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ゆめ か うつつ か
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弟が蟹鍋をつつきながらしみじみ一言、

「カニは美味いなぁ!美味いけど、食べにくいのが玉に傷だよね。ボタン押したら中身だけ出るように品種改良すればいいのに」。
そこでたまたま里帰りしていた姉が冷静に、
「いや、今でも相当食べやすい方だと思うよ。贅沢言っちゃダメだよ」
と言うと

弟「バカ、そんなこと言ったらエビの食べやすさは奇跡だぜ!カニもエビを見習うべき!」

……確かに!





ところでこの蟹は私がmからもらったものなのだが、アレルギーの私は一口で口内が痺れたため断念。野菜としらたきだけを噛み締めていたのであった。

くそ!!


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mとの酒盛りのために紀伊国屋で佳い酒を探していたら、見つけた。

ミードという単語には聞き覚えがあって、まだわたしが飲酒を覚える前…というと12より下の頃だが、北欧神話やケルト神話で何度か見かけたのだった。

その当時わたしは神話伝説にやたら興味があり、子供向けのシリーズに飽きたらずブルフィンチやシュリーマンに手を出していたくらいの〈神話オタク〉だった。食い意地の張っていたわたしは、蜂蜜酒かあ、旨そうだなあ一度賞味してみたいもんだなあと思いつつ・そのうちに忘れてしまっていたのだけれど。まさか往年のユメが紀伊国屋にあろうとは。
懐かしさについ購入。甘くて飲みやすい。わりと蜜の香りや味が濃厚で、ロックで頂くのがオススメかな。

新婚さんが飲む=ハネムーンの語源、てのは有名だよね。多産・豊穣の印としてメロヴィング朝の王家の墓から蜜蜂のブローチが発掘されてたなあ。ルーブルのどっかに飾ってあった。そういや、中世ドイツでは蜂は牛から生まれると思われていたんだっけ。

…などととりとめなく思い付いた雑学などを。

とにかくミードをクリアしたので、あとは「ネクタル」を飲めれば完璧。ツクヨミがオホゲツヒメに呑まされた酒はイヤだ。一歩間違えるとスカトロになってしまう。





もちろん私自身の成人式などとうの昔に終わっているのだが、mが成人式のために和服を着るというので、せっかくだからとコートの下にチャイナ&スリットスカートを着込み、フェイクファーでポーズを決めて一緒にプリクラなぞ撮って来てしまった。最近のプリクラは高性能で大概実物よりよろしげに写るのが救いだ……。

この時期は低気圧の襲来やら何やらで荒天になるものだが 今年は上天気でよかった。


しかしまあ、近年の新成人はカラフルでいいなあ。頭頂から毛先にかけてブルー~アッシュグレイの色調に染めた逆毛男が粋に紋付け袴などを着こなしているのなどを見ると、楽しそうで何よりではある。

T先輩から電話が来た。

「久しぶり!元気?今高円寺で飲んでるんだけど、来れる?」
「ムリです!」

……あいかわらずのいきなり具合。素敵だ。学生時代は週2以上一緒に飲んでたし、大好きな人なのだが、しかし今は地方にお住まいなので長らくお会いしていなかった。なので新年のご挨拶やら無沙汰の侘びやら していたら

「そうそう、今度Kが末期ガンで死ぬんだよ」
 
と コップが割れた くらいのライトさで言われて

「あら、そうなんですか」

と、こちらも軽く返してしまった。その後我に返ってしどろもどろに経過や病院のことも訊いたけれど、もう言葉も喋れず お見舞いもできないくらいの状態だという。

Kさんはわたしが20歳のとき、T先輩の弟分として紹介されたひとで、わたしは最初そのデリケートな声と喋り方に、彼のことをゲイかと思ったほどだ(真相はぼかされたのでいまだナゾのままだが・ちゃんとカノジョも居たところを見ると女の子にも興味はあったらしい)。好きな作家の話で『ロリータ』とナボコフの話題で盛り上がり、生意気な本をかじっていたので「ちょっとねえ、きみ、ほんとに20歳?証拠になるもの見せなさいよ」と言われたのをよく覚えている。
次に会ったときはトランスセクシャルとゲイの話をした、やっぱり恐ろしいくらい真剣に「そういうのどう思う?」て言われたのを覚えている。どう思うも何も、否定したら弾劾されかねない口調だった。そんな気迫だったので「個人の自由だと思いますが」とだけ答えた。
T先輩の誕生日に特上の葉巻をプレゼントして、わたしもひと吸いお相伴に預かった。
名刺入れがとても素敵で、訊ねると「これ?ふふん、アンティークショップでね」と嬉しそうに答えていた。全体的にとてもオシャレでセンスがよかった、もっと話したかったし会いたかった、会えると思っていた。

電話終わってから、涙があふれてしょうがなかった。
気付いたらmが貰い泣きしてて、びっくりして涙止まった。



生きなきゃな。


 

父に続いて母まで風邪を引き、日々お粥の食卓が続いたので、今日は帰宅してから簡単に炊事してみた。

カブと油揚の味噌汁、蓮根のきんぴら、ねぎとソーセージの炒めもので調理時間しめて20分。

料理も時々やらないとカンが鈍る。。





大学時代の恩師から賀状の返事が来ていた。わたしは賀状に冗談めかして「牛歩で生きる」と書いたのだが、先生は「牛歩―いいですねぇ」と返してくれた。先生の口調を思い出しながら何となく心が暖かくなった。

遅々として進まず。なにくわぬ顔でのそりとそこに存在していたい。



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