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ゆめ か うつつ か
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そういえばこの前U田市のS古書店に行ってきた、小学生の頃からU田市に行くと必ず寄っているところで土着資料も充実してる、由緒正しい古書店なんだけど…やっぱり今時の古書店は経営が苦しいみたい…神田みたいにデータベース化したら絶対くいつく全国の研究者やマニアが居るはずの、良い店なんだけどなあ。でもデータベースにしちゃうと絶版本の値が上がっちゃうからなあ…(いくつかそこで欲しかった絶版本を安値で手に入れているので・なんだかもったいない気もする)。



『パノラマ島綺譚』 江戸川乱歩
夢見る書生、人見廣介は自分とそっくりな富豪の菰田源三郎と入れ替わり、パノラマ島と名づける夢の島をつくる。しかし源三郎の妻千代子と契ったことによりその入れ替わりが暴露しさらに千代子を殺したところで…
ペダンチックな島の描写はいささか飽きた。裸体の人魚どうの、椿の花の下の裸体の少女がどうの、きれいはきれいだけどエログロと紙一重・・・
千代子への想いが日増しに募っても千代子と契ってしまったら全てが露見するからと禁断の愛に耐える主人公の、せつないとこはよい。萩原朔太郎が褒めてたらしい。

「闇に蠢く」
踊り子お蝶がホテルで謎の消失を遂げ、旦那の画家と、お蝶をおいかけていたやくざと、学生が生き埋めにされる。ヤクザの男は過去船で漂流しているときに人肉食を犯した秘密を語る。
犯人は途中でわかる上に解決をみているわけでもない、ここは人肉食をめぐる奇怪な描写を愉しむ読み方で。いやーこえー。



『世界怪談名作集』 
岡本綺堂選。いろいろ入ってて面白かった、幽霊屋敷の話なんぞも。綺堂翁のチョイスはさすが。昔読んだものもあるけどとりあえず幻想的でうつくしー怪談を。

「クラリモンド」/ゴーチェ
老僧が語る生涯ただひとつの恋。美しき娼婦クラリモンドと出会い恋に落ちたロミュオーは、クラリモンドの死のウワサを聞く。彼女は何度も死んだことの有る女だと警告されるが、ある夜どこからか迎えにやってきたクラリモンドの魅力に、ロミュオーはヴェニスに贅沢な日々を送るようになる。
しかしクラリモンドは日に日に弱っていく。或る日果物の皮をむいているとき、あやまって指を切ったその傷の血を吸い、クラリモンドはよみがえる。彼女は吸血の化け物だった。
ロミュオーの師セラピオンがクラリモンドを退治し、二人は別れる。

欧風「白蛇伝」かな。クラリモンドは本当に美しく貞節でロミュオーのことを愛してる(ゆえに他人の血が吸えなくなった)のに、セラピオンが台無しにしてくれた…いいじゃん人外でもー。

「ラッパチーニの娘」/ホーソーン
有名な「毒娘」のお話。イタリア、パドヴァの大学で学ぶジョヴァンニは隣家の植物学者、ラパチーニの娘ベアトリーチェに恋をする。ところが、庭の中心の花と姉妹同様に育ち外の世界を知らぬけがれなき彼女に、小虫や蜥蜴などが彼女の身に触るとたちどころに死んでしまった。また、ジョヴァンニ自身もベアトリーチェの毒気を受け、毒のある身に変じてきた。パグリオーニ教授はジェヴァンニにアレキサンダー王を狙った毒娘の話をして、銀の小瓶に入った解毒剤を与える。しかし毒が彼女の命だったように解毒剤は彼女にとって猛毒であり、彼女は死ぬ。

ラパチーニは見ようによっては娘を最強にしようとして無茶な特訓を課すスポコン親父にもみえる。パグリオーニ教授がラスト〆たのは驚愕した。しかもあの言葉。「これが君の実験の終局か!」って、これはジョヴァンニとベアトリーチェの物語だと思ってたんだけどラパチーニとパグリオーニの物語でもあったのかしらん。
「わたくしはおそれられるより愛されとうございました」←なける。



『鳥少年』 皆川博子 
「火焔樹の下で」
精神病院患者の絵描きと絵画セラピストの女医と看護婦と作家の手紙で構成された四角関係とその決裂と最後。推理仕立て。
「指」 孤独を抱えた女二人が少年を眠らせ化粧する・よろこび。
「坩堝」 鏡師の女性とフリーライターの恋と裏切り。魔鏡(仕掛け鏡・覗いたものと別のものが写る仕組みになっている鏡)の話は久々に読んだ。ホラーだ…
「鳥少年」犯罪を犯した少年を救いかけて見放した女・鳥のような「残語」に弾劾される。

総括:結末があっというまに訪れる。最後の数行で前の文章を解きほぐす手法、わりと好み。

『重力の都』 中上健次
短編集だし中上のほかのものより読みやすい。「ふたかみ」が印象的、姉弟をひきとって育てる男、やがてその姉弟に翻弄される。喜和の魔性、弥平の愉楽、立彦を閉じ込める狂気、目を針で突く。おさなくとも、おんなであること。呑。

『第一阿房列車』 内田百閒 鹿児島・東北・奥羽の列車旅行記。
弟子のヒマラヤ山系(名前)とのつれづれエッセイ。ほんとに思うままに思うことを書いてる。味のある文章を書く人だなあと思う。。だからかどうか、短いエセーならともかくわりとだらだらする。
でも「行って帰ってくるだけ」「私のに朝の八時とか九時とかいう時間は無い」ので、わざわざ全て午後以降に出る列車に乗るために福島で途中下車して宿をとったり、ばかばかしくおもしろいなあと。



『黄金の指紋』 横溝正史
ジュブナイルだわこりゃ。
前半は岡山の灯台に遊びに来ていた東京の少年邦夫が、難破船から投げ出された青年に指紋のついた黄金の燭台を預かり、それを狙う二組の悪漢に連れ去られるまで。後半は金田一の縦横無尽の推理と活劇。
鉄仮面の少女(玉川伯爵の孫、小夜子)、意味ありげな指紋、ゴリラの体に天才の頭脳を移植した怪獣男爵、
「また会おう金田一君!」に至っては怪人二十面相かよ!とつっこみたくなった。いや、でも、おもしろいけどね。



『ヰタ・マキニカリスⅡ』 稲垣足穂
「青い箱と紅い骸骨」 兄妹相姦テーマ・人形のような死体
「随筆ヰタ・マキニカリス」が面白い。ありもしない本をでっちあげるほら吹き足穂、師匠の佐藤春夫はじめ、谷崎やら芥川やらの純文作家を愛しつつこきおろすような・フザけたエセー。この人の文章はほんとに、物質というものが無い。一千一秒物語を読んだのは小学校六年生のときだったが、その頃から不思議に乾いた文章がたまらなく好きだった、美術館に飾るような文章、異端。



『懲戒の部屋』 筒井康隆
「走る取的」相撲取りこわい。の話。正直ギャグとしか思えなかった。きもい。「蟹甲腺」とかよく最後まで読んだと思う。異世界の惑星に移り住んだ先で、頬が蟹の甲羅になる病気が…。
「熊の木本線」みたいな話はあたしも考えたことある、偶然タブーに触れてしまう話。



「虫の文化史」 小西正泰
民俗から生態まではばひろく。虫好きの女性は精神異常扱いだったとか、『虫めづる~』は知ってたけど17世紀ドイツの女性が蝶をめでていたら魔女扱いされた話は初耳。文学者と虫、室生犀星は言われれば虫の詩が多いかも。血を吸う虫の記述に一章丸々さかれててて、詳細かつ豊富で気持ちわるくなった。本草綱目の虱の項…味、塩辛いって…。ノミ虱のたぐいはそれだけ人間に密着してるという話かー。あたし現代にいてよかった…



あと、マルケスを読み返したり(「コレラの時代の愛」「わが悲しき娼婦達の思い出」その他)、東欧怪談集とか吉屋信子とか。エリアーデの「一万二千頭の牛」はアポリネールの「一万一千本の鞭」とタイトルが酷似しておりときめいたのだが・ふつうに防空壕で幽霊に会う話だった、ちえ。(*アポリネールのやつは好色譚)(宗教辞典を書いたミルチア・エリアーデ書く好色な話ってどんなだ)。あと個人的にムロージェックの「笑うでぶ」は面白かった、出てくる奴みんなものすごいでぶで痩せてるやつが異端っていう。おもしろこわい。

漫画もそれなりにいろいろ読んでるけどとりあえずこないだ読んだ山岸りょうこの漫画に全部もってかれた。さらわれた。前々から読みたくてこないだやっと通しで読んで、つきおとされた。自分と同じ名前のキャラ、しかもかなりいいキャラクターで、ものすごく感情移入してたのに何の前触れもなくそのキャラが自殺した。あまりの展開に目を疑った。これだからヤマギシはトラウマ漫画とかゆわれちゃうんだ…

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「愛」のかたち/武田泰順
夫ある町子と小説家の光雄の不倫。「私は女でない」肉体から始まりそれに依るふたり。町子は人形のように愛されたかった、夫と違い肉体の結合でなくその美をのみ愛でる光雄にすがる。肉体を介在させつつ精神的な愛を望む、肉から始まった肉なしの愛。
「利口な野獣」/「危険な物質」
結局は光雄の友人Mと同棲する町子。光雄は打算による結婚を考える。愛していたら触らないで、という願いは確かに誰にでもある、しかしそれは大抵少女期までで、26にもなって肉体の無い愛なんてどだいそんなもの望む方が無理ってもので…光雄はよく待ったと思う、この場合哀れなのは町子で…しかしそういう女は確実に居るのだ。
タイトルどうにかならなかったものか。

『神の裁きと決別するため』/A・アルトー
「私は昨日そのことを知った」アメリカ人は公立学校で精液の検査をするという・優越性の実験のために、それは競争の原理、「だから戦争万歳ではないか?なぜなら、こうしてアメリカ人が準備したのは、いまも必死で準備しているのはひたすら戦争なのだ」トゥトゥグリのダンス
糞便性の探求/「神とは存在なのだろうか。神が存在だとすれば神は糞である」
内的な抑圧が身体の爆発に至るのだと?
残酷とは何か。
ヴァン・ゴッホの純潔/「熾天使や処女には不可能なほどに純潔だった、なぜならそもそも罪の大いなる機構を助長し維持させたのは、まさしく彼らであるからだ」
身体をよせあつめる
「彼は…どうしてもそれに辿り着けないと言う不安のなかで自殺したのではなく、
それどころか、ようやくそれに辿り着き、自分が何であるか、そして自分が誰であるのかを彼は見出だしたばかりだったのだが、そのとき社会の一般意識が、社会から無理やり身を引き離した廉で彼を罰するために、ヴァン・ゴッホを自殺させた」
血に染まったゴッホの幻影、痙攣する魂、断罪。
戦中日記は蔵書乏しいうちの市図書館にもあるくらいだけれど、1945年以降の日記は未見だったのでわざわざ他の図書館から借り入れてきてはみたものの、元来日記というのはだらだらと日常をつづったものでなかなか読み進められたものでない。まして戦後の無気力とやるせなさの溢れた文は、雑音と暑さにうだるような東京では1ページも読めずただ山でなら読みこなせるかと持ってきた。
今の私と同じ年くらいの中井は、今の私とほぼ同様の無為の日々を送っていた、何も為さない、為せない、戦という国をあげての祭りを拒否もできずただ巻き込まれ、かといって死ぬことも出来なかった、夢をみはぐれたまま現実に投げ出されてそちらにもついてゆけずただ書を読むことだけ、流れて逝く日本を観察するだけ、その感慨すら六十年後のあたしのそれと酷似しているのがただ、しみいるようで。



以下抜書 

「戦争が不幸にして日本の勝利に終わった場合、この同じ国民が何をしでかすやらと思へば、實にほつとせざるを得ない」

「己の一番嫌悪し、最も憎むのは、この枯つ葉みたいにへらへらし、火をつければすぐかあつとなる日本帝国臣民といふやつだ。この臣民をそのまま人民と名を置き換へて、明日の日本に通用させようとするのは、今日最も危険なことだ」

「このくすぶれる暗黒の大地からは、何度だつて芽がでてくる。狂信的な愛国主義者、国家主義者、…そいつらの下肥がかかつた、この汚れたる大地を先ず耕せ。」 

「昨年の敗戦以来、呆れて物の言へないこと二つ。 

ひとつ、無条件降伏が決定した際、尚且つ一部青年将校が徹底抗戦を主張した事実。その青年達が今尚恬然と国民の中にかくれてゐること。 

ひとつ、降伏以後尚且国体護持などといふ言葉がむしろ当然のやうに言い触らされてゐること。それを支持する者の中に知識階級の多くが含まれてゐること。 

・天皇に責任はない。何故ならば「宣戦の大詔」なるものは即ち「敗戦の大詔」を出すに等しかつたから。
・こんな生ぬるい敗け方は日本の不幸である。僅かにも生きる道の残されてゐることが日本の反動勢力を未だに養ひつつある。
・日本では民主主義といふものは存在し得ない。民の多くは民主主義を否定するから。 

嗚呼永遠の奴隷国家日本!速やかにアメリカの植民地と変ぜよ。この濁れる血を救ふものは、紅毛びととの雑婚に依る他はない」



「怠堕の果に住ひしながら、社会を云々するのはよし給へ」

『完全な真空』 スタニスワフ・レム
存在しない本の書評集。ポストマルケスとはよくいったものだしもとSF作家というのもうなずけた、でもしかし読みづら・・・ごめんあんまり理屈ぽいのはあたしだめなんだ…数学的なのも・
「生の不可能性について/余地の不可能性について」(全二巻 ツエザル・コウスカ著 国立新文学出版所、プラハ)←全部つくりものってのはすご。
面白かった、コウスカ教授の生のためにどれほどの偶然がつみかさなられなければならなかったか。その前提の前提の前提の前提、と話をさかのぼっていくのは物語として成立しうる。物理学的回答を求めるのではなく論理学的回答を求めねばこの話は永遠に終わらない。
「白痴」ドストエフスキー批判、らしい。あたしとしては『罪と罰』をソーニャの視点で書いてくれたものの書評のほうが面白かったような。ソーニャが娼婦であるゆえにあの物語のテーマが変革されてしまうという意味で不可能、というくだり。
・・・しかしまあ、架空の書物の書評の書評ってつくづく空しい行為だな。



『化蝶記』 皆川博子
短編集、初めて読んだのは「丘の上の宴会」だった、乾いて哀しい雰囲気が気に入った、そのせいか、この人の時代物よりは現代ものの方がわたしはすき。
「月琴抄」は学生が病気の友を見舞う途中に雨に降られて見知らぬ女の家で雨宿りする、女の髪は肩までも無くざんばらで、少女(=実は男)は月琴を弾きながら「月琴を弾くと髪が動く」と語る。幻想怪奇ちっくなラストと仄かな同性愛臭。
「橋姫」 六道さん を叔母に持つ少女と冥婚。因縁的。
「水の女」 少年は隣のお家、夫婦と使用人の女の三角関係を観る。男が死んだ後、残された女二人は井戸にみをなげ心中する。水を汲む女と風呂に入る男女は共に愉しんでいたのだ、汲み上げる水に影を映して自分もその仲間に入っていたのだ―
時代ものなら「がいはち」かな。女が強い。



「薔薇と巫女」 小川未明 
病治し、村周りの巫女書き出しがなんとも秀逸。「家の前に柿の木があって、光沢の無い白い花が咲いた。裏に一本の柘榴の木があって、不安な紅い花を点した。その頃から母が病気であった。」
 これだけでぞくぞくする。うまいなあ。



「驚愕の荒野」 筒井康隆
魔界をループする人々の話。仏教的な観念が強いのかオリジナルなのか…魔界には男と猫しかいない、とか、塩肉の話とか独特の歪んだ世界観が面白い。いきなり332話から始まる、きれぎれの物語、主人公が変化する、語り手の子供たちが物語に参入していくのも個人的には面白かった。それにしてもつついさんは人肉ネタだいすきだな・・・「定年食」とかこれ人によってはグロすぎてよめねえぜ・



『黒いチューリップ』 A・デュマ
17世紀、オランダの政治的陰謀にまきこまれ投獄っされたチューリップ師の青年コルネリウスと、獄吏の娘ローザとの恋。側芽(球根)を狙う悪者の思惑と何も知らずに罠にかかる主人公ふたりは読んでてはらはらするし、逆転のタイミングも見事。そうかーこのために切り札をここに…と、作者の手順の鮮やかさに感心した。斯様にストーリーはダイナミックかつドラマチックで、恋と冒険、デュマお得意の大衆小説っぷりだけどやっぱりおもしろい。うまい。そしてやっぱり女の子としてはコルネリウスひどいよね、って言いたい。殿方は女より夢をとるものと相場が決まってるとはいえ、チューリップに嫉妬するローザちゃんはあまりにけなげで…
「花師」ってかっこいーし耽美だし、いつか書いてみたい。
そしてデュマに黒人の血がまじってるのだと初めて知った…ばーちゃんが黒人だったらしい。文壇の「黒い悪魔」ってかっこいいな…

哲学・宗教系専門の古本屋に行って、前から欲しかった本を少しずつ買ってる。前来た時は参考文献のためだったので本を見るのが辛いほどだったけど今度は思い切り趣味の本なのでもうもう楽しいったら。『カニバリズムの秩序』、『秘密結社とホモセクシャル』、フーコー、ドゥルーズの解釈本をいくつか。全部既読でいつか入手すると誓ってたもの、しめて五千円也。ドルーズのミルプラトーあったら欲しかったなー。アンチオイデプスばっか五冊くらいあった、なんでだ…。あと久生十蘭全集が組で六千円してすごい迷った、解題が中野美代子さんとか中井英夫さんとかとにかく豪華で…欲しいようー
フォン・シュタインや、あとボルヘスの作品に『記憶の人フネス』っていう、一度見たこと・読んだことはけして忘れないという人物が居たけどそういう特殊能力が心底羨ましい。頭の中の本棚に読んだ本を全て詰め込んでおけたらなー。

あたしの貧弱な脳みそじゃ、読んで、傾向を把握して、系統ごとにタイトルと作者を陳列するくらいが限界。しかも「解読不能」図書もいっぱいあるときたもんだ。





『馬をめぐるアンソロジー』
「ケンタウルスの探求」 プリーモ・レーヴィ 
ケンタウルスと共に育った男の証言、面白いし出だしが秀逸。
→「父は彼をどこに入れてよいかわからないので馬小屋に置いていた」
口が小さいのに馬の体を養わねばならないので一日中咀嚼している、なんて習性とかね、やけにリアルで笑った。ラストも切ないが、文体がさっぱりしてて訳者うまいとおもった。

「冷し馬」 井上ひさし
馬娘婚姻譚ね。遠野物語下敷きに老人が語る、人間の娘アオエと馬のシロの心中話。ええ話しや・・・

『夢見る人の物語』 ロード・ダンセイニ
基本、異世界、都市を中心とした幻想譚。前々からいろんなとこで名前は見てたんだけど未読だった、足穂に影響を与えたって納得!神話みたいだなーと思った。ちょっとラヴクラフトっぽくもある。
人となることを夢見た沼の妖精の、「妖精族の娘」なんかは、美しいものを理解しそれを望む魂をもっていてもそれが手に入らないなら沼のほとりにいたほうがまし、と、魂を持たぬひとを探す、もう少し掘り下げても面白そうだなと思ったな。
都に入ることを希望する誰もが無益な話をしなければならない「無為の都」に出てくるウウイニって日本のことに違いないのだけど(富士山も出てくるし)、こんなとこにまでジャポニズムが・と感慨深かった。あと「椿姫の運命」、短いけど、天使に地獄へ落とされること無く地上で花を咲かせる彼女の魂に、なぜか少し安堵した。

『奇術探偵 曾我佳城』 泡坂妻夫
曾我佳城の探偵譚全話。ん おもしれえ!美貌の女魔術師、佳城さんがとにかくステキ。中学生の匡一くんをお弟子に、あちこちの事件を快刀乱麻。それだけにラストの衝撃たるや…しかもラストの話だけ犯人があっさりわかった。他はけっこう外したのに。匡一くんがまた、一人前になってて泣けるんだ。
難を言えば語り手が常に第三者なので佳城さんの内的魅力がちょっとわかりづらい、なんていうか、うちとけないというか…そういうのが好きな人もいるのかな。
奇術の話が兎に角勉強になる。江戸期の奇術種本とか。

第一話の「天上のとらんぷ」、天上にとらんぷをはりつける術はでも、実地で見ないとどうもわかりにくい…あとこれが佳城さん初登場なんだけど、けっこう地味というかいきなり横から現れて推理して、って感じ;
「空中朝顔」はキレイなお話、悲恋物語だし・あさがおづくりの花師っていいなあ・・・とらんぷの数字・記号で短歌を作る「とらんぷの歌」もしゃれててかっこいいし、「ミダス王の奇跡」銀のコインを金に変える奇術、奇しいし妖しい。温泉が舞台だったしなんとなくネタはわかったけど、まさかこの話がラストに繋がるとは…初読じゃまったくわからなかった。「魔術城落成」はだからわりとショック…いやほんと…

*内ダ康ヲ
・『後鳥羽伝説殺人事件』
浅見光彦シリーズの第一巻目。このあとの作品を読んでみたくて、それには一応この探偵の出自というか登場を見ておかねばと思って読んだ。
きっつい母ちゃんにエリート兄ちゃん、ルポライターで家がかり。柔和で穏やか。正直言ってこういう人物はあまり好みではないし探偵自身への愛着はまだ湧いていないけど、冒頭の女が本を買う部分から、探偵の妹が殺されて…という伏線、ヒラの刑事と上司の確執、なんかのストーリーは読ませるんじゃないかな。
ただ、これは確信犯的な書き込み方かもしれないけど、文中の表現やつながりなんかから途中であっさり犯人が判明した。読者に当てさせようとしてくれてるのかな、親切だなあ。
でも…刑事局長の兄の権威でコトを運ぶやり方はどーよ…って思わないでもない…後鳥羽伝説についてはいたく勉強になった。歴史好きなのでこういうのはとっつきやすい。

・『平家伝説殺人事件』
ストーリーは起伏があってなかなか読めた。伊勢湾台風と冒頭の二人の少年の記述から銀座のホステス、偽造結婚にフェリー転落、自殺。平家の落人村。稲田佐和がヒロインとして人気高いのは納得。浅見光彦とも性格が合いそうだ。テンポがよいのでさっとよめる、でも落人伝説はあんまり関係ない。
 
・『江田島殺人事件』
東郷元帥の短剣が盗まれ、兄を通して防衛庁から依頼。海自の人間をホームズばりの慧眼で見抜く光彦、いやそれはわりと鋭い人ならわかりそうなものだ…と思わないでもなかった。江田島や海軍の話、軍神なんかについて勉強になるなー。あとは陽一郎兄さんの人間的なやさしさ・弱さにしびれた。光彦はなんかのーてんきそうで人間の背負う暗さがないのでどうも共感できない。人形みたい。裏に潜む戦争・軍備の問題なんかは、あれこういうこと書くんだこの作者・・・と思った。
それだけにあのラストはなかなか…うん、いいんじゃねえの
 
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