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ゆめ か うつつ か
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お隣におかしな人たちが集団で越してきて、一週間経った。

新しいお隣さんは少なくとも二十人程は居ただろうか、大半はぼくのパパくらいの年頃のおじさんで、それに何人か女のひとも居た。お隣はそんなに広い家ではなかったし、奇妙なことに彼らには誰も決まった勤めが無いようで、いつも交代で庭をぶらぶらしているか屋根で日光浴しているか、その誰もがギラギラと異様な熱心さでうちを覗いてくるので、薄気味悪いことこの上なかった。いつもおっとりと物静かなお姉ちゃんも、「何だか気持ちのわるい人たちね」などと肩をすくめたほどだ。





庭越しにうろうろしているお隣さんの、できるだけ優しそうなおばさんを選んで話しかけてみた。「お隣さんこんにちは!何をしているの?」その人は雷に打たれたようにびくりとして、それからひきつったような声で言った。「わたしたち、お掃除をしに来ているの」「掃除?どこの?」女のひとは振り返りもせず走り去った。ママにこのことを言うと、かおいろを変えて怒っていた。ぼくはいけないことをしたようだった。





『ぼくたちはお隣に監視されている』、と気づくまで、それから3日もかからなかった。ただでさえ病弱で家にこもりがちなお姉ちゃんはお隣の無言の暴力に怯えて一歩も外に出なくなってしまった。パパとママは不機嫌そうにいらいらしているばかりだ。ぼくはどうしていいかわからない。





今日ついにパパがお姉ちゃんをバスルームに閉じ込めた。ママは「もう耐えられない」とお隣に乗り込んでいき、それから帰って来ない。みんなお隣さんのせいだ、とぼくは思う。あいつら、悪魔に喰われっちまえばいいのに。





その夜はパパが一緒に寝てくれた。ぼくは不安でなかなか寝付けず、とろとろと浅い眠りを繰り返した。この世のものとも思えない悲鳴が闇をつんざいたのはそのときだ。ぼくは恐ろしさのあまりぎゅっと目を瞑っていたが、ものすごい力で布団をはがされ、頭から水をかぶせられたので、眠ったふりもできずにおそるおそるめをあけた。そこにはやたら厳かに着飾ったお隣さんたちがいた。「おい、このこは人間だぞ」とぼくに水をかけたとおぼしきおじさんが水差しを片手に言った。「かわいそうに、ずっと悪魔に囚われていたんだね」。

ぼくの隣には枯れ枝のように奇妙にまがりくねった猿のような動物の死体が、バスルームには針金のような毛がもじゃもじゃに生えた真っ黒な怪物が転がっていた。それはどうやらぼくのパパとお姉ちゃんらしかった。

お隣さんはぼくのことを救ってやったと思っているらしく、ぼくから感謝の言葉すら引き出そうとしたが、ぼくはただ悲しかった、どうしてパパとお姉ちゃん(そしてママも)を殺したんだ、何もわるいことをしていないのに。ぼくらは楽しくやっていたのに、どうしてこんなことになったんだ。そう思って、ただ、泣き続けた。





・・・・・・・・悲しい夢だった。



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