人の謎の死骸が寺でみつかる、閲微草堂筆記か元ネタ。綺堂の中国怪談集は持ってるし、彼が中国文学に詳しいのは知ってたけどうまく謎を解いたなあ…というかんじ。新劇の脚本だったものもある、だから文章がなんとなく、硬い割りにあっさりしすぎてるっつうか。内容もなんか短いわりにドラマ性たっぷりというか…

5/7~
「鷹のゆくえ」 遊郭の帰りにお鷹を逃がしてしまった鷹匠を救うため半七がんばる。鳥取りの描写とか、お蕎麦たべるとことか、風俗読み物としても面白い。

「津の国屋」 大店津の国屋をめぐる陰謀。怪談と見せかけて謎解きものというのが無粋だけど、その無粋さがまた良いというか。話しがよく出来ている。幽霊におびえる文字春師匠がかわゆい。

「三河万歳」 約束していた才蔵(万歳の相方)が現れずに困る万歳。サイゾウと万歳って正月限定の契約で、生国がちがくても良かったのかー!それで商売成り立つんだからすごいよな。一年に一度、正月だけ集う…江戸における万歳の仕組みを知った。事件自体よりそっちの話のほうが面白い…

「槍突き」 今で言う通り魔の話だけど武家の息子が女装して犯人をやっつけようとして黒猫を身代わりに置いておくくだりなんかは展開がよめなくて面白かった。

「お照の父」
「向島の寮」

「蝶合戦」 絵面がきれい。南米で蝶が群がり舞う話を思い出した。日本でもあったんだなあ。

「筆屋の娘」 美人姉妹が舌で筆を舐め整えてくれるから繁盛する筆売り屋の話で、トリック自体はバレバレなんだけどなまめかしい情緒が○。

「鬼娘」

「小女朗狐」 いぶし殺された男達。墓を荒らす狐。犯人の幼さがいたいたしい…でもあだ討ちなら大量殺人も許されるんだな、すげえ。

「狐と僧」 
「女行者」 
「化け銀杏」


「雪達磨」 いつになく大雪の江戸、雪だるまの中から死体と南京玉。贋金作りの材料に南京玉が使われるなんて知らなかった。しかしそもそも南京玉のイメージがよくわからない…

「熊の死骸」 火事場に現れた熊から娘を助けた男が、その娘に恋慕して殺す。熊の死骸を盗んだやつらが現れてややこしいことに。熊肝ってやはり高価だったのね。

「あま酒売り」 九州の蛇神の血をひいた女の甘酒売りにであうと、熱を出し死ぬ。その女を連れて江戸にやってきた男が、女の母に狙われ…という話。蛇神の血筋は結婚もままならなかった、以前ゼミで犬神の話をきいたことを思い出した。甘酒の固練りってどういうものか挿絵が欲しい…

「張子の虎」 召し取りの加勢をした遊女がお上から褒賞され有名になる、その女が殺され枕元に張子の虎が・というもの。話の筋からなんとなく復讐ものかな、ということは読めたけど半七鋭すぎ。

「海坊主」 海から現れ生魚を食す奇怪な男の話。実は前科者で島流しにあっていたのを、得意の泳ぎで船から船へ渡り歩いて次第に江戸に近づいた。話しはかなり面白い。江戸時代なら妖怪だと信じてしまうひともいるだろう。

「旅絵師」 この話がこの中じゃ一番ぐっときた。ロマンス活劇仕立て。隠密の話も興味深い。お庭番って一生に一度勤めればいいのかー、とか。隠密で旅絵師に扮して出た男が奥州の大店の娘を救いその一家に世話になるが彼らは隠れキリシタンで、男はまりや観音の絵を描くことを頼まれ・という筋。娘がけなげ。

「雷獣と蛇」 昔の人は雷を恐れたのだなあ・化をに引っかき傷=雷獣に襲われて死んだ、と結論するあたり浅はか・蛇の話しはおまけみたようなもの。蛇玉は怖いけど・・・

「半七先生」 半七の家の「報恩額」由来。手習いに行った少女が先生にしかられ姿を消す、謎は少女の兄の付文にある。おいおい兄ちゃん…といいたくなる…死人が出ないのでほっとした。

「冬の金魚」 冬に温水で生きる金魚を使ったぺてんにまつわる殺人事件。ほんとにこんな金魚いるんだろか…

「松茸」 熊谷から献上ものの松茸を運ぶ男がキセルをかごに刺しておいたことをとがめられ出奔、同郷の大店の娘が江戸に嫁いでるのに出会い、その丙午生まれをたねに脅す。こういったことで出奔してしまうとか、こんなささいなことで離縁されるとかそのへんの時代背景が既に興味深い。

「人形使い」 仇役を演じる人形使い同士が二人ながらに死体に。人形のたたりオチ?半七にしてはおどろおどろしいオチ。

「少年少女の死」 おもちゃの水差しに毒、二人の男の子が死亡した話しと、少女のかどわかし。

「異人の首」 異人の首をちらつかせ商家で攘夷の資金を脅しとる悪党の話。イギリス人ロイドが遊女にいれあげた背景をつきとめた半七、ヨコハマで大活躍。蝋人形の首だったことが判明して落着。

「一つ目小僧」 一つ目小僧の怪異から15両の鶸をだましとられた鳥屋。小僧はは按摩で、そこから犯人一味をあげる。鳥屋ときいてつげ義春の漫画を思い出した。
 
 ・
 
「仮面」 古物商の仮面をめぐる、能役者と若い侍二人の買い手。てっきり詐欺の話かと思っていたらあれれ、と思うようなオチだった。それってありなんだか…

「柳原土手の女」 妖怪探索から、心中へ。醜い娘のための親心に泣ける。

「むらさき鯉」 小石川と牛込の間の御留川ご禁制のむらさき鯉をめぐる話。密かに盗み釣りをした町人のもとに、鯉を返してくださいと女が尋ねてくる。化け鯉の正体は…というお話。これ中国の志怪に似たような話が合った。そっちは論理的なオチはついてない、本物の怪談だったけど。

「三つの声」 これはまっとうな推理ものだった。三人の男が川崎大師にお参りに行く待ち合わせをしているが、一人が死体で見つかる。男の妻が聞いた三つの声を手がかりに、半七の推理がさえる。

「金の蝋燭」 金の芯に蝋を塗った蝋燭を持った女の身投げ。亭主への意趣返し。『権門』賄賂のこと。菓子折りの中の小判に同じ。ほんとにやってたんだな…

「ズウフラ怪談」 Rofle(オランダ語) 遠い人を呼ぶためのラッパ。なまってズウフル、ズウフラへ。江戸の滑稽本「和合人」にも出てくる。これを使って幽霊の声を演じてイタズラしていた男と、不倫の始末に道場のっとりの陰謀。もりだくさんな一品。

「大阪屋花鳥」 吉原の女娼妓、付火で島流しにあっても泳いで帰ってきたというすごいあねさん。この前置きからいきなり浅草の商家の息子と貧乏武士の娘のシンデレラストーリーにうつるのだけど、後でちゃんと話が繋がってるあたりがすごい。花鳥の悪役ッぷり、牢名主っぷりもすごい。いろいろな話が次から次へ出てきて幻惑させられるけど、最後には掌の上で収束してるのが名人芸。

「正雪の絵馬」 江戸時代の絵馬マニアの話。いかな大店の主人とて偽者の絵馬でひっかけられたあげくその絵馬抱えて家出とは、まさに絵馬狂い。それにしても絵馬を盗んでも当時は罪にならなかったのだろうか…いや、今だって罪になるのか知らないけど…

「大森の鶏」 半七、川崎参りの途中鶏に追われる女とでくわす。それが別の殺しにつながって…という話。鶏って人間を識別できるのかな…主人を殺された鶏が、仇の女を覚えていて追い掛け回すなんてことあるんだろうか…半七みたいな稼業のものは信心深かった江戸時代。今の警察官は神頼みなんてしなそうなのに比べると、それでもまだずいぶんと人間らしい。

「妖狐伝」 鈴が森の狐のからくりは南蛮船のアイテムだった。マッチは火の玉、靴ずみで顔をなでるとか、そういうお遊びしてみたいと思う。しかし同名の女と同名の男がお互い相手を間違えるなんてちとくるしすぎるような…ジョージってまた典型的な外人だし・
 
*石沢英太郎氏の解説が面白かった。清張が半七とホームズを好んでエッセイまで書いてたなんて知らなかったな。

「新カチカチ山」 旗本の家の主人、娘と妾の乗った船が流される。旗本の家の当主が死んだということで、半七が詮議をまかされる。のち、使用人の女と若殿の心中も持ち上がり…
屋敷方の詮議はむつかしい。「武家の屋敷内に鳥羽がひらけていても町方のものが踏み込むことも出来ない」

「唐人飴」 唐人の格好で飴売りにくる男と、方袖に包まれ切られた片腕。ときわづの師匠文字吉、女ばかり弟子にとっていて貞淑と評判だったが実は「男女」(おめ・いわゆるレズ)だった。腕の方は役者の敵討ち。明治までは鉦をたたいて飴を売りに来る飴売りが多かったらしい、今はもう完全に無くなったなあ。
「かむろ蛇」 あたまがかむろを被ったように黒くなっている蛇のこと。見ると不吉。安政五年、午年のコレラ流行。放蕩で感動された兄が弟の店ののっとりをたくらむ。コレラで死んだ年造が生き返って暗躍する

「幽霊の見世物」 半七「世がひらけてきたとはいえ、見世物の種は変わらない」ろくろ首など、まったくその通り。見世物小屋の中で女が死んでいる。女一人なら右のあまり怖くない道を行くはずなのに左へ行くのは、連れがあったからだとみる半七の名推理。昔は、通り抜けられた人に浴衣地をくれると言っていたが、通り抜けられないように最後の方は恐ろしく作ってある。どれだけ怖いのか知らないが一度見てみたくはある。
「菊人形の昔」 

「蟹のお角」 菊人形の昔 に出てきた蟹の彫り物をした女のとりもの話。外国人夫婦殺害事件。犬の死体が川に浮ぶ。半裸写真のモデル・復讐譚。

6/30
「川越の次郎兵衛」 武州川越、くりよりうまい13里ってここ…?
東照宮のお使い、と名乗り城内本丸に現れた謎の男。大店の若旦那の取り巻きが「本丸で天下を寄越せと言ったものに五十両」という遊びを開発したというオチ。「とかくに変わったことをやってみたがる。江戸の人気(じんき)がそんなふうになったのも、つまりは江戸の滅びる前兆」という半七の言葉はうなずける。こういう若者はいまとかわんないなー。

「廻り燈篭」 おかしな話・盗人が捕り方をおっかける。跡目を継いだばかりの若い三甚が無宿の大盗人金蔵を捕まえた、金蔵は自分を捕まえるのは名の知れた捕り方でなければとさかうらみし、牢を抜けたら三甚を殺すと言っていたのを、三甚の女が心配してあちこち逃げ回る。そういった人間模様を指して廻り燈篭に見立てる。

「夜叉神堂」 渋谷長谷寺に清水寺のご開帳があり、奉納の小銭で出来た兜が名物に・しかしその前立ての小判や銀が寺社方に注意され、とりさげることになった矢先に盗まれてしまう。
長谷寺名物の夜叉神堂に参った女から、盗まれた小判のありかは面を治めた箱の底にあったとわかる。夜叉神は腫れ物に貢献あり、そこにおさめてある古いお面を持って帰り治ったら新しい面を奉納する。そこへ、近くの寺の破戒僧が遊ぶ金欲しさに盗んだが、ひどく後悔して戻ってきて落着。夜叉神のたたりとか、なんか全体的にほほえましい。

7月
「地蔵は踊る」
江戸期の民間信仰、茗荷谷の縛られ地蔵にまつわる話。
高源寺の地蔵を拝んだらコロリにやられない、とおおはやり。或る日、その門前に女がくびられていた。流れ者の女、お歌は、参詣客を呼ぶため地蔵の下に穴を掘り地蔵を躍らせていた事実をネタに寺の美僧俊乗をゆすり、関係していた…女は生き残って俊乗がくびつって・ネタは面白いけど後味わるい~
下に穴を掘っていかさまをするからくりはばくちの「穴熊」。

「二人女房」
小金井の桜から府中の六所明神へ。半七が六所明神を参ったさい、くらやみ祭り見物で出会った一組の男女が、女の身請けの金を騙され奪われ心中した。そこから幽霊がでるという。一方和泉屋の女房が失踪し…駆け落ち詐欺の話。
暗闇祭りや府中の大国魂(六所明神)の話が面白い。「森のこずえに住む鷺や鵜が寒三十日の間はみんなどこかへ飛び去って、寒が明けると帰ってくる、一日もたがわないのが七不思議のひとつ」
その鳥が魚を落とすので空から魚が降ってくる・とか。

「薄雲の碁盤」
首を切られても蛇から主人を守った猫に由来する碁盤に、女の生首が乗ってさらされていた。
顔のあばたを手がかりに探す・相撲取りが、ごひいきのだんなの恥をそそぐために妾の女を殺した・という落ち。そういや相撲取りも武士階級だっけ…
そして、あばたをけすため朝晩苦心して化粧していたっていうお俊はえらい。江戸期は化粧のしまつがよいというのは美徳だったのな。
「白蝶怪」
正月深夜に白い蝶をみた娘が死に、次々に不吉なことが起こる。
不義密通、幸四郎の女、前科もちのお近が、夜中に白い蝶を飛ばして千人を驚かせば心願成就と
いう邪法を行なっていた。 *犯罪は旗本屋敷に逃げ込めば、町方は詮索できない。

名前だけは中学の頃から知ってて、かつあちこちで勧められてて、でもなんだかちゃんと読む気になれなくて過ごしてきてたんだけど思うところあって読んでみることにした。実は以前何回か読んでみたことはあったんだけど、どうにも面白くなかったんだよね…綾辻さんや我孫子さんのほうが、好き。
それでも巷で人気があるらしいと聞いて、一応読んでおこうかなと。いろいろ自分にも余裕ができたしね。

*随時追加中

先に全体の感想。まず、ある一定量の作品を世に送り出してるのは素晴らしいと思う。量をこなすミステリ作家は貴重。トリックの作り方とか文章の書き込み方を見ても、作者はまじめな人だなあと思った。見せ方がまじめだから、読みなれてくるとわりといろいろ、予想しやすい。私的な感想だけど、短編のほうがよいようにおもう。長編になるとなんとなく読むのが辛い…ものすごく巧いとか読ませるとかいう文章ではないだけに…ぐいぐい引き込むような筆力というよりは端正できれいめ、平坦な文章だから、長いのは正直飽きた。大体三分の一までに事件が起こってないとほんと辛い…今のところ、半分ほど読んで犯人(やトリック)がわからなかったら大体最後までわかんない傾向。

しかしもちろん、文章の長所短所は表裏一体だから、こういう文章が好きな人も居るよね。文章に癖がなく、難解さもなく、さくっと読めるところは初心者にも安心してお読みいただけるかんじ。



*以下トリックネタバレ・随時追加・●は犯人もしくはトリックが当たったもの



『ペルシャ猫の謎』 感想文捜索中
『ロシア紅茶の謎』 感想文捜索中
 
●『ブラジル蝶の謎』 天井いっぱいに蝶の羽。綺麗。携帯電話トリックは予想してたものと多少違ったけど、まあ当たったことにしておく。犯人はわかったし。教授が探偵をやってることについての回答「人を殺したいと思ったことがあるから」、このあたりに至るところの文章が、流れとしてはあまり・・・短編じゃ難しいのかな。このシリーズ読んだこと無い人が之だけよんでも「あ そう」で終わりそう、長編にとっておけばよかったのに。
→訂正。ちゃんと長編で扱われてた(『46番目の密室』)。でもこれってやっぱりシリーズ通読してる人でないと入り込めないんじゃ…
 
「妄想日記」 魔よけグッズ…なんか…そうだとしかおもえないけどまさかそれを?って思ってるとほんとにそれが重要だったりしてあなどれん…つか何を当てればいいのか読めなくて参った。あんな意味深な文字とか出さなくていいじゃんー。いいじゃんー。
 
「彼女か彼か」 あたしは女なのでトリックの謎がまったく思いつかなかったが親父に言ったら「あたりまえだろ」ってゆわれた。ヒゲ。
 
●「鍵」 犯人はわかったけど、何の鍵かっていうとこでやっぱり足踏みした…エロスを感じてよい。しかし今の時代まだあるんだろうか?
 
「人食いの滝」 トリックは本格派。一番読み応えがあった中篇。長靴のところなんて手を叩いて納得した。
 
「蝶々がはばたく」 蟹食べに行きたくなった…アレルギーで食べれないけど…いわゆるバタフライ効果のお話ね、でもこれ正しいミステリではないんじゃ…。作家さんはいいかんじにボケてるのだがそのあたりを突っ込みつつ読むのが正しいのかもしれないとこれを読んで思った。ていうかこの探偵と助手は仲がいいなあ。
 
●「白い兎が逃げる」 ストーカーが殺される。時刻表ものはやたら気合入れて読まねばならないので嫌い…私的にトリック云々よりもすべて兎と亀のイメージがちりばめられてるところに感心した。そしてサンドイッチを全部食べちゃう「私」に大笑いした。なんだろう、トリックがなんのかんのでなくて何か途中で「あ この人が犯人だ」っていうのがわかっちゃうんだけど…
 
●「不在の証明」 双子の弟が殺され、兄に容疑がかかるがその時刻兄は船に乗っていて…犯人はこの人しか居ないだろうと思ってたらその人だった、これはミスリードだなあと思ってたから最初から船の時間とかはガン無視して読んでたのが幸いした。そういやミステリに双子ものって多いな・・・
 
「地下室の処刑」 動機の斬新さは、確か。でもミステリじゃなくて、犯罪実録ものとかそういうのでなんかこういう〔お試し殺人〕話は読んだこと、ある気がする…ブランヴィリエ公爵夫人とかあのへんか?でもそうなると愉快犯に近いか…
 
「比類の無い神々しいような瞬間」 ダイイングメッセージの不確実性。表題はエラリークイーン「Yの悲劇」からの引用、死の直前は比類の無い神々しいような瞬間だから何かとんでもないことを考え出すとかなんとか。そう、誰にでも分かるようなメッセージを残すよりは特定の人間にしかわからない言葉で復讐を示唆する、それが合理的。しかし香ってなんじゃ。わかんねーよ。全体的に上方文化中心な気がする。。そして紙幣の謎は…もうそろそろ賞味期限切れるだろうな…こういう時事ネタってなんかずるい。
 
 
●『スウェーデン館の謎』 福島に取材にやってきた作家の有栖川氏は、ペンションの隣のスウェーデン館と呼ばれる童話作家の住む洋館で奇怪な密室殺人に出会い、助教授を呼ぶ。足跡トリック。
短的に言うと読みづらい。短編ばかり読んでたからかも知らんけどこのトリックならも少し縮めてもよかったんで無いかな。復讐とか人間関係とかも少しデモーニッシュに作ってもいいと思う。解説の宮部みゆきさんの文章が面白かった。
 
●『マレー鉄道の謎』 かつての友人、マレー華僑の大龍が支配人をするキャメロンハイランドのホテルへ向かう有栖川氏と助教授。そこで起こる密室殺人、目張りされた密室で死んでいた男の謎。
c・ハイランドは行ったこと無いけど金持ちか欧米人の巣窟というイメージ。どうせあたしはバックパッカー。此処最近こつをつかんできて、この人の作品は冒頭に必ず事件の本質部分が隠されてるので、冒頭の事件や人物を注意深くみておけば大体最後まで読まずとも犯人が判るようになってきた。トリックが分かるのではないとこが悲しいけど、まあ人間関係や動機がわかれば大体犯人もあてられるよね。マレーに数回行ったことある人物としてはマレー描写に今更新しさを覚えないし、マレー語について??なとこもあったし(マレー語は英語表記だから一見して意味不明な言葉ではないと思うんだけど…)、…松本清張がキャメロンハイランドを舞台に小説書いてるのは知らなかったから読んでみたいと思ったな。『熱い絹』ね。覚えておこう。
 
●『英国庭園の謎』 暗号文。謎を解く根気はなかったけど犯人はわかった。うーんドラマとしてはかなり後味わるいなこれ。。無意識かもしれないけど作者が謎の確信に迫るところって、けっこうリキ入れてることがある…「ここはおかしいよ」「ここは伏線ですよ」っていうフラグがわかりやすい、それはトリックの難解さではなくて文体や描写の癖みたいな…だからいくつか読んでると段々わかってくるんかな…
 
●「雨天決行」 女流エッセイスト殺し。「ウテン」=ヴ。はわかんなかったけど犯人は当たった。この作者フェアだからちゃんと読者に謎解きさせてくれるのが優しい、けどあの短さに容疑者つめこんでもほんとにすぐわかる。でもって動機は弱い=コナン化。それよりも後書、有栖川氏の相合傘の相手が助教授だったら本気でヒく。
 
●「竜胆紅一の疑惑」 売れっ子作家のスランプと殺される、という疑惑。これも犯人まるわかりだった。うーんもうすこし犯人をさりげなく登場させてたらよかったのに。
 
「三つの日付」 何を当てればいいのかという…日付ネタは古くなるとダメだな。1992年ってあたしまだ小学生だよ…メキシコのカレンダーは3/21が祝日だというお話し、アミーゴとか言う助教授が不気味。お前はそんなキャラじゃない。
 
「完璧な遺書」 作家殺し(やけに多いな)の隠蔽に遺書を偽造したがワープロの変換機能の特殊性からミスをする。狂言回しの有栖川氏が名前しか出てこないからか、犯人視点で書かれてる。しかしこの機能をほとんど使わないあたしからしたらあんまり現実味が…みんなそんなに使ってるのかなあ変換機能…
 
「ジャバウォッキー」 関西に住んでないとでてこないよ!!>明石天文台 土星ネタも古いからわかんない。だからさー時事ネタはさー。路線もわかんないし…というわけでなにやら途中までは真剣に謎を解こうと思ってたけどハンディがあるのでやめた。言葉遊びはまあ面白かったかな。オチも小粋だし全体的に動きがあってテンポよい、この作者はあまり修辞なんか気にせずこのくらい紋切りのほうが良い気がする。犯人、山沖も異常なキャラがよかった。
  
『乱鴉の島』 だから助教授と有栖川氏は仲が良すぎてキモいってば!四六時中一緒に居るんじゃなかろか。
烏と鳥の間違いで黒根島にたどり着いてしまった二人。島には神秘の詩人を囲む集いが。場違いな子供二人、クローン人間研究、あきらかに某IT企業社長を髣髴とさせるオタク社長ハッシーを含む二人の犠牲者。
吊橋効果と子供の意味について、詩人海老原とその企みについてはぴんときたけど、今回は犯人がまったくわからなかった。理由は、あたしはこれを推理ものとして読んでなかったから。負け惜しみじゃないよーだってこれSFだもん絶対。助教授とアリスじゃなくてもぜんぜん成り立つ、っていうかむしろそうしたほうが面白いんじゃないだろか。ミダスの黄金の指の挿話とか小粋でおもしろい作りなんだけどなあ。各章の冒頭、後半は「猿の手」やらボルヘスやらアトム、全部「生まれ変わり」の示唆じゃん・とか思っていたので何かもっととんでもない秘密や謎があるのかと思っていたらあたしの予測範囲内だったのでちょっとがっかりした。

『絶叫城殺人事件』 
「黒鳥亭殺人事件」 共通の友人宅へ向かう助教授と作家。そこは、以前夫が妻を殺したいわくつきの家であり、またつい先日井戸から死体が発見された場所だった…友人の小さな娘と質問ゲーム「二十の扉」に興じる作家はほほえましい。グリム童話が謎解きの鍵になってラストはアンファン・テリブル風。いや…何をどう当てればいいのかの部分でまず挫折してた…二十の扉のほうはなんとなくわかったんだけどなー。
 
●「壺中庵殺人事件」 偽装縊死。この手のトリックはあまり好きではない。展開速い。例によってカンで犯人はあたった、容疑者が絞られてる話だと当てやすいな。
 
「月宮殿殺人事件」 サボテンがキー。フランスの郵便配達夫シュヴァルの話なんかも出てて、なかなかしゃれてるなあ、というのが感想。なんかまったり。
 
「雪華楼殺人事件」 鉄筋コンクリートの建物で人が落下し、死んだ事件。恋人だった女の子の描写がいわくありげだったけどそう繋がるのかー、いやこれ…つながってるんか?と。なんつうかこの人の文章に純文的な描写はあんまり向いて無いような気がするんだ…申し訳ないけど陳腐に見える…
 
「紅雨荘殺人事件」 映画の舞台にもなった紅雨荘で化粧品会社の元社長が殺され、三人の子と従姉妹に嫌疑。冒頭のおもわせぶりなシーンがなにかにつながるかと思ってたら単に映画の描写だった…この作家さまの感性に何か共感するものを感じる。あたしもなにみても泣くからな…。で 結果的に複数犯だったのかー これはわからなかった、一番怪しくなさそうな人が怪しいと思ってはいたけど…それはカンであって推理ではない。
 
●「絶叫城殺人事件」 絶叫城ってなんじゃいと思ってたらゲームの題名だった。。ナイト・プローラー。
これで、事件の鍵を握るマニアックな人気ゲームとやらに現実感があったらな…あんまり面白そうに思えないんだ…。ミスリードや伏線はきちんと書かれてるし途中まで読んで犯人及び動機の推理はほぼ当たった、ラスト、犯人の独白はなかなか「ありえそう」でコワイ。
  
この本の短編はいろいろ凝ってるけどあたしは月宮殿が一番好きかなー。まっとうな推理ものでないところ、衒学的なとこ、無機質であたたかみのあるテンポなんかが好きなので。

5/19 追加
『幽霊刑事』 もと日立企画イベントの推理劇だったそう。探偵役の刑事が最初から幽霊で登場、助手が霊媒刑事。うん期待に違わぬギャグっぷり。本文もね。でも霊媒刑事がイタコの血筋だから霊が見えるって…恐山まで行ってきた人間として言わせて貰うと安 易 過 ぎ 。そんな体質だったら他にもいろんな霊が見えてたはずだぜ?
まあそんなツッコミはともかく・主人公を殺した犯人が密室で殺されちゃう、果たして黒幕は!?ってんでその謎を解くんだが…うおいラスト近く展開速すぎね?幽霊となっての感慨とか不安とかそんなんもっと短くてよかったんでね?主人公の恋人がけなげ。あと助手の早川くんがいい人すぎる。で 肝心の謎解きだけど、んー係長が本部のスパイだっつうのははじめのほうでわかってたけどそれは本筋の謎と関係ないとこで展開してたし 言動とかからなんとなくこいつが犯人かなーとは思ったものの、長いので途中で推理に飽きてしまった…麻薬が絡んでたのね、伏線生きてるわー。こうなると劇のほうを見たかったな。

『幻想運河』 バラバラ殺人、ヤヌスの両面、ドラッグを使った証人工作。うん 今んとこ 長編だとこれが一番かも。もう少し縮めてくれればの話だけど。しっかし言葉遊び好きだなーこの作者。この作品の中にでてくるアソビは、印刷まで凝っててあたしごのみのつくり。オランダのアムスと大阪、どちらも以前一度だけ行ったことがあるので一応イメージはわかった。ドルーズとガタリのミルプラトーが暗示的に出てきてくれて、いいかんじに学術的なのも好み。そんで、主人公のルポライターが書いた文中文の小説の、麻酔でバラバラ殺人トリックが秀逸。こええし迫力あるし狂おしい。あたしならもったいなくてこの話だけで書いちゃうけどな、正統派ミステリ作家にとっては邪道だったのか知らん。
んーでもやっぱり作中人物の感情がさらっとしすぎてて、やっぱどうにも動機が弱いような…予知の話とかもっとリアリティ持たせればなあ。
*具体的にどういうとこがジャマかというとさあ、キーワード「ヤヌス」だからって担当刑事の娘を双子にしなくてもいいじゃんとか。そういう小細工っぽいのがなんか…いただけないのです。あとドラッグでトんでる描写とか。

『月光ゲーム』 これを一番最初に読むんだった、と後悔した。ある作家の作品を、少しでも分析的に読む覚悟なら・作家がどの順番で書いたかを意識する原則を忘れていた。それにしてもデビュー作だけあって気合は言ってるなあ。。見事にミスリードに引っかかって、サリーが犯人だと思い込んでたので作者からの挑戦状の辺りですっかり戦意喪失してた。そして推理として読むとやはり冗長で・も少し短くならんかといらいらした、けど現役学生の頃に書いたときは、これ短編だったらしい。何度か書き直したみたいだけど・短編のほうを読みたいなー。とりあえず冒頭中井英夫が出てきた辺りでよし、と拳を握る。ミステリしりとりとか乱歩やら横溝のオマージュ、知ってる人ならにやりとできる会話が楽しめた。そんでクンダバファーはわからんかったけどグルジェフは、あれラヴクラフトあたりが扱ってなかったか?違ったか?
今回最初の章で確信してたのはあれだ、アリスが失恋するだろうということだけだ。

5月末
『孤島パズル』 推理小説研究会に加わった新しい女性メンバー、有馬マリアの伯父の別荘へバカンスに招待された江神さんとアリス。時価数億のダイヤを巡るパズル解き、三年前、マリアの従兄弟英人の死を巡る遺恨、やがて起こる密室殺人。凶器のライフル、モアイの向き、自転車の数。
わー 今回いろいろわかんなかった!でも謎解きはなるほど、納得いくんだよねー。あたし英人の事件を途中から忘れてた…。学生編の方が凝ってるし難しいような気がする・・・そんで、学生辺の方が犯人に優しい。

『ジュリエットの悲鳴』 短編集。わりと上質、というか面白かった。助教授と作家シリーズよりだんぜん。「裏切る目」は中井秀夫の短編を思い出したな、しかし推理小説にはいったいどんだけ色盲の話がでてくるんだ…これは片目だけという意外性の話。映像的につつじの花が突然浮かび上がるというのはやはりキレイ。インターミッションの短編もまあまあ。「パテオ」は推理じゃないけどなかなかこじゃれた一品。笑える。表題のジュリエットのなんたらはちょっとな…いまいち。あたしこのひとの青春小説描写はあまり好きではない。
やはりなんといっても「登竜門が多すぎる」だな!いやこれはすごい、ほんとに。これだけのためにこの本を欲しいとすら思った。ネーミングセンス・推理小説の知識を問われるなあ。後書き他の作家に褒められたとゆってたがあたしは冗談抜きでこれがこのひとの短編では最良だと思う。

●『ダリの繭』 わーい当たった、しかもトリックの部分も!これは珍しい。。でもどう考えても、あの髭を剃った理由はそうとしか考えられないし凶器に指紋がついているというのもそう解釈するしかない、ていうかあたしが以前考えてた推理ものに近時しててちとへこんだ。「殺そうと思っている人物が殺されてしまう」、だからこそ殺した人間のアリバイは完璧になる。ダリはともかくシュルレアリスムは好きなので今回は読んでていろいろ映像が浮んだ。鎌倉のダリ博物館行きたいなー。

6/5
『46番目の密室』 教授と作家シリーズ長編第一作なのかな?私的に某受賞作の長編よりもこっちのほうが断然良いと思った。ミステリネタの豊富さやアンチミステリ論議とか…マニアックだけどこうゆうのすき。トリックはともかくとして犯人当ては惜しいとこまでいった、前半三角関係の描写がやたら強調されてていかにも怪しいな、てのは感じてたけど、でも動機から言ったらいまいち薄いよなーと思ってたらまさかオチが男色とは…そうくるとは…とりあえずこれを書いた時点では作者自身あんまりゲイのことよくわかってなさそうだ。あんな重大な事実をいきなり種明かしのシーンでぽんと置かれてもねえ…も少し匂わせて欲しかったナー。このへん乱歩とか巧そうだ。

『暗い宿』 宿にまつわる短編集。
「暗い宿」 いくらシリーズだからって、アリス、事件に遭遇しすぎ。廃墟愛好者というとこは親しみわいたけど。自分が宿泊した宿に死体が埋まってて、でもそれはカモフラージュで…みたいな。短編だけあって、最初から犯人バレバレで謎要素は薄いしさくさく読んだ。

「ホテル・ラフレシア」 すげえ、名前からして猟奇、と思って読んだらぜんぜん猟奇じゃなくて、ホテルのミステリーイベントにやってきた助教授とアリスと心中事件。これも謎って言うよりサスペンスだな。ドラマチックではあったけどミステリではない。むしろイーグルスのホテル・カリフォルニアってそういう曲だったのか、みたいな・・・

●「異形の客」 アリス、温泉宿で事件に遭遇。だから事件あいすぎ。今回はわかりやすかったなー ひきこもりの大学生が殺される、友人が犯人。通り魔事件の隠蔽が真相だったんだけど、トリックよりは状況証拠というか、供述がだいぶあやしかった。たまにはこういうわかりやすいのがあると和む。

「201号室の災厄」 火村教授の災難。ロックスターの殺人にたまたま部屋を間違えた教授がまきこまれる。ま、苦しいトリックだなーと思ってたら案の定…ミステリではないなこれ。トリック捏造。

『山伏地蔵坊の放浪』 スナック「えいぷりる」常連の人々に、「さすらい人の夢」(ボヘミアン・ドリーム)というカクテルが好物の山伏が語るミステリ譚。語り手は「ぼく」ビデオショップオーナー青野良児。物語の冒頭にある山伏の解説が秀逸だった。勉強になる!!全体として小粋で洒脱。続き出ないかな~

「ローカル線とシンデレラ」 ご当地アイドルを救え!みたいな。クリスティのそして誰もいなくなったみたいな、乗客全員が共犯オチ。
「仮想パーティーの館」 仮想パーティーに紛れる山伏。バットマンとダースベイダーは間違えない。いくらなんでも。ゆえにわかんなかった。このトリックはありか・・・・?
「崖の教祖」 新宗教の教祖が爆殺される。話の内容的にとてもなんというかなじみが深かった。
●「毒の晩餐会」 遺産相続と隠し子。わかりやすい。どう考えても本人の服毒だろ。
●「死ぬときはひとり」 ヤクザの自殺。保険金詐欺。
「割れたガラス窓」 トリュフの晩餐に招待された山伏。割れたガラスによる犯行時刻偽装トリック、防弾ガラスがキー。しかしあたまのわるいあたしにはこのトリックはあまりぴんとこなかった。それよりも世界三大珍味が思い出せなくて気になった。トリュフ、フォアグラ、キャビアね。
●「天満博士の昇天」 特許泥棒の博士が殺される。うん、犯人はやつしか居ないと思っていた。トリックはともかく文章の書き方から。

7月追加
『朱色の研究』
紀州は行きたいと思ってたとこなのでちょうど勉強になった。太陽崇拝の話とか。
「夕焼け」キーワードに熊野、フダラク信仰まで出てくるのはよかった。中上健次の名も出てくるし、どうせ二上山だすなら折口しのぶの『死者の書』を暗示させても良かったんではー。
トリックは…①マンションの謎は分かりやすかったけど、②影の話はあんまり…三つの事件が繋がってるというのにリアリティがもてなくて、なぜかというとそれはやっぱり動機の部分に?という点があるからだなー。
アリスは共感してたが、片思いのオレかっこいい、みたいなのって正直…高校生くらいまでにしておこうぜ。そこまで自分を追い詰めるって・若干文学的過ぎてだめ、「若きウェルテル」みたような繊細な男性の心はようわからんわ。
せっかく文学にするんなら全編徹底的にやって、ペダンチックにしちまえばいいじゃんーって思う。けどある意味でキャラクター小説だからな、難しいのかな…

『作家小説』 作家をテーマにした小説短編集。謎解き要素なし。
もう返しちゃったしあんまり覚えてない、純文的なものからホラーまで、
「ライティング・マシーン」はこええかな。書かなきゃ死ぬ、ってかんじがでてた。

8月追加
『スイス時計の謎』
「あるYの悲劇」 
Y → ↓の書き損じ。犯人の出現パターンが従来の正等パターンと異なって、犯人が突然出てくるが、わかりやすかったしダイイングメッセージのトリックも面白い。平面ではなく三次元。山崎=やまもと。
「女彫刻家の首」
首がビーナスのものと挿げ替えられた死体。何のためか?
髪型が関連するだろうというのは分かった。しかし普通美容院帰りに帽子被る人は少ないぞ…
これも、犯人がラストで事故死する・有栖川作品では珍しいパターンではないのかな。
「神に裁いてくれなんて誰が頼んだ」という台詞がいい。

「シャイロックの密室」
犯人の独白から始まる。トリック重視、なのだから犯人の情報をもう少し欲しかった。磁石と閂のスライド。

「スイス時計の謎」
高校のエリート五人組同窓会メンバーの一人が殺され、時計の破片が落ちていた。その時計は五人が特別に作ったもので…時計にイニシャルを彫ったかどうか・徹底的にロジック中心の謎とき。地味…
わたしこういうの苦手だわー。そしてアリス「美少女」連呼されすぎ。

『モロッコ水晶の謎』
○「助教授の身代金」
犯人は最初から妻だろうなーと思っていた。殺害者と脅迫者が分離しているというのは作中でもほのめかされてたしね。それにしても逆探知ってものの数秒なんだな。そして携帯電話型の盗聴器の話が…こええー。普通にどこにでも使われてそうで。
「ABCキラー」
「助教授」~的な発想で、ABCDの殺人はどこかで分離してるんだろうとは思ったけど、残りの人間関係を読むのがめんどくなって推理やめた。どっちかというとアリス(作者)の薀蓄部分、クリスティのABC殺人事件のツッコミが面白かった。確かにLとかV、Pとかって日本じゃ無理。名前と地名をあわせるんだから…

「推理合戦」
和んだ。推理するまでもないけどこういう掌編たくさん読みたい。キャラもの+ミステリーなんだからファンサービスにこういうの増えてもいいと思う。
「モロッコ水晶の謎」
これまたロジック中心…しかもロジックの中枢が占いにあるもんだから調子狂うわ。人間関係的な謎(畝美苗がボギーを好きだから屋敷を去りたくないだとか)はともかくとして、なぜ毒杯を殺したい人物に受け取らせたかの真相、きわどい。火村先生実はかなりロマンチストなんじゃね?それか全ての物事を客観視できる人間か。それは神だが。でないとこういう発想出てこないぜ。というわけで火村助教授の新しい一面を見たおもい。



「海のある奈良に死す」
アリスの同業者、赤星が取材旅行中に殺され、若狭湾に浮んだ。
海のある奈良=小浜というのは知らなかった。でも人魚=八尾比丘尼、ってのはかなり分かりやすかったなー。民俗的な要素を取り入れると私はがぜん好感度が上がる。。
あと面白かったのは駅の名前。合格祈願に切符買うとか、面白い。
しかし毒入りウイスキーを飲ませるためのサブリミナルビデオってのはちょっと強引な気が。

9/
●『双頭の悪魔』
学生アリスシリーズ三作目、前二作のヨミはぼろぼろだったけどようやくなんとなくつかめてきた。
四国の山奥、芸術家達が暮らすユートピアからマリアが帰ってこない。江神さんはじめ、推理研のメンバーはマリアを連れ戻しに行くが、土砂崩れで夏森村とユートピアが分断され、その双方で事件が起こる。
何のために香水が使われたか・は、死体が発見された時点でほぼ検討がついたけど、時間に関わるトリックはめんどいので投げていた。シドさんか八木沢さんか、の二人に絞ってはいたけど。
夏森の方は手紙の受け渡し方が郵便配達夫の彼しかできないだろうというのを予想してたので、簡単だった。
関わり無い事件を繋ぐのは交換殺人しかありえないと思ってたし、香水の匂い当てのくだりで「匂いをかぎ分けられる本人が犯人だったらどうすんだろ」と思ってたのでこの辺はわりとわかりやすかった。
別件の感想としては、郵便配達夫シュヴァルの話が出てきて嬉しかったね。中学時代から好きな逸話だ。あとパノラマ島の話もこの前読み直したばかりだったのでタイムリーだった。つうか最後に掲げられた参考文献、あたしも所有している本があった。にやり。トリック・犯人共にかなり当たって嬉しかったなー。

2008/05
△『女王国の城』
学生アリスシリーズ四作目。
姿を消した部長を追って長野 木曽にある信仰宗教団体の街に入り込んだアリスらは殺人事件に巻き込まれ、都市に閉じ込められる。
今回は江神氏が囚われてたり過去があきらかになったりと大活躍でした。でも正直、中盤だれた。あと一人称が頻繁に入れ替わるとこがあってよみづらかった。
トリックはこれが一番易しかったなあ。ただ文章は前の方が好きかも。洞窟のナゾはイヤリングの記述が思わせぶりだったのでわかりやすかったし、そう考えたら犯人は当時子供だった誰かだろうと。ついこないだYの悲劇を読んだばかりだったしそういう先入観があったのかもわからん。冒頭の暴走車も、なーんかひっかかってたらちゃんとなぞかけがあって、やっぱりこの作者フェアだなーと改めて。あやしいところは全部ちゃんと裏がある(笑)
ただトリックはともかく動機とか考えるのめんどうで、途中から投げた。
自分のかつての専門分野に被ってて読んでて辛いものがあった、UFO信仰と女教祖と新宗教……いろいろモデルが髣髴としたわ、P・Lとか、T教とか。そして正直推理小説を読む気力の無いときに読んだのでななめよみはいなめない。


5月5日、関東屈指の大祭 府中大国魂神社の暗闇祭に行ってきた。
実は近くに住んでるくせに一度も行ったことなくて、ちょうど岡本綺堂の『半七捕物帖』読んでたら暗闇祭の話が出てきてタイムリーだったので。

なぜ暗闇祭かというと、このお祭はお宮の数だけの神輿が夜中の12時に渡御するのが見所なんだけど、まっくらやみの中、街道のぼんぼりのあかりにてらされた神輿が渡っていくのはとても綺麗だったからだそう。

もっとも、暗闇の中の祭だけに喧嘩沙汰や事故が絶えず、死傷者も出たとあって戦後に時間がずらされたりなんだりで、現在は夕方6時から神輿が出るらしい、と聞いて、5時半には府中駅に到着。(ちなみに5日の昼はGと警察博物館やチョコレートカフェに行ってたんだけど、Gが新宿に用事があるというので後で府中で落ち合うことを約して、いったん解散)

大国魂神社は駅から徒歩五分、記憶の限りでは街中の閑静なお宮…のはずなんだけど…

  す っ ご い 人。

歩けないくらい。手前と奥は警官なんだけど、拡声器で懸命に見物人をなだめてるのが涙を誘った。ていうか見物人も言うこと、きかないきかない。入るなって言われてるとこにむりやり入ろうとしたり…神輿が出る前にそれぞれの神社の太鼓が引かれてくるんだけど、その太鼓衆が殺気だってて、ああ、祭の血が騒ぐってのはこういうのをいうのかしらと思った。そんな中をかいくぐり、あたかもゴール下のバスケ選手のような力技のポジショニングの結果、

 太鼓衆の目の前ゲット。

いやあ苦労しましたよ。人混み嫌いだけどこういった、お祭のほどよく緊張感の漲った雰囲気に紛れるのは、わりと、平気かも。
太鼓の上に登ってる人が「オーエイ」と合いの手を入れると、打ち手がドオン!と打つ。リズムがいい。餅つきを思い出した。年季の入った巧みな打ち手だと、大きく仰け反ってポーズをつけてから打ったりして、ものすごいかっこいかった!でもこれすごい疲れそう…途中で「誰か代わってくれえ」って叫んでる人も居て、笑いを誘った。

この後次々と太鼓と神輿が渡っていくのをひとしきり眺めてから、出店見物。
大きなお祭のせいか、あまり見たこと無いようなものも出ていて面白かったな。亀釣りとか。「アメリカから到来!」っていう看板に魅かれて覗いてみたらコーラ売りで、何世紀前の看板を掲げているのかと思った。

 いろいろギリギリな化け物小屋。

そうこうしてるうちに七時半過ぎになり、暗闇の街道に神輿と人が溢れる時刻になってきたのに落ち合うはずのGから連絡が無いので不安を感じて電話してみたら、神輿及び見物人及び警官を挟んだ対角線上にいやがったのでいささか絶望した。直線距離だと二十メートルくらいしか離れていないけど障害物が多すぎる。
一キロくらい人ごみの中を迂回して再会。

 暗くてよくわからないけど神輿。

この神輿、全部ちょっとずつ作りが違ってて、凝ってたなあ。担ぎ手はみんな声を張り上げながら自分とこの神輿を盛り上げて縦横無尽、道端の見物人に担ぎ手の汗がとびちらんばかりで迫力満点!神輿について、よく「揉む」「揉まれる」っていう表現を使うけど、すごくしっくりきた。
このあたりにくるとクライマックスでもあるせいか、酒の入った見物人がそこここで罵声や野次や与太なんかを飛ばしあっておもしろいのなんの。

「バカヤローてめぇこちとら見られにきたんじゃねえ 見にきてんだよォ!」とか、さすがに喧嘩祭といわれるだけある、警官も必死で喧嘩の仲裁に入ってて大変面白そう…じゃなくて、大変そうだった。

 境内。神輿が渡り終えた後。

いつもは夕方までの境内も祭のこの日は夜中まで賑わってます。昔はそのままボーイミーツガール…すなわち見知らぬ男女が睦みあうお時間とあいなったらしい。『燃えよ剣』で土方歳三なんかも来てたな…
厄除け守り、烏のぬいとりがしてあってラブリーだったので紺色のやつを購入してみた。

***

さすが、何百年も続いてる伝統のお祭だけあって、地元の入れ込み方も半端じゃない。半被着てハチマキ締めたら覚悟しな、って世界だ。とにかく迫力。

実は、儀式自体は4月の終わりから何日かかけてあるんだけど、そっちは神官だけで行われる本物の「祭」であって、私のような市井の俗人が見ることができるのはあくまでも「祭礼」の部分だけなんだなあと、熱狂する人に揉まれながら、少し考えた。

人のための祭ではなく、神のための祭 神が居る祭 というのは、どんなに乱れても、どこか厳粛に思える。





仏典は味わい深い。

それにつけても人生とは闇と闇の狭間にある闇なのだと今日実家の部屋を整理していて思った。なんというか自分がいかにどうしようもない存在だったのかよく理解できてしまって泣けた。自分はけして他人から愛されるほうではないということは自覚しているのだけれど、自分で自分への愛想が尽きそうで困っている。過去が牙を剥いて押し寄せてくるのに逃れられない。



誰かに対して誠実であろうとすればするほど傷つけてしまうので、最近はもういっそはじめから全て嘘をつくことにしているのだけれどそれもうまくゆかない、考えてみるとあたしは昔から嘘をつくのが下手だった。嘘をつくのがうまい人は、自分でその嘘を信じ込んでしまうらしいよね。だから罪悪感も無いのだろうなあといつも軽やかに嘘をつく彼女を観ていて思う。軽やかに鮮やかに人を抉る。羨ましいとは思わない。



こつんこつん、という音で目が覚めたら雹が降り始めたとこだった。雨よりも硬く雪よりも乾いたものが後からあとから絶え間なく降りかかるのを呆然として観ていた。後で庭に出てみたら、咲き初めの薔薇が何本かやられてしまっていた。丹精込めたデイライト、クリーム色の花弁のふちがほんのり紅く色づいて香るのがお気に入りだったのに。玄関先のジャスミンは、うちへ入る路地を曲がった瞬間から匂いがわかるほど。木香薔薇のアーチはもうすぐ盛りを迎える予定。ちょっとしたローゼン・ガルデンではある。

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