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ゆめ か うつつ か
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砂のように変幻自在な街で、図書館を見つけた。それはまるで蜂の巣のような六角形をしていて、蜜を運ぶ蜂のように、ひとびとが入っては出て、出ては入ってゆく。せわしげに列を成す人に交じったのは、好奇心からでもあったし、街から抜け出す正しい道を見つけられずいいかげん苛々していたからでもある。しかし入ってみると、中はだだっぴろい空間に過ぎず、その中央に異国の黒い少年が単座しているのであった。見渡しても、本らしきものは一冊も無い。少年がくちを開いた。「何の本をお探しですか?」「いったいどこに本があるんだ?」尋ねると、少年は笑って自分の頭をゆびさした。「すべてここに」。「じゃあ、頼むよ」風変わりな司書に、わたしは言った。「この街の地図が見たいんだ」。「そんなものがあったら」少年は笑った、「とっくにぼくが逃げ出していますよ」。

暑い日だった。図書館を出ると、街はまた姿を変え、モザイクのような迷路を成していた。もと来た道すら定かではなく、わたしは立ちすくむ。とにかくも進まなければならない、と、小道に逸れると、巨大な氷削機械が看板代わりのカキ氷屋兼小料理屋があった。美味しいスープとマントウを頼むとわたしは壁際に座り、いつもやるようにナイフで土の壁を引っかこうとして、既にわたしが以前つけた印を見つける。そういえばこんな店に来たことがあった。わたしはうんざりとナイフを投げ捨てる。

 

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