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ゆめ か うつつ か
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家の近くの電柱のかげでたまごを見つける。ひびが入っていて、今にも何かが生まれそうだ。わたしはしゃがみこんでたまごをじっと見つめる。卵の中からやがて白くてふわふわした毛の、耳が異様に長い、金色の目のうさぎがでてくる。そうか、ウサギは卵から生まれるのだっけ、とわたしは思い、満足してそこから去ろうとするが、うさぎはひょこひょことわたしのあとをついてきて離れない。かわいいが、困ったなあと思う。





落とし戸を開け、はしごを下ると、広い廊下に出た。

いつになったらこの屋敷から出られるのだろう、と思いながらわたしはけして不安ではなかった。その屋敷はとても奇妙なつくりになっていて、いくつもの部屋があるいは折り重なり、あるいはいつのまにか他の部屋と交差しては、わたしを違う回廊へと導くのであった。まるで壁や扉が絶えず変形し続けているような、そんな奇形の部屋には、無数の鳥が集められていた。

鳥たちは籠におさめられることもなく、思い思いにあるいは止まり、あるいは他の鳥と戯れていた。突然の闖入者たるわたしにも驚くことなくそのつぶらな瞳を向けてくるので、わたしは思わず手を伸ばしてそのやわらかな喉を撫でてみたりした。

珍しい鳥、変わった鳥も多かった。淡い紫色の羽にドライヤーで逆立てたようなふわふわの長くカーヴした羽を
持つ鸚哥、虹色のグラデーションに、全身花びらのような細かく小さい羽、黒く丸いビーズのような瞳の小鳥は、ウフ鳥というらしい。手のひらにのせると甘い声でさえずった。

部屋の高いところには黄色い大型の鳥たちの巣がつらなり、つやつやした卵がちらりとのぞく。突然、甲高い声が聞こえた、

「わたくしレース編みをいたしますの、」

人がいる! 

わたしは声の方向へ向かおうと階段を駆け下りた。交差された止まり木の上で、黒い鸚鵡がわたしをじろりと見て小ばかにしたように「わたくしレース編みをいたしますの」と言った、その向こう、崩れかけた部屋で、三人の老女がお茶をしていた。不安定な足場で、震えるゆびで、老女たちは上をさした。

「「「ここから出たければ、下へ向かうのではダメ。上に向かいなさい」」」

あ、とわたしは思った、そうか、一階にたどりつけば外へ出られると思っていたけれど、ここでは反対、屋上に出なければならないのか・・・・・・・・

そうして上を振り仰ぐと、今まで通り抜けてきた部屋が、光に透けてゆらゆらゆらめいているのが見えた。





 

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