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ゆめ か うつつ か
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何でも自宅から五分ばかりのところに見世物小屋ができたという。
どれ行ってみるか、と寝巻きのままひやかしに歩いて行った、行列ばかりが長く尾を引く様子に帰ろうと踵を返すと偶然知人のMに出会った、Mはここで働いており顔が利くので特別に入れてやろおうと言う。そんなわけで入ってみたが中は荒れ放題で何の仕掛けも面白味も無い、これはひどいと呆れていると、歩く傍から瞬く間に周囲が構築されていった。次々と現れる扉を片端から開け放ち中を確かめる、書斎風の部屋は統一性の無い本で埋め尽くされていたしその次の部屋の中は見渡す限り森だった、酷い顔色の白雪姫が七つの棺に囲まれて喪服で歌を歌っている。若い王子と王女が婚礼衣装で手を振る横でピエロが跳ね回っている向こうに竹林が広がり、中国服の老人が顎鬚をしごきながら書をひもといていた。緑色の川がにわかに泡立ち中から一条の龍が天に昇る。その光りの跡をいつまでも見つめていた、気がつくと私は人いきれのたちこめる小屋の中にたたずんでいるのだった。




他に犯罪者の三人が別々の逃走路で山を下り追っ手をかわす捕り物、昭和初期の地方豪農の家督をめぐる騒動と殺人事件、五人が異空間に閉じ込められ脱出を図るキューブばりのサイコサスペンス系夢をそれぞれ一本ずつ。うう お 面白い…!




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まるで陰鬱な空気が私を取り巻いていた。

じめじめと暗くしめったベンチ、木々に埋もれた庭でわたしは本のページを繰っていた。この奥はあまりにも有名な社だったが、しかしそこに神が居ないことをわたしは知っていた。ここに神は居ない。神の代わりに、戦争で死んだ人間の魂が集められているのだ。人間の魂・・・それはあまりになまなましく、崇高さや清浄さよりはもっと別の類の感情を催させる。いったいに、人の魂をかき集めて何を練成しようというのだろう。この装置は一体何なのだろう。人の魂の純な部分はすぐに揮発してしまい、濁って汚れた部分だけがこの地上に残る。その汚れた部分の、ここは、いわばゴミ処理場に近いのではないだろうか。

考えながら読んでいるせいで本がちっとも進まない。それはNという不世出の作家のミステリーで、私は以前何度かそれに目を通したことがあるはずだった。しかし登場人物は見覚えがあるものの筋にはまったく覚えが無い…どうやら続編のようだ。続編が出ていたのか、と私は少し驚いた。それで少しは集中しようという気分になった。獅子の噴水、冬の庭、図書館に吊られる死体、月夜に笑うネレイデスの声の謎・・・

夢中になりかけたその時、ふわりと体が浮き上がる感覚がした。思わず取り落とした本がみるみる小さくなっていく。

見えない糸で吊りあげられながら、この細工仕立ての東京は昔私が夏休みの宿題で作りあげた玩具なのだということを思い出した。






夢の中で見た本の内容を覚えているうちに再現したいのだが肝心のトリック部分を忘れてしまった。ルルーの『黄色い部屋』系の密室トリックだったんだけど・・・

①喫茶店では隣席の高校生カップルが臆面も無く痴話喧嘩していた、女のほうが多情で男はやきもきしている風情だった、女は色が白く北海道訛りでたしかになかなか可愛い顔立ちをしている。聞くとも無く聞いてしまった会話では男が女に「いつになったらキスさせてくれるのか」などと情けないことを言っており私は苦笑した、その笑いを感じ取り、同じテーブルに就いていた別の女子高生が私ににこりと同意の笑顔を送ってきた。制服を見ると先ほどのカップルと同じ高校らしい。彼女はここで試験勉強でもしているのか、机の上には教科書とノートを広げている。私は彼女と話してみたくなったがその勇気は無く、ただ黙ってタバコをふかしていた。

②そもそも何故私はここにいるのだろう?誰かとここで約束をしているような気もするが…

そこまで考えたとき、見知らぬ男が私の前にぬっと表れた。男は棒切れのように細いジェラルミンの杖を持ち、体が不自由で足をひきずっていた。その顔には真一文字の傷跡があり、奇妙にひきつれた表情には憎しみの色が浮んでいる。「とうとう見つけたぞ」、とその男は言った。「オレをこんな姿にしやがって。お前のせいでオレの一生はめちゃくちゃだ、どうしてくれるんだ。」私は思っても見ないことを言われてあっけに取られた。そのような男に見覚えは無かった。「失礼ですけど、どなたさまでしょうか」、と尋ねると男は益々たけり狂い、その杖をふるいあろうことか私を打ち据え始めた。私は悲鳴を上げ、周囲の人々は仰天して彼を押し留めた、その間に私はそこを逃げ出した。彼は悲痛な声で「このままでは済まさないぞ、追い詰めてやる、絶対に復讐してやる」、と叫び続けていた。

③町に出て混乱した頭の中を整理し、さっきの男のことを考えてみたがやはり私とは一面識も無いように感じられた、大体あんな大男を、どうやったら私が傷つけられるというのだ。頭の中ではそう整理をつけたが、心ではじわじわと恐怖感がこみ上げてきていた、そう、どこかでこんな日が来るような気がしていた、どこかで私は、いつか自分が殺した男が私に復讐しにやってくるのだと知っているような気がした、自分でも覚えていないような過去 あるいは前世において私が傷つけた人間が私を責め苛み破滅させる日がやってくるはずだと…

④突然名を呼ばれ私はこわばった顔で振り返った、先生だった、私はあからさまに安堵し「どうなさったんですか、なぜここにいらっしゃるのですか」と尋ねると「オーケストラの招待券をもらったから一緒に観ようと約束していたじゃないか」とおっしゃる。それで私は先ほど誰を待っていたのかようやく思い出した、そう私が待っていたのは先生であって断じてあんな凶暴男ではない…そう思うと少し気がラクになった、先生にその話を冗談めかして伝えてしまえばその男の存在も希薄になるのではないかと期待すらした、しかし私はそのことを先生に伝えることはできなかった、口にしたら再びあの男をここに呼び生けてしまうのではないだろうかという危惧のために。

⑤開演の時刻が迫っているのでタクシーを飛ばしてコンサートホールへ行くことになったが、雨が降り出してなかなか車が捕まらない。ようやく捕まえた白タクの助手席に私は乗り、行き先を指示した。運転手は低い声で諾と答えると、ものすごいスピードで走り出した。水しぶきを上げて走る車の中から青看板が見え私はふと不安になり言った、「おじさん、青梅方面じゃないよ、反対…」

ミラー越し、運転手の顔を覗き込み 私はそこに 先の男の一文字の傷跡をみた。




夢でよかった、と心底思った。
覚えの無い(あるいは忘却の彼方の)過去の悪事が蘇ってくる悪夢ってほんとうにこわい…後味がわるい…
私にはわりと…自分はどこかで人を殺しているんじゃないだろうか、という恐怖感があるんだけど、それって特殊なのかしら。ああ怖かった。

枠組み無視で中身できてるだけ持ってガチンコ論文相談・次から次への質問に何とか答えらしきもの提出して・三時間くらいのアドバイスで論旨や構成がとてもすっきりした。先生すげー。「岡目八目」って笑ってたけどそんなレベルじゃないよ…これが知識で金をもらってる人間なのか…プロなのか…

私的重要アドバイス→「きみはすぐに答えを出そうとするけど、もっと時間かけて考えていいんだからね」

穿たれた。ううう・性格なんですあたしの…じっくり考えるの苦手なの・これでも昔よりは多少思慮っつうもんを理解してるつもりなんだけどさー。

で、急遽去年お世話になってた演劇学の先生に文献相談しに行ったら「(今の時期にそんなことゆってて)大丈夫なの?」と苦笑しつつも丁寧に教えてくれて感激。ていうか名前覚えててくれて感激。「ま 君はもともと勉強してたからね」って・ええー!?去年なんてあたし一番迷走してる時期だったのに…迷走しつつ、でも、なにかやらなきゃ、ってがむしゃらに手当たり次第、呑みこんでた、演劇だってその一部で…でも今になって役立ってるから不思議だよね、無駄じゃなかったんだね、なんかそういうところを見てくれてる人がいたということが無性に嬉しくて泣きそうになった。

夢①

フィレンツェの街角で日系の少女娼婦にナイフで刺された、骨の細い貧弱な体が震えている…あたしは唐突に彼女がいとおしくなって「いいこいいこ」と髪を撫でた、傷はわき腹をえぐりしたたる血を止めようともせずあたしはウフィッツィの美術館に歩みを進め横たわるべき台を探す…

夢②

一段目の引き出しにはパプリカがぎっしり詰められており、二段目にはピーマン、三段目はトマト…あたしは裸のまま野菜を数え・ひたすらに、困っていた・・・

 

 

南の島 だった、

あたしはごとごとと揺れるトラックの荷台でしとど流れる汗をぬぐい同乗する彼女の横顔に見入った、むせかえるような緑が延々と続く単調な景色を眺め彼女は言った、「あなたの予言どおりになったわ」

あたしは彼女のことを知らなかった、そもそもなぜ自分がこんなところに居るのかよくわかっていなかった、

眠る時は確かに冬の東京のアパートの一室に居たはずなのに目覚めたら南の島でトラックに揺れている…

しかしその手の違和感はあたしがいつも現実に対して感じているものだった、ひょっとしたらこちらのほうが現実なのかもしれないと思いながらあたしは「あなたとは初対面だったように思う」と言った、彼女はくすくす笑って

「あなたはわたしにこの人形と予言をくだすったわ」

と 言い、手のひらくらいの大きさの奇怪な人形を取り出した、それは布と糸だけでできている素朴な人形だった、右手が異様に短く左手には長い剣を持っているその人形は、しかし、確かに見覚えがあるような気がした。

「わたしは近く嫁ぎます、あなたのお告げどおりに」

彼女は言った、黒い長い髪が涼しげに揺れた、幸福そうだった、唐突に、あたしはこれから彼女の結婚式に行き彼女達を祝福する役目を担っているのだと思い出した。

唐突にあたしはあたしを理解した、

「水の匂いがする」 あたしは言った、

「スコールがくるよ」

 

 

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