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ゆめ か うつつ か
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大判のせんべいに、自分でシロップで絵や文字を描いて、そこに五色の砂糖を振りかけてくれるというもの。

 出来上がり。せんべいが薄っぺらい麩のような味わいで、そこに砂糖の甘みがほんのり乗って、けして美味ではないけれどなつかしい味。

九つくらいのとき、車で父と弟とどこかへ向かう途中お祭りに行きあい、小銭を渡され三十分ばかり放逐された。もしかして母もいたかもしれないが、母が居たらそのくらいのとしごろのこどもを知らない場所でひとりで歩かせることはしないだろうから、多分親父だけだったはずだ。

そこで、初めて「おえかきせんべい」を食べた。

・・・・それだけのことなのだが、何が印象に残っているかって、そのときわたしが覚えたてのローマ字で名前を書いた、そのつづりが思いっきり間違っていたのだった。お店のおにいさんは変な顔をしていたが、わたしはローマ字が書けるんだぜえっへん、くらいの気持ちで父と再会し、間違いを指摘され、いたく恥ずかしく思った、ゆえに覚えている。バカだった。

この出店はあんずあめややきそばやカキ氷などとは違ってちょっと珍しく、普段のお祭りでもなかなか見かけることがない。今回も通りすがりに夏祭りを冷やかしていたら偶然見つけたのだが、別に熱いものや冷たいものを扱うわけでなし、絵を描くのだってセルフサービスで、ただせんべいと砂糖とシロップを並べておけばよいのだから、屋台の商いのなかではラクなほうだろう。もっと見かけてもよさそうなものだが、そうそう見ないというのはつまり、あまり流行らないのだろう。わたしとしては、色つき砂糖の身体に悪そうなキッチュさがなんともいえず好きなんだけどなあ。













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