ゆめ か うつつ か
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印象雑記・随時追加。
ストーリーを簡単に記してるので今後読もうと思ってる方はネタバレ注意。
*
4 /7
「炎色反応」 一人の女の生と性。五色の炎で描く。各一話に独りずつ男が死んでいく。「赤忌」「青忌」かな。
「火星植物園」 流浪する薔薇の末裔を救う気狂い男女。
「被衣」フランス古典風・デモーニッシュ。伯爵夫人の堕落。
「呼び名」 中井ぽい。愛人との二人きりの生活に美少年が入ってくる。主人公はどちらをも愛する、がしっくりした呼び名を呼べずに居るうちに愛人である女はやすやすとその間を飛び越えて少年を「呼」び生け、老いた主人公を置き去りにして若い二人は去っていく。
香りの有る植物だけを抜書きにした「香りの植物園」は要コピー。香水と香り、色彩などについて。(*1987三一書房作品集2)
ストーリーを簡単に記してるので今後読もうと思ってる方はネタバレ注意。
*
4 /7
「炎色反応」 一人の女の生と性。五色の炎で描く。各一話に独りずつ男が死んでいく。「赤忌」「青忌」かな。
「火星植物園」 流浪する薔薇の末裔を救う気狂い男女。
「被衣」フランス古典風・デモーニッシュ。伯爵夫人の堕落。
「呼び名」 中井ぽい。愛人との二人きりの生活に美少年が入ってくる。主人公はどちらをも愛する、がしっくりした呼び名を呼べずに居るうちに愛人である女はやすやすとその間を飛び越えて少年を「呼」び生け、老いた主人公を置き去りにして若い二人は去っていく。
香りの有る植物だけを抜書きにした「香りの植物園」は要コピー。香水と香り、色彩などについて。(*1987三一書房作品集2)
「死者の誘い」
他人の遺書を読み、彼を自らの代わりに死んだとする。父が子を、祖父がその父を手にかける逆縁。宇陀家に巣食う植物の呪いについて。
他人の遺書を読み、彼を自らの代わりに死んだとする。父が子を、祖父がその父を手にかける逆縁。宇陀家に巣食う植物の呪いについて。
「影の狩人」
バーで知り合った男と交わす暗号めいた会話。吸血鬼との密事。ひたすらに夜を待つ。隠微。
バーで知り合った男と交わす暗号めいた会話。吸血鬼との密事。ひたすらに夜を待つ。隠微。
「星の破片」
タイムスリップもの。「寝顔の美しい人が好き」。星が落ちるなら時間だって越えうる、という飛躍的な発想が「らしい」。
タイムスリップもの。「寝顔の美しい人が好き」。星が落ちるなら時間だって越えうる、という飛躍的な発想が「らしい」。
「鏡の中への旅」 ←パゾリーニ 「テオレマ」
柚木という同僚の家へ招かれる。確かにあったような、初めて知った島へ。円錐形の山の麓の家に行くと異様な美しさを持つ彼らの一族に迎えられる。同性愛的恋慕と一家全員との交情、淫夢の描写の簡にして艶なること・「相似た同性さえも互いに肉体をもって愛し合えること」というテストに、しかし主人公は鏡の中の自分に入り込めぬまま朝を迎える。山は消え 柚木一家は消え かれらは地球への移住者であったのではないかと確信する。中井さんはこういうSFぽいのをたまに書いてるみたいだけどどれも秀逸だ。こういった事象をこころの奥底で信じてる人でないとこういうふうには書けないんでないかなと思う。
「あきびんブルース」
あいするものはみなしんだ。あきびんに変化する青年、稲垣足穂ちっくなメルヘン。うつろのメタファー?
「藍いろの夜」
年下の男、峻に紬の着物をあつらえる三輪子。年下の男への「姉」的な執着は着物を仕立てたその日に消えうせ、山で鳥うちにでかけた男は足を滑らせ死ぬ。「おんな」となった三輪子はあたらしいとしうえの太一郎に、峻への着物を送るが、その呉服屋は太一郎のゆかりの家で…らすとこわい。
このひと鬱屈した女の情念を描かせると女並みにうまいなあ。的確でこわいくらい。こんだけ見透かされちまうと前に立つのも恐ろしい。自分の男に藍の香りをまとわせたいとか…うわーイイなあ、と思うだけに…すごい。
「人形たちの夜」
春夏秋冬・兄弟の相克・同じ一行で始まり同じ一行で終わる
「憎悪の美酒」 イエスに差し出されたすっぱい葡萄酒、弟に山ぶどうで作った葡萄酒の、わざとすっぱく作ったものをやる。数日後、弟は自殺する。姉の関心を得たいがためのパフォーマンス。
山葡萄酒、あたしが作ったときは腐ったけどうまく作れるものなのかしら…
「貴腐」 プリチュール・ノーブル
カインとアベルの最終話・絵とき。貴腐とはボトリアス・キネリアの発生である。憎悪が足りない、弟殺しも妻殺しも全てが嘘、妻の死を受け入れられず、それならいっそ自分が手にかけたと信じたい、という狂気。虚無の犯人が動機として述べているものに近いものがある、現実と虚構がいつのまにか逆転しているこの手法は、慣れていてもぎくりとする。うろ覚えだけど最高のワインを作ってしまったら、そのあとはワイン作りをやめるか死ぬかしかないじゃないか、という言葉にはくらっときた。
6月初旬追加
『幻想博物館』 精神病院 流薔園にて。
「聖父子」 母を殺した罪を告白する父、自分がその息子だと信じる少年の絵。
「大望ある乗客」 乗客ひとりびとりが殺人計画を胸に秘めたバスが転落。
「影の舞踏会」 ゲイとマダム。洋子はビリヤードに興じる男達の合図を宇宙人の交信と信じる、確かに男達はいつだって秘密の合図を送り続けている。
「黒闇天女」 こくあんてんにょ・と読む。最も気に入った話の一つ。大家の遺産、メイド、トリカブト、殺るか殺られるか、「この不義者をかたづけておしまい!」
「地下街」 手妻(手品)の降霊術。夫から毒を与えられ死んだと信じた妻。死者の愛。
「チッペンデールの寝台 もしくはロココふうな友情について」 女房を誘惑したことよりチッペンデールの寝台を使ったことを憎悪する。ハシリドコロ・ベラドンナで殺す。殺人者に感謝すら。
「セザーレの悪夢」 流薔園園長の語り、罪業妄想、精神病の話。ここでこれ以前の話全てが妄想だとあかされる。多次元宇宙からパラレルワールドへ、そして園長も狂気のものとする、語り手すら違う世界の住人。鮮やかなまとまりに、箱の中から小さな箱がどんどん出てくるような錯覚感。
「蘇るオルフェウス」 手紙を何通か出すだけで殺人をなしうる・藤井家の此の世ならぬ美貌、ガス自殺、兄妹相姦を暴きオルフェウスの復活を願うケンタウロスの手紙。
「公園にて」 アンファン・テリブルもの。語り手の老人の終始かわらぬテンション、意外な結末、殺伐としてるのにどこまでも穏やかな佳品。
「牧神の春」 プシュウドモナス・デモスリチカ 牧神とニンフの放し飼い
「邪眼」 分裂症の青年、二つ口のあるグロテスクな人形と化す 今はいつ?
『悪夢の骨牌』 藍沢家の女性二人をめぐる短編連作、二人の若者の失踪、時間旅行、「現在」に戻ってくる男を待ち続ける瑠璃と柚香の母娘。
「水仙の眠り」「アケロンの流れの涯てに」「暖かい墓」 失踪した男を追って夢魔の館へたどり着いた男からの手紙。いもしない犯人が求められる。
「大星触の夜」「ヨカナーンの夜」ビーナスは大地、海が男というのは大いにうなずくところ。少年を飛ばせる柚香、星の街の娼婦。男を箱詰めにする少女。
「緑の唇」「緑の訪問者」 瑠璃とその夫の物語。連作の中でも特に気に入った。戦後の話だからかな、清濁が混在すれう、時間が交わる、奇妙なズレがそのまま美となる。タイムマシンの呪文。
「廃屋を訪ねて」「戦後よ、眠れ」「闇の彼方へ」 時間旅行に連れ出された男達の結末、日常を贖った直人とパラレルワールドの直人。母娘の呟。時間の獄の崩壊を願う・
『人外境通信』
「笑う椅子」 椅子が招いた男女の悲劇を椅子が語る。二話めの海軍将校と不倫する人妻の話、描写のうつくしさに思わずときめいた…匂うようだった。
「鏡に棲む男」〈ピーマンを憎み続けし者 ここに眠る〉
「扉の彼方には」 扉は入ってくるためのものか出てゆくもののためか…こんなばかげたことを追求する人間があたし以外にいたとは驚き。しかしあなたこれは分裂病ですよこの妄想たっぷりな強迫観念、誰かに追訴される、周囲とどうかしなければならないという思いは。
「青猫の惑わし」 猫をえさに釣りこまれる女、男と母親の奇妙な・・・
「夜への誘い」 見知らぬ人物からの招待状、小動物展示の小動物とはほかならぬ自分。アナグラム あたしにはわかんなかった…
「美味追真」 よもぎの酢漬け エストラゴン・オウ・ヴィネーグル タイムマシン 自分の故郷に帰る 「己をくってくれ」
『真珠母のはこ』 はこ 出ない。甲という字が構えのなかにはいってるやつ。
「恋するグライアイ」 星川家三人姉妹、眼や歯に老いの来た初老の淑女三人が占い師に「若い男に恋をする」予言をもらう。
「死者からの音信」「海の雫」 次女江梨の昔の恋人、レイテ海沖で戦死した洋司に似たセールスマンのおとない。洋司の日記はほほえましいだけに涙を誘わないでもない、アクアマリン、海で泳ぎ泳ぎつくし死んだ恋人をおもう。ギリギリで幻想に留まる、現実へ向かないのは正しい。
「幻影の囚人」「ピノキオの鼻」「優しい嘘」 長女由良の息子がアントワープで星川家の長男、学者で戦時中に行方不明となった兄俊男に出会ったという、ベルギーへ出向く由良は隣り合わせた男、ピノキオめいた若い巻き毛の男に付き添われ冒険をする、こちらは次女とことなってラストのぶちこわし加減がよし。そして日本人と宝石の本質は相容れないという見解は大賛成!だからこそ日本パールは重要、と由良(そして作者)はいうがあたしはそれよりも彫金にこそ日本の精神があると思う。宝石の硬質さ、ドライさよりも練りこまれた金銀に刻まれる精緻さに親和する。
「青い贈り物」「絶滅鳥の宴」 三女志乃の不倫と夫との不和、戦後間もなくメリケン粉を水で溶いて塩入れて食べるエピソードが実に美しい。それだけに… ラスト三人+占い師で乾杯する、虚しさ。
6/11追記
「光のアダム」 中編
軽井沢の森に有る廃屋、その森でしか生きられない瀬良一族の謎
美術評論家 示村、画家の由井恭吉・美菜、聖杯伝説の瀬良一族・祖父数人・保留人の双生児と孫、笛人・不比等の双生児、セラフィータ/セラフィトゥス、テレパスの会話
三十年前、「幻夢童子之像」の絵と共に数人と保留人が消失する。由井があらためてセラフィータの美貌をうつりとり、それを再現する。
セラフィータを読んだのはもう十年ほど前になるので内容はあんまおぼえてない、が霧の谷をさまようこのよならぬ美貌の人物、天使、であるセラフィータはよく覚えて居るし憧れたものだ、なのでああ書かれてしまったと思いながら読んでいた。
示村の俗物ぶりが幻想的な話にあいまっている、じつに、彼の俗悪さが無ければ物語がどこまでも神秘の方へずり堕ちていってわからなくなるとこだった。これでいいと思う、残されるのは俗物と堕天使=女。
「光のアダム」がエリアーデからとは…『悪魔と両性具有』は以前目を通したのに全然頭に入ってないのがよくわかった。がっくり。
「他人の夢」よそびとのゆめ 中編
南瓜の緑の庭から、少女の夢へ。
太平洋戦争末期東京、杏子は巫女めいた予言をなし、許婚の杉原とその友人ふたりを守るために自分の夢の中に包み込んだのだという。その予言どおりに三人は特に前線にでることもなく市谷で日々をすごす、杏子は静かな狂人であり母のガス中毒死をとがめられたことにより発狂、少女の夢=庇護を失った三人は死ぬ。
叔母の電話が挿入されるのが効果を出していた、なにより戦争末期の東京の描写が良い。そう、これは現実なのか、戦争はどこにあるのか、自らがその火で焼かれるまでは信じない、信じられないという思いはよくわかる。青年達の戦争へのやる気のなさも。夢のなかで生きられるなら、それがたとい他人の夢でも・・・
「蒼白者の行進」 中編
渋谷を舞台に、バー「彩」が劇団「彩」結成へ。劇団のメンバーひとりびとりの挿話の後、ひとつめの戯曲はギリシア悲劇、アルテミスの兄への恋と、むちうたれる侍女。ふたつめはアルテミスが冥界へゆき父を殺そうとして、兄に殺される。
出演は九州の精神病院の姉と交信する藤川雅志、盲目のように睫の濃い泉翳とレズビアン、ヨウの兄妹、アンドロイドの薔人とその賛美者水口、黒髪の緑子、同じ顔、匂いも性も無いジョウとチャコ、二人と交わる魚崎、三人娘の矢。
戯曲+小説形式。それなりに面白く読めた、しかし作者の言うとおり中途半端。謎の人物でなかなか登場しない「彩」のあるじ朱麗さんがなぜ藤川をだまさなければならなかったのかとか・もう少し詳しく書いてほしかったなー。薔人と緑子のゆくすえも。薔人は男性の白痴美ってとこがいい。ヨウの、胎内回帰ならぬ父の中にこそ安らぎの場があり帰りたい、という意見は非常に面白く拝見。それに男性同士の性描写が秀逸なんだな。これ男性が書いてるかと思うとちょっとすごい。
ひとつひとつの描写はさすがだし、渋谷という土地を評して「ここでは何も起こりはしない」というのは気に入った。そう、あんな軽い地では何も起こりはしない。
文化面も…ディープパープルまでくると一応わかるもんね。いいとこ老年なはずなのにアングラ演劇までカバーしてる中井の感覚も凄いと思う、あたしなんて今ですら渋谷は書く気がしねえ。
「夜翔ぶ女」 すごい、こじゃれた小話。あたしこういうの好きだなー。タクシー運転手と謎めいた黒服の女、「夜間飛行」の香水、しかしてその実態は・・・!オチに夢を見せないとこも好み。
「卵の王子たちー世界一小さな密室」 少年少女の自殺あいつぐ社会で、対処療法として卵型の密室が流行していた。そこで起こる密室殺人…実父による最後の治療、ころしてください、おとうさん・恍惚の死。すごい、短いけど隠微で心に残った。
「安楽死志願」 突然の手紙、恋文かと思いきや猫を殺す話しとは・ちとわかりにくい、それもまたよし。
「三つの手紙」 美加と俊雄、矢島雅彦とその妻という二つのカップルを前提として、妻→美加→俊雄→雅彦の図でなおかつ遺産相続の陰謀。ここはもひとつ、雅彦の手紙がほしかった。「ああどうかぼくを憐れんでください、同時に憐れむのだけはやめてください」
「真珠姫」 一対ニ、が堕落の元。真珠姫が六人の求婚者のうち四人をはねつけ、最後のふたりを等しく愛する。「決闘なんて退屈なことをなさるなら、殿方同士で愛し合って、女などに見向きもしないって図を眺めていたほうが、まだまし」こういう台詞をつらっと書くのがすごいよな。古今東西、女にとってなにがもっとも人間らしい扱いか…それは「自分で稼ぐおかね」だというのも穿っている。
「名なしの森」 水口章は、13から15までの人間が集う「村」へ招待される。そこではみな異なる名前を名乗り、中世風の洋服を着、少女のアリス女王が支配する国であり、21世紀になったら理想のユートピアをつくる、そのために今はまだ名の無い集団であった。章はセザールという名でアリス女王の裁判に列席するが…
武装したアリスのイメージは素敵だけど、もうすこし長い物語にしてもよかったんじゃないかなあ。せっかくモチーフがよいのにもったいない・・・
「変身譜」 シャンソン評論家、黄島千晶の顧問として周囲にはべる有閑マダムの貞子は、往年黄島のレズビアン相手をつとめたという女の脅迫に、黄島の代わりに対処する。そのうちに、貞子のなかにも新たな思いが覚醒するが・・・
いや、この話もすごい。貞子の中の男性性を、「裡なる一人二役」と表わすところとか・なにより「出口を求めて」旅に出ようとした貞子が、街で若い男の子に声をかけられ、一緒にお茶をするラスト・・・自分が「男」に変身し、同性愛者として男の子を愛でるという構図に思わずうなった。そうなんだよね、トランスセクシュアル、レズビアンとして男性になった女がゲイの男の子を愛するという二重の倒錯はありうるよね!
「干からびた犯罪」 朔太郎の詩・帽子屋と3月兎と眠り鼠のお茶会に紛れたアリスの問答、「この3月、私たちは喧嘩をした」の解釈、実は喧嘩したのは帽子屋と「時間」ではないか、という高橋康也の解釈をしたじきにした短編。多佳子は四十年前の恋人の死の謎をとこうと田端に下りたが、そこでクラスメートに出会い、お茶会に誘われる。その場で霊媒が明かしたのは、多佳子が恋人を毒殺したという真相であり・・・
作者はアリス物語が大好きなんだな・・・。ご丁寧にチェシャ猫まで出てる。
「盲目の薔薇」 庭の薔薇がことごとくブラインド(盲芽)となった…薔薇の失語症に不安を覚える京子のもとに、園芸に詳しい青年がやってくる。彼と契った京子は、過去の一切を思い出し再び狂気に陥る。
こういう構成すきだ。裏切られた感というか・薔薇の小細工もしゃれてる、佳品。
「あるふぁべてぃく」 登場人物が全部アルファベット。料理家の夫人の遺産をめぐり、晩餐会。料理に毒を混ぜたと嘘をつく夫人。ちょっと黒闇天女ふう、ダークだけどこっちは死人は出てない。
「男色家の朝の歌」 他人に入り込める男。男色家の中に入り込む、壊れた自分を尼寺へ運ぶよりは男色家のなかで過ごすことを選ぼうか。「夕映少年」 病人と、麦星から来た男の子との語らい 「月光の箱」 「影を売る店」 歌手の影が売られているのを発見する。影いちまい十万、ものをうる人は影を売られている「影法師連盟」「古代旅行者」 いわゆる、SF。
「日蝕の子ら」 17歳の盾子と、その叔父の星川卓史の倫ならぬ恋と、兵隊にゆく直彦と医学生の情交と。ひめやかで隠微でよろしいわ。
「絶対確実におれのいない時代というのも、想像すると以外に寂しいものだな」
「必勝の信念というけれども、勝って一体どうするんだ、東条神社でも建てるつもりかというのが、そのころの学生一般に染み渡っていた風潮」←この文になんかしらんがひどく安堵した。
「黒塚」 「他人の夢」短編ヴァージョン。こっちのほうが鮮やかであたしは好みかも。杏子が妄想の世界を語るとこまでは同じだけど、部屋に隠した許婚の死体が現れるあたりが最高。
「星の不在」 心臓病とアステカのいけにえ。陶芸をやる主人公、「おれはなにかというと自分をダメなやつだと思おうとし(事実そうには違いないが)あげく自分の作品までを詰まらぬものに思い込もうとしている。こいつは危険な兆候だ。莫迦げた己惚れだけはもちたくも無いが、根底の自身まで突き崩して何が生れるだろう」←ぐさりとささった。
「幻談・千夜一夜」 芳雄と明夫、17・15の兄弟が、女がいる世界に絶望し自殺しようと考える。またいとこの姉妹、朱鷺子と紅鶴子(たづこ)がシャハラザードとドゥニヤザードよろしく物語を、あるいは行為を、そして手紙を通してあきらめさせようとするが、結局はことごとく失敗する。しかし兄弟は家出した先で、「大きい妹」・肥大した女性の優しさにふれ、阻まれる。
・父親が最初から二人の自殺を許容していたのは男の冒険を肯定したかったから
・「母親の過保護は時として問題にされますが、それは本当のところ戦後の日本全部を蔽っているので、そのためにこそ平和が保たれてきたならば、ぬるま湯にたえかねて飛び出すこともできはしない。それこそ地上の掟なのですから。」
・自殺の原因は戦後の状況そのもの・という指摘は興味深い。人を愛することを知らない子が自殺するのではない、ただただ人を愛したいという希求への理解が阻まれたとき自殺に走る、ということばも深い。そんでなにより千夜一夜を下敷きにした物語はあたしも何時の日か書いてみたいと思ってたのですごい悔しい。。一応小学生のときには東洋文庫を全巻読破してて、中学ではバートン版のよみくらべもしてたからね、うあああ悔しい!
8月初旬 作品集Ⅵ 鏡と影
あいするものはみなしんだ。あきびんに変化する青年、稲垣足穂ちっくなメルヘン。うつろのメタファー?
「藍いろの夜」
年下の男、峻に紬の着物をあつらえる三輪子。年下の男への「姉」的な執着は着物を仕立てたその日に消えうせ、山で鳥うちにでかけた男は足を滑らせ死ぬ。「おんな」となった三輪子はあたらしいとしうえの太一郎に、峻への着物を送るが、その呉服屋は太一郎のゆかりの家で…らすとこわい。
このひと鬱屈した女の情念を描かせると女並みにうまいなあ。的確でこわいくらい。こんだけ見透かされちまうと前に立つのも恐ろしい。自分の男に藍の香りをまとわせたいとか…うわーイイなあ、と思うだけに…すごい。
「人形たちの夜」
春夏秋冬・兄弟の相克・同じ一行で始まり同じ一行で終わる
「憎悪の美酒」 イエスに差し出されたすっぱい葡萄酒、弟に山ぶどうで作った葡萄酒の、わざとすっぱく作ったものをやる。数日後、弟は自殺する。姉の関心を得たいがためのパフォーマンス。
山葡萄酒、あたしが作ったときは腐ったけどうまく作れるものなのかしら…
「貴腐」 プリチュール・ノーブル
カインとアベルの最終話・絵とき。貴腐とはボトリアス・キネリアの発生である。憎悪が足りない、弟殺しも妻殺しも全てが嘘、妻の死を受け入れられず、それならいっそ自分が手にかけたと信じたい、という狂気。虚無の犯人が動機として述べているものに近いものがある、現実と虚構がいつのまにか逆転しているこの手法は、慣れていてもぎくりとする。うろ覚えだけど最高のワインを作ってしまったら、そのあとはワイン作りをやめるか死ぬかしかないじゃないか、という言葉にはくらっときた。
6月初旬追加
『幻想博物館』 精神病院 流薔園にて。
「聖父子」 母を殺した罪を告白する父、自分がその息子だと信じる少年の絵。
「大望ある乗客」 乗客ひとりびとりが殺人計画を胸に秘めたバスが転落。
「影の舞踏会」 ゲイとマダム。洋子はビリヤードに興じる男達の合図を宇宙人の交信と信じる、確かに男達はいつだって秘密の合図を送り続けている。
「黒闇天女」 こくあんてんにょ・と読む。最も気に入った話の一つ。大家の遺産、メイド、トリカブト、殺るか殺られるか、「この不義者をかたづけておしまい!」
「地下街」 手妻(手品)の降霊術。夫から毒を与えられ死んだと信じた妻。死者の愛。
「チッペンデールの寝台 もしくはロココふうな友情について」 女房を誘惑したことよりチッペンデールの寝台を使ったことを憎悪する。ハシリドコロ・ベラドンナで殺す。殺人者に感謝すら。
「セザーレの悪夢」 流薔園園長の語り、罪業妄想、精神病の話。ここでこれ以前の話全てが妄想だとあかされる。多次元宇宙からパラレルワールドへ、そして園長も狂気のものとする、語り手すら違う世界の住人。鮮やかなまとまりに、箱の中から小さな箱がどんどん出てくるような錯覚感。
「蘇るオルフェウス」 手紙を何通か出すだけで殺人をなしうる・藤井家の此の世ならぬ美貌、ガス自殺、兄妹相姦を暴きオルフェウスの復活を願うケンタウロスの手紙。
「公園にて」 アンファン・テリブルもの。語り手の老人の終始かわらぬテンション、意外な結末、殺伐としてるのにどこまでも穏やかな佳品。
「牧神の春」 プシュウドモナス・デモスリチカ 牧神とニンフの放し飼い
「邪眼」 分裂症の青年、二つ口のあるグロテスクな人形と化す 今はいつ?
『悪夢の骨牌』 藍沢家の女性二人をめぐる短編連作、二人の若者の失踪、時間旅行、「現在」に戻ってくる男を待ち続ける瑠璃と柚香の母娘。
「水仙の眠り」「アケロンの流れの涯てに」「暖かい墓」 失踪した男を追って夢魔の館へたどり着いた男からの手紙。いもしない犯人が求められる。
「大星触の夜」「ヨカナーンの夜」ビーナスは大地、海が男というのは大いにうなずくところ。少年を飛ばせる柚香、星の街の娼婦。男を箱詰めにする少女。
「緑の唇」「緑の訪問者」 瑠璃とその夫の物語。連作の中でも特に気に入った。戦後の話だからかな、清濁が混在すれう、時間が交わる、奇妙なズレがそのまま美となる。タイムマシンの呪文。
「廃屋を訪ねて」「戦後よ、眠れ」「闇の彼方へ」 時間旅行に連れ出された男達の結末、日常を贖った直人とパラレルワールドの直人。母娘の呟。時間の獄の崩壊を願う・
『人外境通信』
「笑う椅子」 椅子が招いた男女の悲劇を椅子が語る。二話めの海軍将校と不倫する人妻の話、描写のうつくしさに思わずときめいた…匂うようだった。
「鏡に棲む男」〈ピーマンを憎み続けし者 ここに眠る〉
「扉の彼方には」 扉は入ってくるためのものか出てゆくもののためか…こんなばかげたことを追求する人間があたし以外にいたとは驚き。しかしあなたこれは分裂病ですよこの妄想たっぷりな強迫観念、誰かに追訴される、周囲とどうかしなければならないという思いは。
「青猫の惑わし」 猫をえさに釣りこまれる女、男と母親の奇妙な・・・
「夜への誘い」 見知らぬ人物からの招待状、小動物展示の小動物とはほかならぬ自分。アナグラム あたしにはわかんなかった…
「美味追真」 よもぎの酢漬け エストラゴン・オウ・ヴィネーグル タイムマシン 自分の故郷に帰る 「己をくってくれ」
『真珠母のはこ』 はこ 出ない。甲という字が構えのなかにはいってるやつ。
「恋するグライアイ」 星川家三人姉妹、眼や歯に老いの来た初老の淑女三人が占い師に「若い男に恋をする」予言をもらう。
「死者からの音信」「海の雫」 次女江梨の昔の恋人、レイテ海沖で戦死した洋司に似たセールスマンのおとない。洋司の日記はほほえましいだけに涙を誘わないでもない、アクアマリン、海で泳ぎ泳ぎつくし死んだ恋人をおもう。ギリギリで幻想に留まる、現実へ向かないのは正しい。
「幻影の囚人」「ピノキオの鼻」「優しい嘘」 長女由良の息子がアントワープで星川家の長男、学者で戦時中に行方不明となった兄俊男に出会ったという、ベルギーへ出向く由良は隣り合わせた男、ピノキオめいた若い巻き毛の男に付き添われ冒険をする、こちらは次女とことなってラストのぶちこわし加減がよし。そして日本人と宝石の本質は相容れないという見解は大賛成!だからこそ日本パールは重要、と由良(そして作者)はいうがあたしはそれよりも彫金にこそ日本の精神があると思う。宝石の硬質さ、ドライさよりも練りこまれた金銀に刻まれる精緻さに親和する。
「青い贈り物」「絶滅鳥の宴」 三女志乃の不倫と夫との不和、戦後間もなくメリケン粉を水で溶いて塩入れて食べるエピソードが実に美しい。それだけに… ラスト三人+占い師で乾杯する、虚しさ。
6/11追記
「光のアダム」 中編
軽井沢の森に有る廃屋、その森でしか生きられない瀬良一族の謎
美術評論家 示村、画家の由井恭吉・美菜、聖杯伝説の瀬良一族・祖父数人・保留人の双生児と孫、笛人・不比等の双生児、セラフィータ/セラフィトゥス、テレパスの会話
三十年前、「幻夢童子之像」の絵と共に数人と保留人が消失する。由井があらためてセラフィータの美貌をうつりとり、それを再現する。
セラフィータを読んだのはもう十年ほど前になるので内容はあんまおぼえてない、が霧の谷をさまようこのよならぬ美貌の人物、天使、であるセラフィータはよく覚えて居るし憧れたものだ、なのでああ書かれてしまったと思いながら読んでいた。
示村の俗物ぶりが幻想的な話にあいまっている、じつに、彼の俗悪さが無ければ物語がどこまでも神秘の方へずり堕ちていってわからなくなるとこだった。これでいいと思う、残されるのは俗物と堕天使=女。
「光のアダム」がエリアーデからとは…『悪魔と両性具有』は以前目を通したのに全然頭に入ってないのがよくわかった。がっくり。
「他人の夢」よそびとのゆめ 中編
南瓜の緑の庭から、少女の夢へ。
太平洋戦争末期東京、杏子は巫女めいた予言をなし、許婚の杉原とその友人ふたりを守るために自分の夢の中に包み込んだのだという。その予言どおりに三人は特に前線にでることもなく市谷で日々をすごす、杏子は静かな狂人であり母のガス中毒死をとがめられたことにより発狂、少女の夢=庇護を失った三人は死ぬ。
叔母の電話が挿入されるのが効果を出していた、なにより戦争末期の東京の描写が良い。そう、これは現実なのか、戦争はどこにあるのか、自らがその火で焼かれるまでは信じない、信じられないという思いはよくわかる。青年達の戦争へのやる気のなさも。夢のなかで生きられるなら、それがたとい他人の夢でも・・・
「蒼白者の行進」 中編
渋谷を舞台に、バー「彩」が劇団「彩」結成へ。劇団のメンバーひとりびとりの挿話の後、ひとつめの戯曲はギリシア悲劇、アルテミスの兄への恋と、むちうたれる侍女。ふたつめはアルテミスが冥界へゆき父を殺そうとして、兄に殺される。
出演は九州の精神病院の姉と交信する藤川雅志、盲目のように睫の濃い泉翳とレズビアン、ヨウの兄妹、アンドロイドの薔人とその賛美者水口、黒髪の緑子、同じ顔、匂いも性も無いジョウとチャコ、二人と交わる魚崎、三人娘の矢。
戯曲+小説形式。それなりに面白く読めた、しかし作者の言うとおり中途半端。謎の人物でなかなか登場しない「彩」のあるじ朱麗さんがなぜ藤川をだまさなければならなかったのかとか・もう少し詳しく書いてほしかったなー。薔人と緑子のゆくすえも。薔人は男性の白痴美ってとこがいい。ヨウの、胎内回帰ならぬ父の中にこそ安らぎの場があり帰りたい、という意見は非常に面白く拝見。それに男性同士の性描写が秀逸なんだな。これ男性が書いてるかと思うとちょっとすごい。
ひとつひとつの描写はさすがだし、渋谷という土地を評して「ここでは何も起こりはしない」というのは気に入った。そう、あんな軽い地では何も起こりはしない。
文化面も…ディープパープルまでくると一応わかるもんね。いいとこ老年なはずなのにアングラ演劇までカバーしてる中井の感覚も凄いと思う、あたしなんて今ですら渋谷は書く気がしねえ。
「夜翔ぶ女」 すごい、こじゃれた小話。あたしこういうの好きだなー。タクシー運転手と謎めいた黒服の女、「夜間飛行」の香水、しかしてその実態は・・・!オチに夢を見せないとこも好み。
「卵の王子たちー世界一小さな密室」 少年少女の自殺あいつぐ社会で、対処療法として卵型の密室が流行していた。そこで起こる密室殺人…実父による最後の治療、ころしてください、おとうさん・恍惚の死。すごい、短いけど隠微で心に残った。
「安楽死志願」 突然の手紙、恋文かと思いきや猫を殺す話しとは・ちとわかりにくい、それもまたよし。
「三つの手紙」 美加と俊雄、矢島雅彦とその妻という二つのカップルを前提として、妻→美加→俊雄→雅彦の図でなおかつ遺産相続の陰謀。ここはもひとつ、雅彦の手紙がほしかった。「ああどうかぼくを憐れんでください、同時に憐れむのだけはやめてください」
「真珠姫」 一対ニ、が堕落の元。真珠姫が六人の求婚者のうち四人をはねつけ、最後のふたりを等しく愛する。「決闘なんて退屈なことをなさるなら、殿方同士で愛し合って、女などに見向きもしないって図を眺めていたほうが、まだまし」こういう台詞をつらっと書くのがすごいよな。古今東西、女にとってなにがもっとも人間らしい扱いか…それは「自分で稼ぐおかね」だというのも穿っている。
「名なしの森」 水口章は、13から15までの人間が集う「村」へ招待される。そこではみな異なる名前を名乗り、中世風の洋服を着、少女のアリス女王が支配する国であり、21世紀になったら理想のユートピアをつくる、そのために今はまだ名の無い集団であった。章はセザールという名でアリス女王の裁判に列席するが…
武装したアリスのイメージは素敵だけど、もうすこし長い物語にしてもよかったんじゃないかなあ。せっかくモチーフがよいのにもったいない・・・
「変身譜」 シャンソン評論家、黄島千晶の顧問として周囲にはべる有閑マダムの貞子は、往年黄島のレズビアン相手をつとめたという女の脅迫に、黄島の代わりに対処する。そのうちに、貞子のなかにも新たな思いが覚醒するが・・・
いや、この話もすごい。貞子の中の男性性を、「裡なる一人二役」と表わすところとか・なにより「出口を求めて」旅に出ようとした貞子が、街で若い男の子に声をかけられ、一緒にお茶をするラスト・・・自分が「男」に変身し、同性愛者として男の子を愛でるという構図に思わずうなった。そうなんだよね、トランスセクシュアル、レズビアンとして男性になった女がゲイの男の子を愛するという二重の倒錯はありうるよね!
「干からびた犯罪」 朔太郎の詩・帽子屋と3月兎と眠り鼠のお茶会に紛れたアリスの問答、「この3月、私たちは喧嘩をした」の解釈、実は喧嘩したのは帽子屋と「時間」ではないか、という高橋康也の解釈をしたじきにした短編。多佳子は四十年前の恋人の死の謎をとこうと田端に下りたが、そこでクラスメートに出会い、お茶会に誘われる。その場で霊媒が明かしたのは、多佳子が恋人を毒殺したという真相であり・・・
作者はアリス物語が大好きなんだな・・・。ご丁寧にチェシャ猫まで出てる。
「盲目の薔薇」 庭の薔薇がことごとくブラインド(盲芽)となった…薔薇の失語症に不安を覚える京子のもとに、園芸に詳しい青年がやってくる。彼と契った京子は、過去の一切を思い出し再び狂気に陥る。
こういう構成すきだ。裏切られた感というか・薔薇の小細工もしゃれてる、佳品。
「あるふぁべてぃく」 登場人物が全部アルファベット。料理家の夫人の遺産をめぐり、晩餐会。料理に毒を混ぜたと嘘をつく夫人。ちょっと黒闇天女ふう、ダークだけどこっちは死人は出てない。
「男色家の朝の歌」 他人に入り込める男。男色家の中に入り込む、壊れた自分を尼寺へ運ぶよりは男色家のなかで過ごすことを選ぼうか。「夕映少年」 病人と、麦星から来た男の子との語らい 「月光の箱」 「影を売る店」 歌手の影が売られているのを発見する。影いちまい十万、ものをうる人は影を売られている「影法師連盟」「古代旅行者」 いわゆる、SF。
「日蝕の子ら」 17歳の盾子と、その叔父の星川卓史の倫ならぬ恋と、兵隊にゆく直彦と医学生の情交と。ひめやかで隠微でよろしいわ。
「絶対確実におれのいない時代というのも、想像すると以外に寂しいものだな」
「必勝の信念というけれども、勝って一体どうするんだ、東条神社でも建てるつもりかというのが、そのころの学生一般に染み渡っていた風潮」←この文になんかしらんがひどく安堵した。
「黒塚」 「他人の夢」短編ヴァージョン。こっちのほうが鮮やかであたしは好みかも。杏子が妄想の世界を語るとこまでは同じだけど、部屋に隠した許婚の死体が現れるあたりが最高。
「星の不在」 心臓病とアステカのいけにえ。陶芸をやる主人公、「おれはなにかというと自分をダメなやつだと思おうとし(事実そうには違いないが)あげく自分の作品までを詰まらぬものに思い込もうとしている。こいつは危険な兆候だ。莫迦げた己惚れだけはもちたくも無いが、根底の自身まで突き崩して何が生れるだろう」←ぐさりとささった。
「幻談・千夜一夜」 芳雄と明夫、17・15の兄弟が、女がいる世界に絶望し自殺しようと考える。またいとこの姉妹、朱鷺子と紅鶴子(たづこ)がシャハラザードとドゥニヤザードよろしく物語を、あるいは行為を、そして手紙を通してあきらめさせようとするが、結局はことごとく失敗する。しかし兄弟は家出した先で、「大きい妹」・肥大した女性の優しさにふれ、阻まれる。
・父親が最初から二人の自殺を許容していたのは男の冒険を肯定したかったから
・「母親の過保護は時として問題にされますが、それは本当のところ戦後の日本全部を蔽っているので、そのためにこそ平和が保たれてきたならば、ぬるま湯にたえかねて飛び出すこともできはしない。それこそ地上の掟なのですから。」
・自殺の原因は戦後の状況そのもの・という指摘は興味深い。人を愛することを知らない子が自殺するのではない、ただただ人を愛したいという希求への理解が阻まれたとき自殺に走る、ということばも深い。そんでなにより千夜一夜を下敷きにした物語はあたしも何時の日か書いてみたいと思ってたのですごい悔しい。。一応小学生のときには東洋文庫を全巻読破してて、中学ではバートン版のよみくらべもしてたからね、うあああ悔しい!
8月初旬 作品集Ⅵ 鏡と影
・「日本人の貌-非国民の思想-」
・暗い宴・わが体験
「戦時中を間違えて生きた日本人が戦後を間違えず生きることができるのか」
・「文字、色、音」
「人定」深夜、人が寝静まる意。好きな言葉。
・「金魚とありと人間と-人肉喰いの思想」
「一度も食べたことがないくせにはっきりその味を知っているものに蟻と金魚がいる」
私はスキー板だ、と思いながら読んでいた。
「食べてもすぐに復活すればよい」という考えは食欲とセックスの混同、と説く。
・「暗号異聞」社会思想社「秘文字」、暗号小説をさらに暗号化して刊行。淡坂妻夫、日影丈吉、中井の三作から、中井自身の徴兵体験まで。暗号を送る部署に居た話など興味深い。
それにしても贅沢な本だ…欲しいなー・
・「男が化粧するとき」
→竹の子族の話・男の子が化粧する、と聞いて原宿へ出かけたが見苦しいのばかり。
浅草の三社祭りで化粧下男は、ひとはけの紅おしろいが似合った。化粧が美しいのは高潮した表情にあり、戦いと死をふまえればこそである、というお説。
・暗い宴・わが体験
「戦時中を間違えて生きた日本人が戦後を間違えず生きることができるのか」
・「文字、色、音」
「人定」深夜、人が寝静まる意。好きな言葉。
・「金魚とありと人間と-人肉喰いの思想」
「一度も食べたことがないくせにはっきりその味を知っているものに蟻と金魚がいる」
私はスキー板だ、と思いながら読んでいた。
「食べてもすぐに復活すればよい」という考えは食欲とセックスの混同、と説く。
・「暗号異聞」社会思想社「秘文字」、暗号小説をさらに暗号化して刊行。淡坂妻夫、日影丈吉、中井の三作から、中井自身の徴兵体験まで。暗号を送る部署に居た話など興味深い。
それにしても贅沢な本だ…欲しいなー・
・「男が化粧するとき」
→竹の子族の話・男の子が化粧する、と聞いて原宿へ出かけたが見苦しいのばかり。
浅草の三社祭りで化粧下男は、ひとはけの紅おしろいが似合った。化粧が美しいのは高潮した表情にあり、戦いと死をふまえればこそである、というお説。
・「新青年の変遷」竹.中英.太郎に言及!
・作家評論
内田百間「枇杷熟るる頃」 「果物のように」自ら求めたいとは思わない
バルザック嫌いなのに安心した。私も好きでない。
ほか、恐山、「空しい音・愛読者を探す試み」では(彼ら)を発見。カクテルにも造詣が深いことなど。相変わらず多彩な文章に幻惑される。寺山修司を見出したのが中井だったと改めて知る。『われに五月を』は全く偶然古本屋で手に入れたことがあったし、竹中.英太.郎記念館はこの前行ったばかりなので符丁に驚きもし、嬉しくもあり。選ばれている作家や画家も木々高太郎や横溝、久生、夢二、ボッス等私の好みにどんぴしゃりでますます好ましくなった。
・作家評論
内田百間「枇杷熟るる頃」 「果物のように」自ら求めたいとは思わない
バルザック嫌いなのに安心した。私も好きでない。
ほか、恐山、「空しい音・愛読者を探す試み」では(彼ら)を発見。カクテルにも造詣が深いことなど。相変わらず多彩な文章に幻惑される。寺山修司を見出したのが中井だったと改めて知る。『われに五月を』は全く偶然古本屋で手に入れたことがあったし、竹中.英太.郎記念館はこの前行ったばかりなので符丁に驚きもし、嬉しくもあり。選ばれている作家や画家も木々高太郎や横溝、久生、夢二、ボッス等私の好みにどんぴしゃりでますます好ましくなった。
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