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ゆめ か うつつ か
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市ヶ谷の参謀本部に届くのは灰色の報せばかりだった、昇官試験を殆ど白紙で提出した私はいずれ佐官殿にお呼ばれになるとわかってはいたが何も怖くはなかった、うろうろと歩き回るしか能の無い奴らなど!

ここに配属された日、満開の白木蓮に見とれた罪で殴られたときに或いは向こうも分かっていたのかもしれない、私がこの戦いの日々を生きぬくことなど不可能に近いということを。鞄の底に詰めた文学の本は見つかれば非国民のそしりを免れえないだろう、いいとも、この狂った世界で文学と心中できるなら…

私は意気揚々と空を見上げた、1945年6月曇天の空を。





このあと同期の陸軍将校西田(仮名)と友情を確かめ合ったり国を憂いたりなんだりするんだけどさ、どうして夢の中ってまったく知らない人間や事項をもっともらしく仕立て上げられるのかしら、薄暗い市ヶ谷の執務室まではっきりと。

中井の戦中日記を読んだのと、ここ数日祖母が来ていて、爺さんの話を聞いたからかしら。爺さんは陸軍、諜報課の少佐だったらしい。肩章いっぱい付けてる写真なら見たことある。

陸軍…石原莞爾は(しでかしたことはともかく個人として)わりと好きだ。
個人としてダメダメだったら何もなすことはできないんだけどね、小人であれ。

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