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ゆめ か うつつ か
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両親と車に乗って伊豆へ行く途中である。人形の家のようにちいちゃな箱めいた家々が建ち並ぶ崖線をゆるやかに走る。海は鏡のように光るばかりで、一向に潮の香りもしてこない。芝居のかきわりのような海だな、と私は思う。匂いも音も無い。
上を見ると、よく晴れた空を覆いつくすように巨大な観覧車が音もなく回っている。あまりにも巨きいので向こうが見えないほどだ。観覧車はゆるやかなカーブを描き、次々と山の向こうに消えていく。

突然車が横転し、わたしは頭を打って昏倒する。

気が付くと私は寺の門前に居る。中ではどうやら葬式が営まれているようだ。何となく私も参加しなければいけないような気がして慌てて中へ入ると、みな無言で道を空ける。
お堂には仏像の代わりにグランドピアノが鎮座ましまし、喪服の少女が演奏している。私は彼女に「亡き王女のためのパヴァーヌ」をリクエストする。畳の上で神妙に聞き入る弔問客を後目に、私はピアノの蓋を開け、中に入り込む……




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