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ゆめ か うつつ か
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毒気が満ちる時季に見たゆめ。





わたしはヨミスメとよばれる水を求め、源泉にたどりついた。

透き通るような池に、百合とあじさいがなかば水没するように咲いている。水面に映る花のかげが滲むやわらかな色彩の中で、私は湧き出す水を汲み上げ喉を潤した。

雨が静かに降り出してきていた。

池の奥にある社務所は無人だったが、数匹の犬が寝そべっており、暖かなストーブがたかれていた。犬はどれもおとなしく、わたしには大して関心を示さなかったが、ただ一匹の黒犬が私をみてくんくんと甘えた鳴き声を出した。よく見ると黒犬は極端に狭い円形の檻に釘付けにされているのだった、と言うのは、その腹に鉄格子が刺さっているのだ。わたしはなすすべなく犬の頭をなでるしかなかった。

やがて小雨になったので、わたしは池を過ぎ、ながいながい坂をあがる。わたしの横を滑るように滑らかに自転車が通り抜けて行った。

坂の上は行き止まりの分かれみちになっていて、ステテコ姿のおじさんが街へゆく正しい道を教えてくれた。そうしてわたしはどこか既視感を覚えるその道をずんずん歩いて行った。

その街はひなびた温泉宿といった風情で、ずらりと並んだ屋台のような湯屋の土間には人が集って賭け事や寸劇に興じていた。
わたしはこの街には一度も来たことがないはずのに、そうした情景がなぜかひどく懐かしく思うのだった。

わたしは不意に、mに電話しなければいけないと思う。「黄泉純水」を飲んだよ、と伝えるために。


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