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ゆめ か うつつ か
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わたしは子どもを背負っていた。

間一髪、乗り込んだ船は荒れ狂う大地を後にし、静かで穏やかな海へと乗り出す。助かった、やっと地上を逃れることができた。ほっとして辺りを眺め気がついた、船にはデッサンが狂ったように曖昧な人影がひしめいている。厭な予感に背中の子を下ろすと、なまあたたかいその子は、いつの間にかひとかたまりの肉になっている。かおも目も鼻もくちもない、ふるふると震えるピンク色の肉塊。やがて周囲の人々の輪郭がゆるやかに溶けだし、出来損ないの豚のようなかたちに変化する。わたしはいつの間に豚の船に乗ってしまったのだろう?
当惑するわたしに、今や肉の塊と化した子どもが言う。

「海の向こうに、ほんものの豚になれる国があるの。わたしたちは皆、ほんものの豚になりにいくんです」。

こんなまがいものでなく、きれいなかたちを保ち、金色の産毛が透ける、まるまると太った美味しそうな豚に。

「果てしない旅の終わりに立派な豚になったなら、どうぞ美味しくわたしをおあがりね」。

呆然とするわたしの耳に、やがてごうごうと地鳴りの音が響く。



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