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ゆめ か うつつ か
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T先輩から電話が来た。

「久しぶり!元気?今高円寺で飲んでるんだけど、来れる?」
「ムリです!」

……あいかわらずのいきなり具合。素敵だ。学生時代は週2以上一緒に飲んでたし、大好きな人なのだが、しかし今は地方にお住まいなので長らくお会いしていなかった。なので新年のご挨拶やら無沙汰の侘びやら していたら

「そうそう、今度Kが末期ガンで死ぬんだよ」
 
と コップが割れた くらいのライトさで言われて

「あら、そうなんですか」

と、こちらも軽く返してしまった。その後我に返ってしどろもどろに経過や病院のことも訊いたけれど、もう言葉も喋れず お見舞いもできないくらいの状態だという。

Kさんはわたしが20歳のとき、T先輩の弟分として紹介されたひとで、わたしは最初そのデリケートな声と喋り方に、彼のことをゲイかと思ったほどだ(真相はぼかされたのでいまだナゾのままだが・ちゃんとカノジョも居たところを見ると女の子にも興味はあったらしい)。好きな作家の話で『ロリータ』とナボコフの話題で盛り上がり、生意気な本をかじっていたので「ちょっとねえ、きみ、ほんとに20歳?証拠になるもの見せなさいよ」と言われたのをよく覚えている。
次に会ったときはトランスセクシャルとゲイの話をした、やっぱり恐ろしいくらい真剣に「そういうのどう思う?」て言われたのを覚えている。どう思うも何も、否定したら弾劾されかねない口調だった。そんな気迫だったので「個人の自由だと思いますが」とだけ答えた。
T先輩の誕生日に特上の葉巻をプレゼントして、わたしもひと吸いお相伴に預かった。
名刺入れがとても素敵で、訊ねると「これ?ふふん、アンティークショップでね」と嬉しそうに答えていた。全体的にとてもオシャレでセンスがよかった、もっと話したかったし会いたかった、会えると思っていた。

電話終わってから、涙があふれてしょうがなかった。
気付いたらmが貰い泣きしてて、びっくりして涙止まった。



生きなきゃな。


 

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