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ゆめ か うつつ か
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私は林檎の樹を抱きしめていた。


それはまだ苗木ほどの大きさで、細くしなやかな若樹はよい匂いがしている。
この樹をどこかに植えてやりたいのだが、見渡す限り固いアスファルトに覆われていて地面など見えない。私は途方に暮れてそこら中を歩きまわった。妊った蜂が、よろよろと灰色の路を這っていく。
不意に抱きしめていた林檎の樹がずしりと重くなると、ほっそりとした脚と緑の翼を持つ巨きな鳥になっていた。鳥はものいいたげに私を見つめ、それから鋭いくちばしで私の眼を片方抉ると、それをくわえたまま空に飛び立った。

片眼で鳥を見送りながら片眼で私自身を見送る私、ぽっかりと空いた眼窩からとめどない血が流れている私は、私の血の中にゆっくりと沈みこむ。

路の向こう、しらじらと明るい空に ああ、朝が来ているな と 私は思う。


目覚めるのだ。


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