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ゆめ か うつつ か
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「ねえ、わたし、最後の飛び猫が見たい」。と恋人が言い、わたしたちは電車に揺られ郊外の稀少種動物園にやってきた。

飛び猫は名前のごとく、空を飛ぶ猫だ。鶏肉に似て美味なのに猫に似て人懐こい性質が仇となり、乱獲が相次いで現在はわずか三羽となってしまった。いずれも雄で、遠からず絶滅が見込まれているという。

飛び猫の檻は、園の中央に位置していた。円く大きめの檻の一角が細かい金網に覆われ、そのなかで思い思いに飛び猫が寝そべっている。

その姿を見てわたしは失望を禁じ得なかった、彼らは長い牢獄暮らしでぶくぶく肥え太り、背中についている羽はあまりにも小さくまるで滑稽な飾りもののようだった。

「なんだかずいぶんみっともないのね」。恋人もがっかりしたように呟き、わたしたちは言葉少なにその奇妙な動物を眺めていた。


それから間もなくして、彼らの早すぎる、思いがけない絶滅の報せを聞いた。

飛べなくなった彼らは、それでも鋭い爪で金網をやぶり、隣の檻へと抜け出したのだという。

だが運の悪いことに、逃げ出した先の檻にはかの獰猛な獅子鼠が居た。鼠たちは、哀れな飛び猫の背中に群れをなして襲いかかり、彼らの羽根は跡形もなくかじられてしまったのだ。

かくして三匹の猫が残った。その後の消息は定かではないが、案外幸せに生を全うしたのではないかと推測する。








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