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ゆめ か うつつ か
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裁判にかけられる。

なんでもわたしはガラスの灰皿で友人に殴りかかり、殺そうとしたのだそうだ。そんなことをした覚えは全くなかったが、しかし、優秀な弁護士君は言った。

「なあに大丈夫、楽勝ですよ。あなたはいささか逆上していたのです。何もかも忘れているというのがその証ですよ、つまり心身喪失というやつですな。それというのも相手があなたをけしかけたんですから……」

いかにも親しげに、父親が子供をなだめるように肩を軽く叩きながら、彼は、裁判の次第を事細かに教えてくれた。あらかじめ台本を渡されたようなものだった。
だがしかしなぜそんな必要があるのか、罪を犯したのなら償いたいと、強く願いながらもわたしは言い出せなかった。わたしには、犯した覚えもない罪を背負う勇気はなかった。
心のなかの醜い思いを忘れるために、つとめて裁判の形式に沿おうとして、わたしは、裁判には何を着ていけばよいのか、最初に踏み出す足は右か左か、などつまらぬことをいつまでも尋ねた。

いよいよ当日、私の裁判はいつまで経ってもわたし始まる様子がない。前に行われている裁判がひどく長引いている。というのも、寸劇のような状況再現が絶えず行われていたからだ。それは保険金殺人の裁判で、被告の女は黒いブラウスに金鎖のネックレスという出で立ち、彼女は主役めいて華々しい存在感を放っていた。

「ことによると、今日私たちの裁判は行われないかもしれんな」

と 弁護士君が重々しく言った。私は遠く傍聴席からそのものものしい舞台を眺め、ともかくも今夜は安心して眠れそうだと、ひそかにためいきをついた。



学校には妖精が住んでいる。

彼らに会うには、朝礼が終わって授業が始まるまでの間、教室の隅で飼っている兎を檻から出せばいい。まっしろな兎はやがて綺麗な毛並みの馬に変わり、わたしを優しく背中に乗せてくれる。
駆けてゆくと、廊下はいつのまにか草原に変わる。太陽のひかりを浴びて、妖精王の少年が宴会を催している。杯になみなみと入っているのはあたたかなミルクだ。

律儀で器用な小人が、野に咲く花のアクセサリーを作っている。かれらは特別に調合した薬を花にふりかけ、鉄板に乗せると、かまどの中に入れるのだ。まるでパンを焼くように簡単に鋳造した百合の首飾りを、わたしはしげしげと眺める……。



何だかよく解らないが、試験を受けている。

試験場は高原にあったが、その牧歌的な風景にはおよそ似つかわしくない無機質な建物で、おまけに真っ白なものだから、しばしば霧に巻かれて、ステルス要塞のようだ。

試験官の点呼を受けながら、わたしは漠然と「これはスパイの試験なのだな」と思っている。

わたしと共に試験を受けるのはKちゃんだ。彼女は大変優秀な成績で次々に試験をクリアしていったが、わたしは落第ばかりだった。例えばわたしは罠でいっぱいの青白い洞窟迷路を抜けなければならなかったが、しかし、ここに罠があると思うと、その障害に引っ掛からずにいられないのだ。

そうして長いことかかってやっとこの洞窟を抜け出すと、外には桜の花が満開に咲いていた。わたしは、杏仁豆腐を食べながら、桜の美しさに魅入っていた。

 

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