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ゆめ か うつつ か
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〈性愛系出版物〉 造語だけど、この際語感重視で。
そういうわけでつれづれに……つれづれの話題らしく・我が性愛の歴史(書物限定)をば。



わたしが文字を読めるようになったのは三歳くらいの頃で、幼稚園にあがる前に通っていた日曜学校で、幼すぎてお祈りを免除された幼児が遊ぶ部屋に置いてあったアンデルセンの全集をむさぼるように読んでいた覚えがある。
そうして活字に親しむようになってから五年ほども経つと、世の中にある本はどうやら二種類に大別できそうだ、ということが分かった。

すなわち大人が「読みなさい」って薦める本と、そうでない本の二種類。

わたしは勿論素直なよいこだったので、薦められた本を中心に読んでいたのは言うまでも無い。
そうして薦められなかった本はたま~にしか手に取らなかった。今よりもっと本を読んでいた頃で、何しろ出会う物語の殆んど全てが新しいものだったから…。

で わたしが初めて接したいかがわしい本は西鶴の『好色一代女』だった。岩波文庫黄色、亡くなったばかりの祖父の本が大量にうちにまわってきたときのもので、当時わたしは小学校三年生だった。まさか親も小学生が書き下しの古文に手を出そうとは思ってなかったみたい、それに天下の岩波文庫がそんな艶っぽい本を出してるとも思わなかったみたい。
実際わたしにとっては旧仮名遣いを我慢すればそれほど読みにくくは無かった、親切な注記がついてたし、実際日本語だって学んでいる途中だったんだから ちょっと新しい語彙が増えるくらいのもので。
わかんなかったのは、ツビとかアワビとかそういう隠語のニュアンス。隠語が隠語であるゆえんがそもそも、わからない。それでもなんとなくイカガワシイ雰囲気は理解できたので、仄かに興奮を覚えたりもしていた(人間の性衝動は頭脳の働きが大きいってのがこれでよくわかる)。
一代女でこれだけ描写が露骨なんだから『好色五人女』はさぞかし、と期待して読んだらこっちは純粋な悲恋物で、拍子抜けしたのを覚えている。
まあそんなかんじに『好色一代男』とかも読んでね、これで陰間とか男色とかそのあたりの知識を入手して、ついでに「現代と江戸の性風俗差異」みたいなことまで知った。

そういうわけで「古典はエロくてノーマーク・ノーチェックだ」、と知ったのでいろいろと手を伸ばしていった。

『アラビアンナイト』は小学四年生の夏休みをかけて全巻読んだけどこれがまたのっけから性描写の嵐。しかもプレイのバリエーションも多彩で、へえー大人ってこういうことをやってるんだなあ、すげえなあ、と感心しながら読んだ(間違ってる)。

小学校高学年~中学くらいの頃はダン・オニロクの人妻ものとかカワカミ・ソウクンとかちらっと見る機会もあったけどこっちはさすがに未成年にはガード固くて、しかも情景描写のこれでもかというような露骨さがどうも苦手で、あっさり古典に戻った。今もってあたしはエロスは好きだけどエロは苦手。

で、澁澤龍彦なんかを読み始めてからサド文学、『ソドム百二十日』『ジュスチーヌ』に『O嬢~』、マゾッホの『毛皮を着たヴィーナス』にマゾッホの妻の告白録、バタイユの『マダム・エトワルダ』、も少し経ってからマンディアルグ『城の中のイギリス人』、アポリネール『一万一千の鞭』、ジャン・ジュネの一連の男色小説、それと稲垣タルホの『A感覚とV感覚』はじめとする美少年賛美ね。

中学時代は中国古典にハマってたから『金瓶梅』なんかは真っ先にチェックした、でもこれはエロスというよりはポルノだなー。『紅楼夢』も直接描写がそこそこあったりする。

サドはひととおり通読したけど、そこまで夢中になれなかった。これでもかという性行為や拷問の反復は、ほとんど哲学的ですらある。だったらマンディアルグの方がまだしも読みやすい。アポリネールのやつは何気に日本も舞台になってるので親しみわくかも、まあおフランス人が勝手に考えた『なんちゃって日本』だけど。未完だけどビアズレーの『美神の館』は挿絵込みで綺麗だったな。アレティーノの『ラジオナメンティ』は、エロスはともかくとして笑えるのでオススメ。アレティーノ自身、スキャンダルを種に強請りをやって稼いだ金で豪邸に住んで笑い死にしたとゆうとてもいいキャラだしね。

一番読んでないのは現代官能小説なんだけどこれはもう読む気がしない、だって原型って言うか…どんなに斬新で奇抜なものでも、雛形はこれらの古典の中にあるんだもん。だったら吉屋信子の少女小説とか江戸川乱歩とか読んでるほうがまだしも愉しめる気がする。

しかしまあこれだけ述べておいてなんだけど、性行為ってのは本来 書いたり読んだりするもんではなく やるもんだと思ってる(「行為」っていうくらいだし)ので、自分で書いてみようとはさらさら思わない。行為以外の部分には興味あるけどね。

 

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