ゆめ か うつつ か
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書類整理してたらイタリア語プリントの裏に嵐のような殴り書きで書いてあった、イタ語やってたのは学部三年のときだけど…大方そのとき読んでた本の感想及びあたしの雑記。
*
世紀末にはとびぬけてよい作家は出てこないが百科全書的な作家が多くなる。材料だけは沢山持っているがたいしたことの無い内容、沢山の廃棄物にとりかこまれ、 それ を処理しなければ新たなものは生まれない。
地震や戦争でも起これば話は早いがそんなに簡単にはいかない。
今世紀はともかく前世紀の結果は出ている。
「グラディーバ」
歴史の層が重なる 色の層が重なるように
「ぼろんじ」 ぼろぼろの服を着ている敗残兵
産業革命以後に形成された街には歴史が無い。日本ならさしずめ応仁の乱か。東京もしかり。
並列の時代である現代ではデザイナーが多く排出される、組み合わせるためだけに、引用する価値のあるものを引用する、中国やイタリア、主人公はポンペイの街でさまざまな歴史に入り込んでゆく。
*壁画(神話、聖書主体) 絵は建築(不動産)の一部であるという考え、象徴であるので、リングと一緒。欲しければ女と結婚するかあるいは略奪する。金では交換できないもの、本来は不動産であったものが動産=ポータブルなものへ
「メレアグロスの家」
メレアグロスの神話
カリュドンの王子メレアグロスは生まれたときに燃えていた薪が尽きるときが寿命と定められた
Dianaへの宝物を捧げなかったために凶暴ないのししを向けられ、そのいのししを殺してしまう
水浴を覗き見られたDiana、Dianaの愛=谷崎潤一郎の小説 「ふーてんろーにん」
アルカディアの王女、アタランテとの徒競走で勝ちを譲る
おじは怒っていのししを盗もうとしたのでメレアグロスはおじを殺してしまう
メレアグロスの母アルタイアは怒って薪のもえさしを燃やしてしまう
→一家全滅
走るアタランテ=厳しい女、アマゾネス
逃げるアタランテ=水銀的 すぐに蒸発する
ステパノス「花冠」 ギリシア詞華選
エピグラム=寸鉄詩 短いことばでぴたりとあらわす
・・・1400年(東ローマ滅亡)まで ユダヤ侵略、ギリシャ貴族は陥落
Corpus ばらばらのものを繋ぎ合わせる。古代地中海のばらばらの詩歌を集め詩集にしたものが「花冠」、もう一度集成すること
復元
二人のメレアグロス(神の怒りに触れた男)を集成することによって違うものとして復元する
ばらばらになった男=エジプトのホルス、セト神
けしの花はモルヒネの材料、自分の中をさぐり本物の感情を伝える
ポンペイの人々はそれ(忘れたがっていたこと)を忘れていた
グラディーバ ⇔ グラディーヴス(男性形・マルス)
*
走り書きは以上なんだけどこれなんだろか…多分何か一冊の研究書のための覚書なんだけど・フロイト分析が関わってるのはたぶん間違いないと思うんだけど…たぶん…うーん思い出せないー心理学か言語か哲学か宗教か、そのあたりだと思うんだけど…
*
世紀末にはとびぬけてよい作家は出てこないが百科全書的な作家が多くなる。材料だけは沢山持っているがたいしたことの無い内容、沢山の廃棄物にとりかこまれ、 それ を処理しなければ新たなものは生まれない。
地震や戦争でも起これば話は早いがそんなに簡単にはいかない。
今世紀はともかく前世紀の結果は出ている。
「グラディーバ」
歴史の層が重なる 色の層が重なるように
「ぼろんじ」 ぼろぼろの服を着ている敗残兵
産業革命以後に形成された街には歴史が無い。日本ならさしずめ応仁の乱か。東京もしかり。
並列の時代である現代ではデザイナーが多く排出される、組み合わせるためだけに、引用する価値のあるものを引用する、中国やイタリア、主人公はポンペイの街でさまざまな歴史に入り込んでゆく。
*壁画(神話、聖書主体) 絵は建築(不動産)の一部であるという考え、象徴であるので、リングと一緒。欲しければ女と結婚するかあるいは略奪する。金では交換できないもの、本来は不動産であったものが動産=ポータブルなものへ
「メレアグロスの家」
メレアグロスの神話
カリュドンの王子メレアグロスは生まれたときに燃えていた薪が尽きるときが寿命と定められた
Dianaへの宝物を捧げなかったために凶暴ないのししを向けられ、そのいのししを殺してしまう
水浴を覗き見られたDiana、Dianaの愛=谷崎潤一郎の小説 「ふーてんろーにん」
アルカディアの王女、アタランテとの徒競走で勝ちを譲る
おじは怒っていのししを盗もうとしたのでメレアグロスはおじを殺してしまう
メレアグロスの母アルタイアは怒って薪のもえさしを燃やしてしまう
→一家全滅
走るアタランテ=厳しい女、アマゾネス
逃げるアタランテ=水銀的 すぐに蒸発する
ステパノス「花冠」 ギリシア詞華選
エピグラム=寸鉄詩 短いことばでぴたりとあらわす
・・・1400年(東ローマ滅亡)まで ユダヤ侵略、ギリシャ貴族は陥落
Corpus ばらばらのものを繋ぎ合わせる。古代地中海のばらばらの詩歌を集め詩集にしたものが「花冠」、もう一度集成すること
復元
二人のメレアグロス(神の怒りに触れた男)を集成することによって違うものとして復元する
ばらばらになった男=エジプトのホルス、セト神
けしの花はモルヒネの材料、自分の中をさぐり本物の感情を伝える
ポンペイの人々はそれ(忘れたがっていたこと)を忘れていた
グラディーバ ⇔ グラディーヴス(男性形・マルス)
*
走り書きは以上なんだけどこれなんだろか…多分何か一冊の研究書のための覚書なんだけど・フロイト分析が関わってるのはたぶん間違いないと思うんだけど…たぶん…うーん思い出せないー心理学か言語か哲学か宗教か、そのあたりだと思うんだけど…
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印象雑記・随時追加。
ストーリーを簡単に記してるので今後読もうと思ってる方はネタバレ注意。
*
4 /7
「炎色反応」 一人の女の生と性。五色の炎で描く。各一話に独りずつ男が死んでいく。「赤忌」「青忌」かな。
「火星植物園」 流浪する薔薇の末裔を救う気狂い男女。
「被衣」フランス古典風・デモーニッシュ。伯爵夫人の堕落。
「呼び名」 中井ぽい。愛人との二人きりの生活に美少年が入ってくる。主人公はどちらをも愛する、がしっくりした呼び名を呼べずに居るうちに愛人である女はやすやすとその間を飛び越えて少年を「呼」び生け、老いた主人公を置き去りにして若い二人は去っていく。
香りの有る植物だけを抜書きにした「香りの植物園」は要コピー。香水と香り、色彩などについて。(*1987三一書房作品集2)
ストーリーを簡単に記してるので今後読もうと思ってる方はネタバレ注意。
*
4 /7
「炎色反応」 一人の女の生と性。五色の炎で描く。各一話に独りずつ男が死んでいく。「赤忌」「青忌」かな。
「火星植物園」 流浪する薔薇の末裔を救う気狂い男女。
「被衣」フランス古典風・デモーニッシュ。伯爵夫人の堕落。
「呼び名」 中井ぽい。愛人との二人きりの生活に美少年が入ってくる。主人公はどちらをも愛する、がしっくりした呼び名を呼べずに居るうちに愛人である女はやすやすとその間を飛び越えて少年を「呼」び生け、老いた主人公を置き去りにして若い二人は去っていく。
香りの有る植物だけを抜書きにした「香りの植物園」は要コピー。香水と香り、色彩などについて。(*1987三一書房作品集2)
「死者の誘い」
他人の遺書を読み、彼を自らの代わりに死んだとする。父が子を、祖父がその父を手にかける逆縁。宇陀家に巣食う植物の呪いについて。
他人の遺書を読み、彼を自らの代わりに死んだとする。父が子を、祖父がその父を手にかける逆縁。宇陀家に巣食う植物の呪いについて。
「影の狩人」
バーで知り合った男と交わす暗号めいた会話。吸血鬼との密事。ひたすらに夜を待つ。隠微。
バーで知り合った男と交わす暗号めいた会話。吸血鬼との密事。ひたすらに夜を待つ。隠微。
「星の破片」
タイムスリップもの。「寝顔の美しい人が好き」。星が落ちるなら時間だって越えうる、という飛躍的な発想が「らしい」。
タイムスリップもの。「寝顔の美しい人が好き」。星が落ちるなら時間だって越えうる、という飛躍的な発想が「らしい」。
「鏡の中への旅」 ←パゾリーニ 「テオレマ」
柚木という同僚の家へ招かれる。確かにあったような、初めて知った島へ。円錐形の山の麓の家に行くと異様な美しさを持つ彼らの一族に迎えられる。同性愛的恋慕と一家全員との交情、淫夢の描写の簡にして艶なること・「相似た同性さえも互いに肉体をもって愛し合えること」というテストに、しかし主人公は鏡の中の自分に入り込めぬまま朝を迎える。山は消え 柚木一家は消え かれらは地球への移住者であったのではないかと確信する。中井さんはこういうSFぽいのをたまに書いてるみたいだけどどれも秀逸だ。こういった事象をこころの奥底で信じてる人でないとこういうふうには書けないんでないかなと思う。
「あきびんブルース」
あいするものはみなしんだ。あきびんに変化する青年、稲垣足穂ちっくなメルヘン。うつろのメタファー?
「藍いろの夜」
年下の男、峻に紬の着物をあつらえる三輪子。年下の男への「姉」的な執着は着物を仕立てたその日に消えうせ、山で鳥うちにでかけた男は足を滑らせ死ぬ。「おんな」となった三輪子はあたらしいとしうえの太一郎に、峻への着物を送るが、その呉服屋は太一郎のゆかりの家で…らすとこわい。
このひと鬱屈した女の情念を描かせると女並みにうまいなあ。的確でこわいくらい。こんだけ見透かされちまうと前に立つのも恐ろしい。自分の男に藍の香りをまとわせたいとか…うわーイイなあ、と思うだけに…すごい。
「人形たちの夜」
春夏秋冬・兄弟の相克・同じ一行で始まり同じ一行で終わる
「憎悪の美酒」 イエスに差し出されたすっぱい葡萄酒、弟に山ぶどうで作った葡萄酒の、わざとすっぱく作ったものをやる。数日後、弟は自殺する。姉の関心を得たいがためのパフォーマンス。
山葡萄酒、あたしが作ったときは腐ったけどうまく作れるものなのかしら…
「貴腐」 プリチュール・ノーブル
カインとアベルの最終話・絵とき。貴腐とはボトリアス・キネリアの発生である。憎悪が足りない、弟殺しも妻殺しも全てが嘘、妻の死を受け入れられず、それならいっそ自分が手にかけたと信じたい、という狂気。虚無の犯人が動機として述べているものに近いものがある、現実と虚構がいつのまにか逆転しているこの手法は、慣れていてもぎくりとする。うろ覚えだけど最高のワインを作ってしまったら、そのあとはワイン作りをやめるか死ぬかしかないじゃないか、という言葉にはくらっときた。
6月初旬追加
『幻想博物館』 精神病院 流薔園にて。
「聖父子」 母を殺した罪を告白する父、自分がその息子だと信じる少年の絵。
「大望ある乗客」 乗客ひとりびとりが殺人計画を胸に秘めたバスが転落。
「影の舞踏会」 ゲイとマダム。洋子はビリヤードに興じる男達の合図を宇宙人の交信と信じる、確かに男達はいつだって秘密の合図を送り続けている。
「黒闇天女」 こくあんてんにょ・と読む。最も気に入った話の一つ。大家の遺産、メイド、トリカブト、殺るか殺られるか、「この不義者をかたづけておしまい!」
「地下街」 手妻(手品)の降霊術。夫から毒を与えられ死んだと信じた妻。死者の愛。
「チッペンデールの寝台 もしくはロココふうな友情について」 女房を誘惑したことよりチッペンデールの寝台を使ったことを憎悪する。ハシリドコロ・ベラドンナで殺す。殺人者に感謝すら。
「セザーレの悪夢」 流薔園園長の語り、罪業妄想、精神病の話。ここでこれ以前の話全てが妄想だとあかされる。多次元宇宙からパラレルワールドへ、そして園長も狂気のものとする、語り手すら違う世界の住人。鮮やかなまとまりに、箱の中から小さな箱がどんどん出てくるような錯覚感。
「蘇るオルフェウス」 手紙を何通か出すだけで殺人をなしうる・藤井家の此の世ならぬ美貌、ガス自殺、兄妹相姦を暴きオルフェウスの復活を願うケンタウロスの手紙。
「公園にて」 アンファン・テリブルもの。語り手の老人の終始かわらぬテンション、意外な結末、殺伐としてるのにどこまでも穏やかな佳品。
「牧神の春」 プシュウドモナス・デモスリチカ 牧神とニンフの放し飼い
「邪眼」 分裂症の青年、二つ口のあるグロテスクな人形と化す 今はいつ?
『悪夢の骨牌』 藍沢家の女性二人をめぐる短編連作、二人の若者の失踪、時間旅行、「現在」に戻ってくる男を待ち続ける瑠璃と柚香の母娘。
「水仙の眠り」「アケロンの流れの涯てに」「暖かい墓」 失踪した男を追って夢魔の館へたどり着いた男からの手紙。いもしない犯人が求められる。
「大星触の夜」「ヨカナーンの夜」ビーナスは大地、海が男というのは大いにうなずくところ。少年を飛ばせる柚香、星の街の娼婦。男を箱詰めにする少女。
「緑の唇」「緑の訪問者」 瑠璃とその夫の物語。連作の中でも特に気に入った。戦後の話だからかな、清濁が混在すれう、時間が交わる、奇妙なズレがそのまま美となる。タイムマシンの呪文。
「廃屋を訪ねて」「戦後よ、眠れ」「闇の彼方へ」 時間旅行に連れ出された男達の結末、日常を贖った直人とパラレルワールドの直人。母娘の呟。時間の獄の崩壊を願う・
『人外境通信』
「笑う椅子」 椅子が招いた男女の悲劇を椅子が語る。二話めの海軍将校と不倫する人妻の話、描写のうつくしさに思わずときめいた…匂うようだった。
「鏡に棲む男」〈ピーマンを憎み続けし者 ここに眠る〉
「扉の彼方には」 扉は入ってくるためのものか出てゆくもののためか…こんなばかげたことを追求する人間があたし以外にいたとは驚き。しかしあなたこれは分裂病ですよこの妄想たっぷりな強迫観念、誰かに追訴される、周囲とどうかしなければならないという思いは。
「青猫の惑わし」 猫をえさに釣りこまれる女、男と母親の奇妙な・・・
「夜への誘い」 見知らぬ人物からの招待状、小動物展示の小動物とはほかならぬ自分。アナグラム あたしにはわかんなかった…
「美味追真」 よもぎの酢漬け エストラゴン・オウ・ヴィネーグル タイムマシン 自分の故郷に帰る 「己をくってくれ」
『真珠母のはこ』 はこ 出ない。甲という字が構えのなかにはいってるやつ。
「恋するグライアイ」 星川家三人姉妹、眼や歯に老いの来た初老の淑女三人が占い師に「若い男に恋をする」予言をもらう。
「死者からの音信」「海の雫」 次女江梨の昔の恋人、レイテ海沖で戦死した洋司に似たセールスマンのおとない。洋司の日記はほほえましいだけに涙を誘わないでもない、アクアマリン、海で泳ぎ泳ぎつくし死んだ恋人をおもう。ギリギリで幻想に留まる、現実へ向かないのは正しい。
「幻影の囚人」「ピノキオの鼻」「優しい嘘」 長女由良の息子がアントワープで星川家の長男、学者で戦時中に行方不明となった兄俊男に出会ったという、ベルギーへ出向く由良は隣り合わせた男、ピノキオめいた若い巻き毛の男に付き添われ冒険をする、こちらは次女とことなってラストのぶちこわし加減がよし。そして日本人と宝石の本質は相容れないという見解は大賛成!だからこそ日本パールは重要、と由良(そして作者)はいうがあたしはそれよりも彫金にこそ日本の精神があると思う。宝石の硬質さ、ドライさよりも練りこまれた金銀に刻まれる精緻さに親和する。
「青い贈り物」「絶滅鳥の宴」 三女志乃の不倫と夫との不和、戦後間もなくメリケン粉を水で溶いて塩入れて食べるエピソードが実に美しい。それだけに… ラスト三人+占い師で乾杯する、虚しさ。
6/11追記
「光のアダム」 中編
軽井沢の森に有る廃屋、その森でしか生きられない瀬良一族の謎
美術評論家 示村、画家の由井恭吉・美菜、聖杯伝説の瀬良一族・祖父数人・保留人の双生児と孫、笛人・不比等の双生児、セラフィータ/セラフィトゥス、テレパスの会話
三十年前、「幻夢童子之像」の絵と共に数人と保留人が消失する。由井があらためてセラフィータの美貌をうつりとり、それを再現する。
セラフィータを読んだのはもう十年ほど前になるので内容はあんまおぼえてない、が霧の谷をさまようこのよならぬ美貌の人物、天使、であるセラフィータはよく覚えて居るし憧れたものだ、なのでああ書かれてしまったと思いながら読んでいた。
示村の俗物ぶりが幻想的な話にあいまっている、じつに、彼の俗悪さが無ければ物語がどこまでも神秘の方へずり堕ちていってわからなくなるとこだった。これでいいと思う、残されるのは俗物と堕天使=女。
「光のアダム」がエリアーデからとは…『悪魔と両性具有』は以前目を通したのに全然頭に入ってないのがよくわかった。がっくり。
「他人の夢」よそびとのゆめ 中編
南瓜の緑の庭から、少女の夢へ。
太平洋戦争末期東京、杏子は巫女めいた予言をなし、許婚の杉原とその友人ふたりを守るために自分の夢の中に包み込んだのだという。その予言どおりに三人は特に前線にでることもなく市谷で日々をすごす、杏子は静かな狂人であり母のガス中毒死をとがめられたことにより発狂、少女の夢=庇護を失った三人は死ぬ。
叔母の電話が挿入されるのが効果を出していた、なにより戦争末期の東京の描写が良い。そう、これは現実なのか、戦争はどこにあるのか、自らがその火で焼かれるまでは信じない、信じられないという思いはよくわかる。青年達の戦争へのやる気のなさも。夢のなかで生きられるなら、それがたとい他人の夢でも・・・
「蒼白者の行進」 中編
渋谷を舞台に、バー「彩」が劇団「彩」結成へ。劇団のメンバーひとりびとりの挿話の後、ひとつめの戯曲はギリシア悲劇、アルテミスの兄への恋と、むちうたれる侍女。ふたつめはアルテミスが冥界へゆき父を殺そうとして、兄に殺される。
出演は九州の精神病院の姉と交信する藤川雅志、盲目のように睫の濃い泉翳とレズビアン、ヨウの兄妹、アンドロイドの薔人とその賛美者水口、黒髪の緑子、同じ顔、匂いも性も無いジョウとチャコ、二人と交わる魚崎、三人娘の矢。
戯曲+小説形式。それなりに面白く読めた、しかし作者の言うとおり中途半端。謎の人物でなかなか登場しない「彩」のあるじ朱麗さんがなぜ藤川をだまさなければならなかったのかとか・もう少し詳しく書いてほしかったなー。薔人と緑子のゆくすえも。薔人は男性の白痴美ってとこがいい。ヨウの、胎内回帰ならぬ父の中にこそ安らぎの場があり帰りたい、という意見は非常に面白く拝見。それに男性同士の性描写が秀逸なんだな。これ男性が書いてるかと思うとちょっとすごい。
ひとつひとつの描写はさすがだし、渋谷という土地を評して「ここでは何も起こりはしない」というのは気に入った。そう、あんな軽い地では何も起こりはしない。
文化面も…ディープパープルまでくると一応わかるもんね。いいとこ老年なはずなのにアングラ演劇までカバーしてる中井の感覚も凄いと思う、あたしなんて今ですら渋谷は書く気がしねえ。
「夜翔ぶ女」 すごい、こじゃれた小話。あたしこういうの好きだなー。タクシー運転手と謎めいた黒服の女、「夜間飛行」の香水、しかしてその実態は・・・!オチに夢を見せないとこも好み。
「卵の王子たちー世界一小さな密室」 少年少女の自殺あいつぐ社会で、対処療法として卵型の密室が流行していた。そこで起こる密室殺人…実父による最後の治療、ころしてください、おとうさん・恍惚の死。すごい、短いけど隠微で心に残った。
「安楽死志願」 突然の手紙、恋文かと思いきや猫を殺す話しとは・ちとわかりにくい、それもまたよし。
「三つの手紙」 美加と俊雄、矢島雅彦とその妻という二つのカップルを前提として、妻→美加→俊雄→雅彦の図でなおかつ遺産相続の陰謀。ここはもひとつ、雅彦の手紙がほしかった。「ああどうかぼくを憐れんでください、同時に憐れむのだけはやめてください」
「真珠姫」 一対ニ、が堕落の元。真珠姫が六人の求婚者のうち四人をはねつけ、最後のふたりを等しく愛する。「決闘なんて退屈なことをなさるなら、殿方同士で愛し合って、女などに見向きもしないって図を眺めていたほうが、まだまし」こういう台詞をつらっと書くのがすごいよな。古今東西、女にとってなにがもっとも人間らしい扱いか…それは「自分で稼ぐおかね」だというのも穿っている。
「名なしの森」 水口章は、13から15までの人間が集う「村」へ招待される。そこではみな異なる名前を名乗り、中世風の洋服を着、少女のアリス女王が支配する国であり、21世紀になったら理想のユートピアをつくる、そのために今はまだ名の無い集団であった。章はセザールという名でアリス女王の裁判に列席するが…
武装したアリスのイメージは素敵だけど、もうすこし長い物語にしてもよかったんじゃないかなあ。せっかくモチーフがよいのにもったいない・・・
「変身譜」 シャンソン評論家、黄島千晶の顧問として周囲にはべる有閑マダムの貞子は、往年黄島のレズビアン相手をつとめたという女の脅迫に、黄島の代わりに対処する。そのうちに、貞子のなかにも新たな思いが覚醒するが・・・
いや、この話もすごい。貞子の中の男性性を、「裡なる一人二役」と表わすところとか・なにより「出口を求めて」旅に出ようとした貞子が、街で若い男の子に声をかけられ、一緒にお茶をするラスト・・・自分が「男」に変身し、同性愛者として男の子を愛でるという構図に思わずうなった。そうなんだよね、トランスセクシュアル、レズビアンとして男性になった女がゲイの男の子を愛するという二重の倒錯はありうるよね!
「干からびた犯罪」 朔太郎の詩・帽子屋と3月兎と眠り鼠のお茶会に紛れたアリスの問答、「この3月、私たちは喧嘩をした」の解釈、実は喧嘩したのは帽子屋と「時間」ではないか、という高橋康也の解釈をしたじきにした短編。多佳子は四十年前の恋人の死の謎をとこうと田端に下りたが、そこでクラスメートに出会い、お茶会に誘われる。その場で霊媒が明かしたのは、多佳子が恋人を毒殺したという真相であり・・・
作者はアリス物語が大好きなんだな・・・。ご丁寧にチェシャ猫まで出てる。
「盲目の薔薇」 庭の薔薇がことごとくブラインド(盲芽)となった…薔薇の失語症に不安を覚える京子のもとに、園芸に詳しい青年がやってくる。彼と契った京子は、過去の一切を思い出し再び狂気に陥る。
こういう構成すきだ。裏切られた感というか・薔薇の小細工もしゃれてる、佳品。
「あるふぁべてぃく」 登場人物が全部アルファベット。料理家の夫人の遺産をめぐり、晩餐会。料理に毒を混ぜたと嘘をつく夫人。ちょっと黒闇天女ふう、ダークだけどこっちは死人は出てない。
「男色家の朝の歌」 他人に入り込める男。男色家の中に入り込む、壊れた自分を尼寺へ運ぶよりは男色家のなかで過ごすことを選ぼうか。「夕映少年」 病人と、麦星から来た男の子との語らい 「月光の箱」 「影を売る店」 歌手の影が売られているのを発見する。影いちまい十万、ものをうる人は影を売られている「影法師連盟」「古代旅行者」 いわゆる、SF。
「日蝕の子ら」 17歳の盾子と、その叔父の星川卓史の倫ならぬ恋と、兵隊にゆく直彦と医学生の情交と。ひめやかで隠微でよろしいわ。
「絶対確実におれのいない時代というのも、想像すると以外に寂しいものだな」
「必勝の信念というけれども、勝って一体どうするんだ、東条神社でも建てるつもりかというのが、そのころの学生一般に染み渡っていた風潮」←この文になんかしらんがひどく安堵した。
「黒塚」 「他人の夢」短編ヴァージョン。こっちのほうが鮮やかであたしは好みかも。杏子が妄想の世界を語るとこまでは同じだけど、部屋に隠した許婚の死体が現れるあたりが最高。
「星の不在」 心臓病とアステカのいけにえ。陶芸をやる主人公、「おれはなにかというと自分をダメなやつだと思おうとし(事実そうには違いないが)あげく自分の作品までを詰まらぬものに思い込もうとしている。こいつは危険な兆候だ。莫迦げた己惚れだけはもちたくも無いが、根底の自身まで突き崩して何が生れるだろう」←ぐさりとささった。
「幻談・千夜一夜」 芳雄と明夫、17・15の兄弟が、女がいる世界に絶望し自殺しようと考える。またいとこの姉妹、朱鷺子と紅鶴子(たづこ)がシャハラザードとドゥニヤザードよろしく物語を、あるいは行為を、そして手紙を通してあきらめさせようとするが、結局はことごとく失敗する。しかし兄弟は家出した先で、「大きい妹」・肥大した女性の優しさにふれ、阻まれる。
・父親が最初から二人の自殺を許容していたのは男の冒険を肯定したかったから
・「母親の過保護は時として問題にされますが、それは本当のところ戦後の日本全部を蔽っているので、そのためにこそ平和が保たれてきたならば、ぬるま湯にたえかねて飛び出すこともできはしない。それこそ地上の掟なのですから。」
・自殺の原因は戦後の状況そのもの・という指摘は興味深い。人を愛することを知らない子が自殺するのではない、ただただ人を愛したいという希求への理解が阻まれたとき自殺に走る、ということばも深い。そんでなにより千夜一夜を下敷きにした物語はあたしも何時の日か書いてみたいと思ってたのですごい悔しい。。一応小学生のときには東洋文庫を全巻読破してて、中学ではバートン版のよみくらべもしてたからね、うあああ悔しい!
8月初旬 作品集Ⅵ 鏡と影
あいするものはみなしんだ。あきびんに変化する青年、稲垣足穂ちっくなメルヘン。うつろのメタファー?
「藍いろの夜」
年下の男、峻に紬の着物をあつらえる三輪子。年下の男への「姉」的な執着は着物を仕立てたその日に消えうせ、山で鳥うちにでかけた男は足を滑らせ死ぬ。「おんな」となった三輪子はあたらしいとしうえの太一郎に、峻への着物を送るが、その呉服屋は太一郎のゆかりの家で…らすとこわい。
このひと鬱屈した女の情念を描かせると女並みにうまいなあ。的確でこわいくらい。こんだけ見透かされちまうと前に立つのも恐ろしい。自分の男に藍の香りをまとわせたいとか…うわーイイなあ、と思うだけに…すごい。
「人形たちの夜」
春夏秋冬・兄弟の相克・同じ一行で始まり同じ一行で終わる
「憎悪の美酒」 イエスに差し出されたすっぱい葡萄酒、弟に山ぶどうで作った葡萄酒の、わざとすっぱく作ったものをやる。数日後、弟は自殺する。姉の関心を得たいがためのパフォーマンス。
山葡萄酒、あたしが作ったときは腐ったけどうまく作れるものなのかしら…
「貴腐」 プリチュール・ノーブル
カインとアベルの最終話・絵とき。貴腐とはボトリアス・キネリアの発生である。憎悪が足りない、弟殺しも妻殺しも全てが嘘、妻の死を受け入れられず、それならいっそ自分が手にかけたと信じたい、という狂気。虚無の犯人が動機として述べているものに近いものがある、現実と虚構がいつのまにか逆転しているこの手法は、慣れていてもぎくりとする。うろ覚えだけど最高のワインを作ってしまったら、そのあとはワイン作りをやめるか死ぬかしかないじゃないか、という言葉にはくらっときた。
6月初旬追加
『幻想博物館』 精神病院 流薔園にて。
「聖父子」 母を殺した罪を告白する父、自分がその息子だと信じる少年の絵。
「大望ある乗客」 乗客ひとりびとりが殺人計画を胸に秘めたバスが転落。
「影の舞踏会」 ゲイとマダム。洋子はビリヤードに興じる男達の合図を宇宙人の交信と信じる、確かに男達はいつだって秘密の合図を送り続けている。
「黒闇天女」 こくあんてんにょ・と読む。最も気に入った話の一つ。大家の遺産、メイド、トリカブト、殺るか殺られるか、「この不義者をかたづけておしまい!」
「地下街」 手妻(手品)の降霊術。夫から毒を与えられ死んだと信じた妻。死者の愛。
「チッペンデールの寝台 もしくはロココふうな友情について」 女房を誘惑したことよりチッペンデールの寝台を使ったことを憎悪する。ハシリドコロ・ベラドンナで殺す。殺人者に感謝すら。
「セザーレの悪夢」 流薔園園長の語り、罪業妄想、精神病の話。ここでこれ以前の話全てが妄想だとあかされる。多次元宇宙からパラレルワールドへ、そして園長も狂気のものとする、語り手すら違う世界の住人。鮮やかなまとまりに、箱の中から小さな箱がどんどん出てくるような錯覚感。
「蘇るオルフェウス」 手紙を何通か出すだけで殺人をなしうる・藤井家の此の世ならぬ美貌、ガス自殺、兄妹相姦を暴きオルフェウスの復活を願うケンタウロスの手紙。
「公園にて」 アンファン・テリブルもの。語り手の老人の終始かわらぬテンション、意外な結末、殺伐としてるのにどこまでも穏やかな佳品。
「牧神の春」 プシュウドモナス・デモスリチカ 牧神とニンフの放し飼い
「邪眼」 分裂症の青年、二つ口のあるグロテスクな人形と化す 今はいつ?
『悪夢の骨牌』 藍沢家の女性二人をめぐる短編連作、二人の若者の失踪、時間旅行、「現在」に戻ってくる男を待ち続ける瑠璃と柚香の母娘。
「水仙の眠り」「アケロンの流れの涯てに」「暖かい墓」 失踪した男を追って夢魔の館へたどり着いた男からの手紙。いもしない犯人が求められる。
「大星触の夜」「ヨカナーンの夜」ビーナスは大地、海が男というのは大いにうなずくところ。少年を飛ばせる柚香、星の街の娼婦。男を箱詰めにする少女。
「緑の唇」「緑の訪問者」 瑠璃とその夫の物語。連作の中でも特に気に入った。戦後の話だからかな、清濁が混在すれう、時間が交わる、奇妙なズレがそのまま美となる。タイムマシンの呪文。
「廃屋を訪ねて」「戦後よ、眠れ」「闇の彼方へ」 時間旅行に連れ出された男達の結末、日常を贖った直人とパラレルワールドの直人。母娘の呟。時間の獄の崩壊を願う・
『人外境通信』
「笑う椅子」 椅子が招いた男女の悲劇を椅子が語る。二話めの海軍将校と不倫する人妻の話、描写のうつくしさに思わずときめいた…匂うようだった。
「鏡に棲む男」〈ピーマンを憎み続けし者 ここに眠る〉
「扉の彼方には」 扉は入ってくるためのものか出てゆくもののためか…こんなばかげたことを追求する人間があたし以外にいたとは驚き。しかしあなたこれは分裂病ですよこの妄想たっぷりな強迫観念、誰かに追訴される、周囲とどうかしなければならないという思いは。
「青猫の惑わし」 猫をえさに釣りこまれる女、男と母親の奇妙な・・・
「夜への誘い」 見知らぬ人物からの招待状、小動物展示の小動物とはほかならぬ自分。アナグラム あたしにはわかんなかった…
「美味追真」 よもぎの酢漬け エストラゴン・オウ・ヴィネーグル タイムマシン 自分の故郷に帰る 「己をくってくれ」
『真珠母のはこ』 はこ 出ない。甲という字が構えのなかにはいってるやつ。
「恋するグライアイ」 星川家三人姉妹、眼や歯に老いの来た初老の淑女三人が占い師に「若い男に恋をする」予言をもらう。
「死者からの音信」「海の雫」 次女江梨の昔の恋人、レイテ海沖で戦死した洋司に似たセールスマンのおとない。洋司の日記はほほえましいだけに涙を誘わないでもない、アクアマリン、海で泳ぎ泳ぎつくし死んだ恋人をおもう。ギリギリで幻想に留まる、現実へ向かないのは正しい。
「幻影の囚人」「ピノキオの鼻」「優しい嘘」 長女由良の息子がアントワープで星川家の長男、学者で戦時中に行方不明となった兄俊男に出会ったという、ベルギーへ出向く由良は隣り合わせた男、ピノキオめいた若い巻き毛の男に付き添われ冒険をする、こちらは次女とことなってラストのぶちこわし加減がよし。そして日本人と宝石の本質は相容れないという見解は大賛成!だからこそ日本パールは重要、と由良(そして作者)はいうがあたしはそれよりも彫金にこそ日本の精神があると思う。宝石の硬質さ、ドライさよりも練りこまれた金銀に刻まれる精緻さに親和する。
「青い贈り物」「絶滅鳥の宴」 三女志乃の不倫と夫との不和、戦後間もなくメリケン粉を水で溶いて塩入れて食べるエピソードが実に美しい。それだけに… ラスト三人+占い師で乾杯する、虚しさ。
6/11追記
「光のアダム」 中編
軽井沢の森に有る廃屋、その森でしか生きられない瀬良一族の謎
美術評論家 示村、画家の由井恭吉・美菜、聖杯伝説の瀬良一族・祖父数人・保留人の双生児と孫、笛人・不比等の双生児、セラフィータ/セラフィトゥス、テレパスの会話
三十年前、「幻夢童子之像」の絵と共に数人と保留人が消失する。由井があらためてセラフィータの美貌をうつりとり、それを再現する。
セラフィータを読んだのはもう十年ほど前になるので内容はあんまおぼえてない、が霧の谷をさまようこのよならぬ美貌の人物、天使、であるセラフィータはよく覚えて居るし憧れたものだ、なのでああ書かれてしまったと思いながら読んでいた。
示村の俗物ぶりが幻想的な話にあいまっている、じつに、彼の俗悪さが無ければ物語がどこまでも神秘の方へずり堕ちていってわからなくなるとこだった。これでいいと思う、残されるのは俗物と堕天使=女。
「光のアダム」がエリアーデからとは…『悪魔と両性具有』は以前目を通したのに全然頭に入ってないのがよくわかった。がっくり。
「他人の夢」よそびとのゆめ 中編
南瓜の緑の庭から、少女の夢へ。
太平洋戦争末期東京、杏子は巫女めいた予言をなし、許婚の杉原とその友人ふたりを守るために自分の夢の中に包み込んだのだという。その予言どおりに三人は特に前線にでることもなく市谷で日々をすごす、杏子は静かな狂人であり母のガス中毒死をとがめられたことにより発狂、少女の夢=庇護を失った三人は死ぬ。
叔母の電話が挿入されるのが効果を出していた、なにより戦争末期の東京の描写が良い。そう、これは現実なのか、戦争はどこにあるのか、自らがその火で焼かれるまでは信じない、信じられないという思いはよくわかる。青年達の戦争へのやる気のなさも。夢のなかで生きられるなら、それがたとい他人の夢でも・・・
「蒼白者の行進」 中編
渋谷を舞台に、バー「彩」が劇団「彩」結成へ。劇団のメンバーひとりびとりの挿話の後、ひとつめの戯曲はギリシア悲劇、アルテミスの兄への恋と、むちうたれる侍女。ふたつめはアルテミスが冥界へゆき父を殺そうとして、兄に殺される。
出演は九州の精神病院の姉と交信する藤川雅志、盲目のように睫の濃い泉翳とレズビアン、ヨウの兄妹、アンドロイドの薔人とその賛美者水口、黒髪の緑子、同じ顔、匂いも性も無いジョウとチャコ、二人と交わる魚崎、三人娘の矢。
戯曲+小説形式。それなりに面白く読めた、しかし作者の言うとおり中途半端。謎の人物でなかなか登場しない「彩」のあるじ朱麗さんがなぜ藤川をだまさなければならなかったのかとか・もう少し詳しく書いてほしかったなー。薔人と緑子のゆくすえも。薔人は男性の白痴美ってとこがいい。ヨウの、胎内回帰ならぬ父の中にこそ安らぎの場があり帰りたい、という意見は非常に面白く拝見。それに男性同士の性描写が秀逸なんだな。これ男性が書いてるかと思うとちょっとすごい。
ひとつひとつの描写はさすがだし、渋谷という土地を評して「ここでは何も起こりはしない」というのは気に入った。そう、あんな軽い地では何も起こりはしない。
文化面も…ディープパープルまでくると一応わかるもんね。いいとこ老年なはずなのにアングラ演劇までカバーしてる中井の感覚も凄いと思う、あたしなんて今ですら渋谷は書く気がしねえ。
「夜翔ぶ女」 すごい、こじゃれた小話。あたしこういうの好きだなー。タクシー運転手と謎めいた黒服の女、「夜間飛行」の香水、しかしてその実態は・・・!オチに夢を見せないとこも好み。
「卵の王子たちー世界一小さな密室」 少年少女の自殺あいつぐ社会で、対処療法として卵型の密室が流行していた。そこで起こる密室殺人…実父による最後の治療、ころしてください、おとうさん・恍惚の死。すごい、短いけど隠微で心に残った。
「安楽死志願」 突然の手紙、恋文かと思いきや猫を殺す話しとは・ちとわかりにくい、それもまたよし。
「三つの手紙」 美加と俊雄、矢島雅彦とその妻という二つのカップルを前提として、妻→美加→俊雄→雅彦の図でなおかつ遺産相続の陰謀。ここはもひとつ、雅彦の手紙がほしかった。「ああどうかぼくを憐れんでください、同時に憐れむのだけはやめてください」
「真珠姫」 一対ニ、が堕落の元。真珠姫が六人の求婚者のうち四人をはねつけ、最後のふたりを等しく愛する。「決闘なんて退屈なことをなさるなら、殿方同士で愛し合って、女などに見向きもしないって図を眺めていたほうが、まだまし」こういう台詞をつらっと書くのがすごいよな。古今東西、女にとってなにがもっとも人間らしい扱いか…それは「自分で稼ぐおかね」だというのも穿っている。
「名なしの森」 水口章は、13から15までの人間が集う「村」へ招待される。そこではみな異なる名前を名乗り、中世風の洋服を着、少女のアリス女王が支配する国であり、21世紀になったら理想のユートピアをつくる、そのために今はまだ名の無い集団であった。章はセザールという名でアリス女王の裁判に列席するが…
武装したアリスのイメージは素敵だけど、もうすこし長い物語にしてもよかったんじゃないかなあ。せっかくモチーフがよいのにもったいない・・・
「変身譜」 シャンソン評論家、黄島千晶の顧問として周囲にはべる有閑マダムの貞子は、往年黄島のレズビアン相手をつとめたという女の脅迫に、黄島の代わりに対処する。そのうちに、貞子のなかにも新たな思いが覚醒するが・・・
いや、この話もすごい。貞子の中の男性性を、「裡なる一人二役」と表わすところとか・なにより「出口を求めて」旅に出ようとした貞子が、街で若い男の子に声をかけられ、一緒にお茶をするラスト・・・自分が「男」に変身し、同性愛者として男の子を愛でるという構図に思わずうなった。そうなんだよね、トランスセクシュアル、レズビアンとして男性になった女がゲイの男の子を愛するという二重の倒錯はありうるよね!
「干からびた犯罪」 朔太郎の詩・帽子屋と3月兎と眠り鼠のお茶会に紛れたアリスの問答、「この3月、私たちは喧嘩をした」の解釈、実は喧嘩したのは帽子屋と「時間」ではないか、という高橋康也の解釈をしたじきにした短編。多佳子は四十年前の恋人の死の謎をとこうと田端に下りたが、そこでクラスメートに出会い、お茶会に誘われる。その場で霊媒が明かしたのは、多佳子が恋人を毒殺したという真相であり・・・
作者はアリス物語が大好きなんだな・・・。ご丁寧にチェシャ猫まで出てる。
「盲目の薔薇」 庭の薔薇がことごとくブラインド(盲芽)となった…薔薇の失語症に不安を覚える京子のもとに、園芸に詳しい青年がやってくる。彼と契った京子は、過去の一切を思い出し再び狂気に陥る。
こういう構成すきだ。裏切られた感というか・薔薇の小細工もしゃれてる、佳品。
「あるふぁべてぃく」 登場人物が全部アルファベット。料理家の夫人の遺産をめぐり、晩餐会。料理に毒を混ぜたと嘘をつく夫人。ちょっと黒闇天女ふう、ダークだけどこっちは死人は出てない。
「男色家の朝の歌」 他人に入り込める男。男色家の中に入り込む、壊れた自分を尼寺へ運ぶよりは男色家のなかで過ごすことを選ぼうか。「夕映少年」 病人と、麦星から来た男の子との語らい 「月光の箱」 「影を売る店」 歌手の影が売られているのを発見する。影いちまい十万、ものをうる人は影を売られている「影法師連盟」「古代旅行者」 いわゆる、SF。
「日蝕の子ら」 17歳の盾子と、その叔父の星川卓史の倫ならぬ恋と、兵隊にゆく直彦と医学生の情交と。ひめやかで隠微でよろしいわ。
「絶対確実におれのいない時代というのも、想像すると以外に寂しいものだな」
「必勝の信念というけれども、勝って一体どうするんだ、東条神社でも建てるつもりかというのが、そのころの学生一般に染み渡っていた風潮」←この文になんかしらんがひどく安堵した。
「黒塚」 「他人の夢」短編ヴァージョン。こっちのほうが鮮やかであたしは好みかも。杏子が妄想の世界を語るとこまでは同じだけど、部屋に隠した許婚の死体が現れるあたりが最高。
「星の不在」 心臓病とアステカのいけにえ。陶芸をやる主人公、「おれはなにかというと自分をダメなやつだと思おうとし(事実そうには違いないが)あげく自分の作品までを詰まらぬものに思い込もうとしている。こいつは危険な兆候だ。莫迦げた己惚れだけはもちたくも無いが、根底の自身まで突き崩して何が生れるだろう」←ぐさりとささった。
「幻談・千夜一夜」 芳雄と明夫、17・15の兄弟が、女がいる世界に絶望し自殺しようと考える。またいとこの姉妹、朱鷺子と紅鶴子(たづこ)がシャハラザードとドゥニヤザードよろしく物語を、あるいは行為を、そして手紙を通してあきらめさせようとするが、結局はことごとく失敗する。しかし兄弟は家出した先で、「大きい妹」・肥大した女性の優しさにふれ、阻まれる。
・父親が最初から二人の自殺を許容していたのは男の冒険を肯定したかったから
・「母親の過保護は時として問題にされますが、それは本当のところ戦後の日本全部を蔽っているので、そのためにこそ平和が保たれてきたならば、ぬるま湯にたえかねて飛び出すこともできはしない。それこそ地上の掟なのですから。」
・自殺の原因は戦後の状況そのもの・という指摘は興味深い。人を愛することを知らない子が自殺するのではない、ただただ人を愛したいという希求への理解が阻まれたとき自殺に走る、ということばも深い。そんでなにより千夜一夜を下敷きにした物語はあたしも何時の日か書いてみたいと思ってたのですごい悔しい。。一応小学生のときには東洋文庫を全巻読破してて、中学ではバートン版のよみくらべもしてたからね、うあああ悔しい!
8月初旬 作品集Ⅵ 鏡と影
・「日本人の貌-非国民の思想-」
・暗い宴・わが体験
「戦時中を間違えて生きた日本人が戦後を間違えず生きることができるのか」
・「文字、色、音」
「人定」深夜、人が寝静まる意。好きな言葉。
・「金魚とありと人間と-人肉喰いの思想」
「一度も食べたことがないくせにはっきりその味を知っているものに蟻と金魚がいる」
私はスキー板だ、と思いながら読んでいた。
「食べてもすぐに復活すればよい」という考えは食欲とセックスの混同、と説く。
・「暗号異聞」社会思想社「秘文字」、暗号小説をさらに暗号化して刊行。淡坂妻夫、日影丈吉、中井の三作から、中井自身の徴兵体験まで。暗号を送る部署に居た話など興味深い。
それにしても贅沢な本だ…欲しいなー・
・「男が化粧するとき」
→竹の子族の話・男の子が化粧する、と聞いて原宿へ出かけたが見苦しいのばかり。
浅草の三社祭りで化粧下男は、ひとはけの紅おしろいが似合った。化粧が美しいのは高潮した表情にあり、戦いと死をふまえればこそである、というお説。
・暗い宴・わが体験
「戦時中を間違えて生きた日本人が戦後を間違えず生きることができるのか」
・「文字、色、音」
「人定」深夜、人が寝静まる意。好きな言葉。
・「金魚とありと人間と-人肉喰いの思想」
「一度も食べたことがないくせにはっきりその味を知っているものに蟻と金魚がいる」
私はスキー板だ、と思いながら読んでいた。
「食べてもすぐに復活すればよい」という考えは食欲とセックスの混同、と説く。
・「暗号異聞」社会思想社「秘文字」、暗号小説をさらに暗号化して刊行。淡坂妻夫、日影丈吉、中井の三作から、中井自身の徴兵体験まで。暗号を送る部署に居た話など興味深い。
それにしても贅沢な本だ…欲しいなー・
・「男が化粧するとき」
→竹の子族の話・男の子が化粧する、と聞いて原宿へ出かけたが見苦しいのばかり。
浅草の三社祭りで化粧下男は、ひとはけの紅おしろいが似合った。化粧が美しいのは高潮した表情にあり、戦いと死をふまえればこそである、というお説。
・「新青年の変遷」竹.中英.太郎に言及!
・作家評論
内田百間「枇杷熟るる頃」 「果物のように」自ら求めたいとは思わない
バルザック嫌いなのに安心した。私も好きでない。
ほか、恐山、「空しい音・愛読者を探す試み」では(彼ら)を発見。カクテルにも造詣が深いことなど。相変わらず多彩な文章に幻惑される。寺山修司を見出したのが中井だったと改めて知る。『われに五月を』は全く偶然古本屋で手に入れたことがあったし、竹中.英太.郎記念館はこの前行ったばかりなので符丁に驚きもし、嬉しくもあり。選ばれている作家や画家も木々高太郎や横溝、久生、夢二、ボッス等私の好みにどんぴしゃりでますます好ましくなった。
・作家評論
内田百間「枇杷熟るる頃」 「果物のように」自ら求めたいとは思わない
バルザック嫌いなのに安心した。私も好きでない。
ほか、恐山、「空しい音・愛読者を探す試み」では(彼ら)を発見。カクテルにも造詣が深いことなど。相変わらず多彩な文章に幻惑される。寺山修司を見出したのが中井だったと改めて知る。『われに五月を』は全く偶然古本屋で手に入れたことがあったし、竹中.英太.郎記念館はこの前行ったばかりなので符丁に驚きもし、嬉しくもあり。選ばれている作家や画家も木々高太郎や横溝、久生、夢二、ボッス等私の好みにどんぴしゃりでますます好ましくなった。
元岡っ引の半七の名推理が冴える捕り物帳。
日本のホームズといわれるとおり、理屈がしっかりしてて常に現実、事実に基づいた半七の推理は冴えてるんだけど…何だかイマイチ…、事件のトリック、肝心なとこは全部半七が喋っちゃうので読者は推理に参加する楽しみがあまりないかもなあ…もうちょっと冒険的スリル要素があったほうが読みやすいかも、と、最初は思ったけど、慣れてくると段々半七の語りに引き込まれて、まるで自分が傍らで話しを聞いてるみたいな気分になってくるから面白い。そしてなんといっても江戸風物の描写!!杉浦ヒナコさんが絶賛するのもわかる。
あと、半七爺さんがえらい男前。芝居好きで昔かたぎだけど、家にはランプなんか仕込んで、新しいものも興味たっぷり。いなせだ。声に出して読むのも良い。それにしても綺堂は博学だなあ…
*ネタバレあり・随時増加
4/14
「河豚太鼓」 河豚の皮で作ったでんでん太鼓を手がかりに、行方不明の子を探す。そのころ普及してきたばかりの種痘を恐れて子守の下女が主家の子供を攫い隠してしまう女中の話。
「菊人形の首」 幕末江戸の異人についての話も面白かったけど、管狐を使う狐使いの女が出て来て、江戸期の信仰の一面が見えるのが面白い。
「十五夜御用心」 四人の謎の死骸が寺でみつかる、閲微草堂筆記か元ネタ。綺堂の中国怪談集は持ってるし、彼が中国文学に詳しいのは知ってたけどうまく謎を解いたなあ…というかんじ。新劇の脚本だったものもある、だから文章がなんとなく、硬い割りにあっさりしすぎてるっつうか。内容もなんか短いわりにドラマ性たっぷりというか…
5/7~
「鷹のゆくえ」 遊郭の帰りにお鷹を逃がしてしまった鷹匠を救うため半七がんばる。鳥取りの描写とか、お蕎麦たべるとことか、風俗読み物としても面白い。
「津の国屋」 大店津の国屋をめぐる陰謀。怪談と見せかけて謎解きものというのが無粋だけど、その無粋さがまた良いというか。話しがよく出来ている。幽霊におびえる文字春師匠がかわゆい。
「三河万歳」 約束していた才蔵(万歳の相方)が現れずに困る万歳。サイゾウと万歳って正月限定の契約で、生国がちがくても良かったのかー!それで商売成り立つんだからすごいよな。一年に一度、正月だけ集う…江戸における万歳の仕組みを知った。事件自体よりそっちの話のほうが面白い…
「槍突き」 今で言う通り魔の話だけど武家の息子が女装して犯人をやっつけようとして黒猫を身代わりに置いておくくだりなんかは展開がよめなくて面白かった。
「お照の父」
「向島の寮」
「蝶合戦」 絵面がきれい。南米で蝶が群がり舞う話を思い出した。日本でもあったんだなあ。
「筆屋の娘」 美人姉妹が舌で筆を舐め整えてくれるから繁盛する筆売り屋の話で、トリック自体はバレバレなんだけどなまめかしい情緒が○。
「鬼娘」
「小女朗狐」 いぶし殺された男達。墓を荒らす狐。犯人の幼さがいたいたしい…でもあだ討ちなら大量殺人も許されるんだな、すげえ。
「狐と僧」
「女行者」
「化け銀杏」
「雪達磨」 いつになく大雪の江戸、雪だるまの中から死体と南京玉。贋金作りの材料に南京玉が使われるなんて知らなかった。しかしそもそも南京玉のイメージがよくわからない…
「熊の死骸」 火事場に現れた熊から娘を助けた男が、その娘に恋慕して殺す。熊の死骸を盗んだやつらが現れてややこしいことに。熊肝ってやはり高価だったのね。
「あま酒売り」 九州の蛇神の血をひいた女の甘酒売りにであうと、熱を出し死ぬ。その女を連れて江戸にやってきた男が、女の母に狙われ…という話。蛇神の血筋は結婚もままならなかった、以前ゼミで犬神の話をきいたことを思い出した。甘酒の固練りってどういうものか挿絵が欲しい…
「張子の虎」 召し取りの加勢をした遊女がお上から褒賞され有名になる、その女が殺され枕元に張子の虎が・というもの。話の筋からなんとなく復讐ものかな、ということは読めたけど半七鋭すぎ。
「海坊主」 海から現れ生魚を食す奇怪な男の話。実は前科者で島流しにあっていたのを、得意の泳ぎで船から船へ渡り歩いて次第に江戸に近づいた。話しはかなり面白い。江戸時代なら妖怪だと信じてしまうひともいるだろう。
「旅絵師」 この話がこの中じゃ一番ぐっときた。ロマンス活劇仕立て。隠密の話も興味深い。お庭番って一生に一度勤めればいいのかー、とか。隠密で旅絵師に扮して出た男が奥州の大店の娘を救いその一家に世話になるが彼らは隠れキリシタンで、男はまりや観音の絵を描くことを頼まれ・という筋。娘がけなげ。
「雷獣と蛇」 昔の人は雷を恐れたのだなあ・化をに引っかき傷=雷獣に襲われて死んだ、と結論するあたり浅はか・蛇の話しはおまけみたようなもの。蛇玉は怖いけど・・・
「半七先生」 半七の家の「報恩額」由来。手習いに行った少女が先生にしかられ姿を消す、謎は少女の兄の付文にある。おいおい兄ちゃん…といいたくなる…死人が出ないのでほっとした。
「冬の金魚」 冬に温水で生きる金魚を使ったぺてんにまつわる殺人事件。ほんとにこんな金魚いるんだろか…
「松茸」 熊谷から献上ものの松茸を運ぶ男がキセルをかごに刺しておいたことをとがめられ出奔、同郷の大店の娘が江戸に嫁いでるのに出会い、その丙午生まれをたねに脅す。こういったことで出奔してしまうとか、こんなささいなことで離縁されるとかそのへんの時代背景が既に興味深い。
「人形使い」 仇役を演じる人形使い同士が二人ながらに死体に。人形のたたりオチ?半七にしてはおどろおどろしいオチ。
「少年少女の死」 おもちゃの水差しに毒、二人の男の子が死亡した話しと、少女のかどわかし。
「異人の首」 異人の首をちらつかせ商家で攘夷の資金を脅しとる悪党の話。イギリス人ロイドが遊女にいれあげた背景をつきとめた半七、ヨコハマで大活躍。蝋人形の首だったことが判明して落着。
「一つ目小僧」 一つ目小僧の怪異から15両の鶸をだましとられた鳥屋。小僧はは按摩で、そこから犯人一味をあげる。鳥屋ときいてつげ義春の漫画を思い出した。
「柳原土手の女」 妖怪探索から、心中へ。醜い娘のための親心に泣ける。
「むらさき鯉」 小石川と牛込の間の御留川ご禁制のむらさき鯉をめぐる話。密かに盗み釣りをした町人のもとに、鯉を返してくださいと女が尋ねてくる。化け鯉の正体は…というお話。これ中国の志怪に似たような話が合った。そっちは論理的なオチはついてない、本物の怪談だったけど。
「三つの声」 これはまっとうな推理ものだった。三人の男が川崎大師にお参りに行く待ち合わせをしているが、一人が死体で見つかる。男の妻が聞いた三つの声を手がかりに、半七の推理がさえる。
「金の蝋燭」 金の芯に蝋を塗った蝋燭を持った女の身投げ。亭主への意趣返し。『権門』賄賂のこと。菓子折りの中の小判に同じ。ほんとにやってたんだな…
「ズウフラ怪談」 Rofle(オランダ語) 遠い人を呼ぶためのラッパ。なまってズウフル、ズウフラへ。江戸の滑稽本「和合人」にも出てくる。これを使って幽霊の声を演じてイタズラしていた男と、不倫の始末に道場のっとりの陰謀。もりだくさんな一品。
「大阪屋花鳥」 吉原の女娼妓、付火で島流しにあっても泳いで帰ってきたというすごいあねさん。この前置きからいきなり浅草の商家の息子と貧乏武士の娘のシンデレラストーリーにうつるのだけど、後でちゃんと話が繋がってるあたりがすごい。花鳥の悪役ッぷり、牢名主っぷりもすごい。いろいろな話が次から次へ出てきて幻惑させられるけど、最後には掌の上で収束してるのが名人芸。
「正雪の絵馬」 江戸時代の絵馬マニアの話。いかな大店の主人とて偽者の絵馬でひっかけられたあげくその絵馬抱えて家出とは、まさに絵馬狂い。それにしても絵馬を盗んでも当時は罪にならなかったのだろうか…いや、今だって罪になるのか知らないけど…
「大森の鶏」 半七、川崎参りの途中鶏に追われる女とでくわす。それが別の殺しにつながって…という話。鶏って人間を識別できるのかな…主人を殺された鶏が、仇の女を覚えていて追い掛け回すなんてことあるんだろうか…半七みたいな稼業のものは信心深かった江戸時代。今の警察官は神頼みなんてしなそうなのに比べると、それでもまだずいぶんと人間らしい。
「妖狐伝」 鈴が森の狐のからくりは南蛮船のアイテムだった。マッチは火の玉、靴ずみで顔をなでるとか、そういうお遊びしてみたいと思う。しかし同名の女と同名の男がお互い相手を間違えるなんてちとくるしすぎるような…ジョージってまた典型的な外人だし・
「唐人飴」 唐人の格好で飴売りにくる男と、方袖に包まれ切られた片腕。ときわづの師匠文字吉、女ばかり弟子にとっていて貞淑と評判だったが実は「男女」(おめ・いわゆるレズ)だった。腕の方は役者の敵討ち。明治までは鉦をたたいて飴を売りに来る飴売りが多かったらしい、今はもう完全に無くなったなあ。
「幽霊の見世物」 半七「世がひらけてきたとはいえ、見世物の種は変わらない」ろくろ首など、まったくその通り。見世物小屋の中で女が死んでいる。女一人なら右のあまり怖くない道を行くはずなのに左へ行くのは、連れがあったからだとみる半七の名推理。昔は、通り抜けられた人に浴衣地をくれると言っていたが、通り抜けられないように最後の方は恐ろしく作ってある。どれだけ怖いのか知らないが一度見てみたくはある。
「廻り燈篭」 おかしな話・盗人が捕り方をおっかける。跡目を継いだばかりの若い三甚が無宿の大盗人金蔵を捕まえた、金蔵は自分を捕まえるのは名の知れた捕り方でなければとさかうらみし、牢を抜けたら三甚を殺すと言っていたのを、三甚の女が心配してあちこち逃げ回る。そういった人間模様を指して廻り燈篭に見立てる。
「夜叉神堂」 渋谷長谷寺に清水寺のご開帳があり、奉納の小銭で出来た兜が名物に・しかしその前立ての小判や銀が寺社方に注意され、とりさげることになった矢先に盗まれてしまう。
長谷寺名物の夜叉神堂に参った女から、盗まれた小判のありかは面を治めた箱の底にあったとわかる。夜叉神は腫れ物に貢献あり、そこにおさめてある古いお面を持って帰り治ったら新しい面を奉納する。そこへ、近くの寺の破戒僧が遊ぶ金欲しさに盗んだが、ひどく後悔して戻ってきて落着。夜叉神のたたりとか、なんか全体的にほほえましい。
7月
「地蔵は踊る」
江戸期の民間信仰、茗荷谷の縛られ地蔵にまつわる話。
高源寺の地蔵を拝んだらコロリにやられない、とおおはやり。或る日、その門前に女がくびられていた。流れ者の女、お歌は、参詣客を呼ぶため地蔵の下に穴を掘り地蔵を躍らせていた事実をネタに寺の美僧俊乗をゆすり、関係していた…女は生き残って俊乗がくびつって・ネタは面白いけど後味わるい~
日本のホームズといわれるとおり、理屈がしっかりしてて常に現実、事実に基づいた半七の推理は冴えてるんだけど…何だかイマイチ…、事件のトリック、肝心なとこは全部半七が喋っちゃうので読者は推理に参加する楽しみがあまりないかもなあ…もうちょっと冒険的スリル要素があったほうが読みやすいかも、と、最初は思ったけど、慣れてくると段々半七の語りに引き込まれて、まるで自分が傍らで話しを聞いてるみたいな気分になってくるから面白い。そしてなんといっても江戸風物の描写!!杉浦ヒナコさんが絶賛するのもわかる。
あと、半七爺さんがえらい男前。芝居好きで昔かたぎだけど、家にはランプなんか仕込んで、新しいものも興味たっぷり。いなせだ。声に出して読むのも良い。それにしても綺堂は博学だなあ…
*ネタバレあり・随時増加
4/14
「河豚太鼓」 河豚の皮で作ったでんでん太鼓を手がかりに、行方不明の子を探す。そのころ普及してきたばかりの種痘を恐れて子守の下女が主家の子供を攫い隠してしまう女中の話。
「菊人形の首」 幕末江戸の異人についての話も面白かったけど、管狐を使う狐使いの女が出て来て、江戸期の信仰の一面が見えるのが面白い。
「十五夜御用心」 四人の謎の死骸が寺でみつかる、閲微草堂筆記か元ネタ。綺堂の中国怪談集は持ってるし、彼が中国文学に詳しいのは知ってたけどうまく謎を解いたなあ…というかんじ。新劇の脚本だったものもある、だから文章がなんとなく、硬い割りにあっさりしすぎてるっつうか。内容もなんか短いわりにドラマ性たっぷりというか…
5/7~
「鷹のゆくえ」 遊郭の帰りにお鷹を逃がしてしまった鷹匠を救うため半七がんばる。鳥取りの描写とか、お蕎麦たべるとことか、風俗読み物としても面白い。
「津の国屋」 大店津の国屋をめぐる陰謀。怪談と見せかけて謎解きものというのが無粋だけど、その無粋さがまた良いというか。話しがよく出来ている。幽霊におびえる文字春師匠がかわゆい。
「三河万歳」 約束していた才蔵(万歳の相方)が現れずに困る万歳。サイゾウと万歳って正月限定の契約で、生国がちがくても良かったのかー!それで商売成り立つんだからすごいよな。一年に一度、正月だけ集う…江戸における万歳の仕組みを知った。事件自体よりそっちの話のほうが面白い…
「槍突き」 今で言う通り魔の話だけど武家の息子が女装して犯人をやっつけようとして黒猫を身代わりに置いておくくだりなんかは展開がよめなくて面白かった。
「お照の父」
「向島の寮」
「蝶合戦」 絵面がきれい。南米で蝶が群がり舞う話を思い出した。日本でもあったんだなあ。
「筆屋の娘」 美人姉妹が舌で筆を舐め整えてくれるから繁盛する筆売り屋の話で、トリック自体はバレバレなんだけどなまめかしい情緒が○。
「鬼娘」
「小女朗狐」 いぶし殺された男達。墓を荒らす狐。犯人の幼さがいたいたしい…でもあだ討ちなら大量殺人も許されるんだな、すげえ。
「狐と僧」
「女行者」
「化け銀杏」
・
「雪達磨」 いつになく大雪の江戸、雪だるまの中から死体と南京玉。贋金作りの材料に南京玉が使われるなんて知らなかった。しかしそもそも南京玉のイメージがよくわからない…
「熊の死骸」 火事場に現れた熊から娘を助けた男が、その娘に恋慕して殺す。熊の死骸を盗んだやつらが現れてややこしいことに。熊肝ってやはり高価だったのね。
「あま酒売り」 九州の蛇神の血をひいた女の甘酒売りにであうと、熱を出し死ぬ。その女を連れて江戸にやってきた男が、女の母に狙われ…という話。蛇神の血筋は結婚もままならなかった、以前ゼミで犬神の話をきいたことを思い出した。甘酒の固練りってどういうものか挿絵が欲しい…
「張子の虎」 召し取りの加勢をした遊女がお上から褒賞され有名になる、その女が殺され枕元に張子の虎が・というもの。話の筋からなんとなく復讐ものかな、ということは読めたけど半七鋭すぎ。
「海坊主」 海から現れ生魚を食す奇怪な男の話。実は前科者で島流しにあっていたのを、得意の泳ぎで船から船へ渡り歩いて次第に江戸に近づいた。話しはかなり面白い。江戸時代なら妖怪だと信じてしまうひともいるだろう。
「旅絵師」 この話がこの中じゃ一番ぐっときた。ロマンス活劇仕立て。隠密の話も興味深い。お庭番って一生に一度勤めればいいのかー、とか。隠密で旅絵師に扮して出た男が奥州の大店の娘を救いその一家に世話になるが彼らは隠れキリシタンで、男はまりや観音の絵を描くことを頼まれ・という筋。娘がけなげ。
「雷獣と蛇」 昔の人は雷を恐れたのだなあ・化をに引っかき傷=雷獣に襲われて死んだ、と結論するあたり浅はか・蛇の話しはおまけみたようなもの。蛇玉は怖いけど・・・
「半七先生」 半七の家の「報恩額」由来。手習いに行った少女が先生にしかられ姿を消す、謎は少女の兄の付文にある。おいおい兄ちゃん…といいたくなる…死人が出ないのでほっとした。
「冬の金魚」 冬に温水で生きる金魚を使ったぺてんにまつわる殺人事件。ほんとにこんな金魚いるんだろか…
「松茸」 熊谷から献上ものの松茸を運ぶ男がキセルをかごに刺しておいたことをとがめられ出奔、同郷の大店の娘が江戸に嫁いでるのに出会い、その丙午生まれをたねに脅す。こういったことで出奔してしまうとか、こんなささいなことで離縁されるとかそのへんの時代背景が既に興味深い。
「人形使い」 仇役を演じる人形使い同士が二人ながらに死体に。人形のたたりオチ?半七にしてはおどろおどろしいオチ。
「少年少女の死」 おもちゃの水差しに毒、二人の男の子が死亡した話しと、少女のかどわかし。
「異人の首」 異人の首をちらつかせ商家で攘夷の資金を脅しとる悪党の話。イギリス人ロイドが遊女にいれあげた背景をつきとめた半七、ヨコハマで大活躍。蝋人形の首だったことが判明して落着。
「一つ目小僧」 一つ目小僧の怪異から15両の鶸をだましとられた鳥屋。小僧はは按摩で、そこから犯人一味をあげる。鳥屋ときいてつげ義春の漫画を思い出した。
・
「仮面」 古物商の仮面をめぐる、能役者と若い侍二人の買い手。てっきり詐欺の話かと思っていたらあれれ、と思うようなオチだった。それってありなんだか…
「柳原土手の女」 妖怪探索から、心中へ。醜い娘のための親心に泣ける。
「むらさき鯉」 小石川と牛込の間の御留川ご禁制のむらさき鯉をめぐる話。密かに盗み釣りをした町人のもとに、鯉を返してくださいと女が尋ねてくる。化け鯉の正体は…というお話。これ中国の志怪に似たような話が合った。そっちは論理的なオチはついてない、本物の怪談だったけど。
「三つの声」 これはまっとうな推理ものだった。三人の男が川崎大師にお参りに行く待ち合わせをしているが、一人が死体で見つかる。男の妻が聞いた三つの声を手がかりに、半七の推理がさえる。
「金の蝋燭」 金の芯に蝋を塗った蝋燭を持った女の身投げ。亭主への意趣返し。『権門』賄賂のこと。菓子折りの中の小判に同じ。ほんとにやってたんだな…
「ズウフラ怪談」 Rofle(オランダ語) 遠い人を呼ぶためのラッパ。なまってズウフル、ズウフラへ。江戸の滑稽本「和合人」にも出てくる。これを使って幽霊の声を演じてイタズラしていた男と、不倫の始末に道場のっとりの陰謀。もりだくさんな一品。
「大阪屋花鳥」 吉原の女娼妓、付火で島流しにあっても泳いで帰ってきたというすごいあねさん。この前置きからいきなり浅草の商家の息子と貧乏武士の娘のシンデレラストーリーにうつるのだけど、後でちゃんと話が繋がってるあたりがすごい。花鳥の悪役ッぷり、牢名主っぷりもすごい。いろいろな話が次から次へ出てきて幻惑させられるけど、最後には掌の上で収束してるのが名人芸。
「正雪の絵馬」 江戸時代の絵馬マニアの話。いかな大店の主人とて偽者の絵馬でひっかけられたあげくその絵馬抱えて家出とは、まさに絵馬狂い。それにしても絵馬を盗んでも当時は罪にならなかったのだろうか…いや、今だって罪になるのか知らないけど…
「大森の鶏」 半七、川崎参りの途中鶏に追われる女とでくわす。それが別の殺しにつながって…という話。鶏って人間を識別できるのかな…主人を殺された鶏が、仇の女を覚えていて追い掛け回すなんてことあるんだろうか…半七みたいな稼業のものは信心深かった江戸時代。今の警察官は神頼みなんてしなそうなのに比べると、それでもまだずいぶんと人間らしい。
「妖狐伝」 鈴が森の狐のからくりは南蛮船のアイテムだった。マッチは火の玉、靴ずみで顔をなでるとか、そういうお遊びしてみたいと思う。しかし同名の女と同名の男がお互い相手を間違えるなんてちとくるしすぎるような…ジョージってまた典型的な外人だし・
*石沢英太郎氏の解説が面白かった。清張が半七とホームズを好んでエッセイまで書いてたなんて知らなかったな。
「新カチカチ山」 旗本の家の主人、娘と妾の乗った船が流される。旗本の家の当主が死んだということで、半七が詮議をまかされる。のち、使用人の女と若殿の心中も持ち上がり…
屋敷方の詮議はむつかしい。「武家の屋敷内に鳥羽がひらけていても町方のものが踏み込むことも出来ない」
「新カチカチ山」 旗本の家の主人、娘と妾の乗った船が流される。旗本の家の当主が死んだということで、半七が詮議をまかされる。のち、使用人の女と若殿の心中も持ち上がり…
屋敷方の詮議はむつかしい。「武家の屋敷内に鳥羽がひらけていても町方のものが踏み込むことも出来ない」
「唐人飴」 唐人の格好で飴売りにくる男と、方袖に包まれ切られた片腕。ときわづの師匠文字吉、女ばかり弟子にとっていて貞淑と評判だったが実は「男女」(おめ・いわゆるレズ)だった。腕の方は役者の敵討ち。明治までは鉦をたたいて飴を売りに来る飴売りが多かったらしい、今はもう完全に無くなったなあ。
「かむろ蛇」 あたまがかむろを被ったように黒くなっている蛇のこと。見ると不吉。安政五年、午年のコレラ流行。放蕩で感動された兄が弟の店ののっとりをたくらむ。コレラで死んだ年造が生き返って暗躍する
「幽霊の見世物」 半七「世がひらけてきたとはいえ、見世物の種は変わらない」ろくろ首など、まったくその通り。見世物小屋の中で女が死んでいる。女一人なら右のあまり怖くない道を行くはずなのに左へ行くのは、連れがあったからだとみる半七の名推理。昔は、通り抜けられた人に浴衣地をくれると言っていたが、通り抜けられないように最後の方は恐ろしく作ってある。どれだけ怖いのか知らないが一度見てみたくはある。
「菊人形の昔」
「蟹のお角」 菊人形の昔 に出てきた蟹の彫り物をした女のとりもの話。外国人夫婦殺害事件。犬の死体が川に浮ぶ。半裸写真のモデル・復讐譚。
6/30
「川越の次郎兵衛」 武州川越、くりよりうまい13里ってここ…?
東照宮のお使い、と名乗り城内本丸に現れた謎の男。大店の若旦那の取り巻きが「本丸で天下を寄越せと言ったものに五十両」という遊びを開発したというオチ。「とかくに変わったことをやってみたがる。江戸の人気(じんき)がそんなふうになったのも、つまりは江戸の滅びる前兆」という半七の言葉はうなずける。こういう若者はいまとかわんないなー。
「蟹のお角」 菊人形の昔 に出てきた蟹の彫り物をした女のとりもの話。外国人夫婦殺害事件。犬の死体が川に浮ぶ。半裸写真のモデル・復讐譚。
6/30
「川越の次郎兵衛」 武州川越、くりよりうまい13里ってここ…?
東照宮のお使い、と名乗り城内本丸に現れた謎の男。大店の若旦那の取り巻きが「本丸で天下を寄越せと言ったものに五十両」という遊びを開発したというオチ。「とかくに変わったことをやってみたがる。江戸の人気(じんき)がそんなふうになったのも、つまりは江戸の滅びる前兆」という半七の言葉はうなずける。こういう若者はいまとかわんないなー。
「廻り燈篭」 おかしな話・盗人が捕り方をおっかける。跡目を継いだばかりの若い三甚が無宿の大盗人金蔵を捕まえた、金蔵は自分を捕まえるのは名の知れた捕り方でなければとさかうらみし、牢を抜けたら三甚を殺すと言っていたのを、三甚の女が心配してあちこち逃げ回る。そういった人間模様を指して廻り燈篭に見立てる。
「夜叉神堂」 渋谷長谷寺に清水寺のご開帳があり、奉納の小銭で出来た兜が名物に・しかしその前立ての小判や銀が寺社方に注意され、とりさげることになった矢先に盗まれてしまう。
長谷寺名物の夜叉神堂に参った女から、盗まれた小判のありかは面を治めた箱の底にあったとわかる。夜叉神は腫れ物に貢献あり、そこにおさめてある古いお面を持って帰り治ったら新しい面を奉納する。そこへ、近くの寺の破戒僧が遊ぶ金欲しさに盗んだが、ひどく後悔して戻ってきて落着。夜叉神のたたりとか、なんか全体的にほほえましい。
7月
「地蔵は踊る」
江戸期の民間信仰、茗荷谷の縛られ地蔵にまつわる話。
高源寺の地蔵を拝んだらコロリにやられない、とおおはやり。或る日、その門前に女がくびられていた。流れ者の女、お歌は、参詣客を呼ぶため地蔵の下に穴を掘り地蔵を躍らせていた事実をネタに寺の美僧俊乗をゆすり、関係していた…女は生き残って俊乗がくびつって・ネタは面白いけど後味わるい~
下に穴を掘っていかさまをするからくりはばくちの「穴熊」。
「二人女房」
小金井の桜から府中の六所明神へ。半七が六所明神を参ったさい、くらやみ祭り見物で出会った一組の男女が、女の身請けの金を騙され奪われ心中した。そこから幽霊がでるという。一方和泉屋の女房が失踪し…駆け落ち詐欺の話。
暗闇祭りや府中の大国魂(六所明神)の話が面白い。「森のこずえに住む鷺や鵜が寒三十日の間はみんなどこかへ飛び去って、寒が明けると帰ってくる、一日もたがわないのが七不思議のひとつ」
その鳥が魚を落とすので空から魚が降ってくる・とか。
「薄雲の碁盤」
「二人女房」
小金井の桜から府中の六所明神へ。半七が六所明神を参ったさい、くらやみ祭り見物で出会った一組の男女が、女の身請けの金を騙され奪われ心中した。そこから幽霊がでるという。一方和泉屋の女房が失踪し…駆け落ち詐欺の話。
暗闇祭りや府中の大国魂(六所明神)の話が面白い。「森のこずえに住む鷺や鵜が寒三十日の間はみんなどこかへ飛び去って、寒が明けると帰ってくる、一日もたがわないのが七不思議のひとつ」
その鳥が魚を落とすので空から魚が降ってくる・とか。
「薄雲の碁盤」
首を切られても蛇から主人を守った猫に由来する碁盤に、女の生首が乗ってさらされていた。
顔のあばたを手がかりに探す・相撲取りが、ごひいきのだんなの恥をそそぐために妾の女を殺した・という落ち。そういや相撲取りも武士階級だっけ…
そして、あばたをけすため朝晩苦心して化粧していたっていうお俊はえらい。江戸期は化粧のしまつがよいというのは美徳だったのな。
顔のあばたを手がかりに探す・相撲取りが、ごひいきのだんなの恥をそそぐために妾の女を殺した・という落ち。そういや相撲取りも武士階級だっけ…
そして、あばたをけすため朝晩苦心して化粧していたっていうお俊はえらい。江戸期は化粧のしまつがよいというのは美徳だったのな。
「白蝶怪」
正月深夜に白い蝶をみた娘が死に、次々に不吉なことが起こる。
不義密通、幸四郎の女、前科もちのお近が、夜中に白い蝶を飛ばして千人を驚かせば心願成就と
不義密通、幸四郎の女、前科もちのお近が、夜中に白い蝶を飛ばして千人を驚かせば心願成就と
いう邪法を行なっていた。 *犯罪は旗本屋敷に逃げ込めば、町方は詮索できない。
名前だけは中学の頃から知ってて、かつあちこちで勧められてて、でもなんだかちゃんと読む気になれなくて過ごしてきてたんだけど思うところあって読んでみることにした。実は以前何回か読んでみたことはあったんだけど、どうにも面白くなかったんだよね…綾辻さんや我孫子さんのほうが、好き。
それでも巷で人気があるらしいと聞いて、一応読んでおこうかなと。いろいろ自分にも余裕ができたしね。
*随時追加中
先に全体の感想。まず、ある一定量の作品を世に送り出してるのは素晴らしいと思う。量をこなすミステリ作家は貴重。トリックの作り方とか文章の書き込み方を見ても、作者はまじめな人だなあと思った。見せ方がまじめだから、読みなれてくるとわりといろいろ、予想しやすい。私的な感想だけど、短編のほうがよいようにおもう。長編になるとなんとなく読むのが辛い…ものすごく巧いとか読ませるとかいう文章ではないだけに…ぐいぐい引き込むような筆力というよりは端正できれいめ、平坦な文章だから、長いのは正直飽きた。大体三分の一までに事件が起こってないとほんと辛い…今のところ、半分ほど読んで犯人(やトリック)がわからなかったら大体最後までわかんない傾向。
しかしもちろん、文章の長所短所は表裏一体だから、こういう文章が好きな人も居るよね。文章に癖がなく、難解さもなく、さくっと読めるところは初心者にも安心してお読みいただけるかんじ。
●「雨天決行」 女流エッセイスト殺し。「ウテン」=ヴ。はわかんなかったけど犯人は当たった。この作者フェアだからちゃんと読者に謎解きさせてくれるのが優しい、けどあの短さに容疑者つめこんでもほんとにすぐわかる。でもって動機は弱い=コナン化。それよりも後書、有栖川氏の相合傘の相手が助教授だったら本気でヒく。
それでも巷で人気があるらしいと聞いて、一応読んでおこうかなと。いろいろ自分にも余裕ができたしね。
*随時追加中
先に全体の感想。まず、ある一定量の作品を世に送り出してるのは素晴らしいと思う。量をこなすミステリ作家は貴重。トリックの作り方とか文章の書き込み方を見ても、作者はまじめな人だなあと思った。見せ方がまじめだから、読みなれてくるとわりといろいろ、予想しやすい。私的な感想だけど、短編のほうがよいようにおもう。長編になるとなんとなく読むのが辛い…ものすごく巧いとか読ませるとかいう文章ではないだけに…ぐいぐい引き込むような筆力というよりは端正できれいめ、平坦な文章だから、長いのは正直飽きた。大体三分の一までに事件が起こってないとほんと辛い…今のところ、半分ほど読んで犯人(やトリック)がわからなかったら大体最後までわかんない傾向。
しかしもちろん、文章の長所短所は表裏一体だから、こういう文章が好きな人も居るよね。文章に癖がなく、難解さもなく、さくっと読めるところは初心者にも安心してお読みいただけるかんじ。
*以下トリックネタバレ・随時追加・●は犯人もしくはトリックが当たったもの
『ペルシャ猫の謎』 感想文捜索中
『ロシア紅茶の謎』 感想文捜索中
『ペルシャ猫の謎』 感想文捜索中
『ロシア紅茶の謎』 感想文捜索中
●『ブラジル蝶の謎』 天井いっぱいに蝶の羽。綺麗。携帯電話トリックは予想してたものと多少違ったけど、まあ当たったことにしておく。犯人はわかったし。教授が探偵をやってることについての回答「人を殺したいと思ったことがあるから」、このあたりに至るところの文章が、流れとしてはあまり・・・短編じゃ難しいのかな。このシリーズ読んだこと無い人が之だけよんでも「あ そう」で終わりそう、長編にとっておけばよかったのに。
→訂正。ちゃんと長編で扱われてた(『46番目の密室』)。でもこれってやっぱりシリーズ通読してる人でないと入り込めないんじゃ…
→訂正。ちゃんと長編で扱われてた(『46番目の密室』)。でもこれってやっぱりシリーズ通読してる人でないと入り込めないんじゃ…
「妄想日記」 魔よけグッズ…なんか…そうだとしかおもえないけどまさかそれを?って思ってるとほんとにそれが重要だったりしてあなどれん…つか何を当てればいいのか読めなくて参った。あんな意味深な文字とか出さなくていいじゃんー。いいじゃんー。
「彼女か彼か」 あたしは女なのでトリックの謎がまったく思いつかなかったが親父に言ったら「あたりまえだろ」ってゆわれた。ヒゲ。
●「鍵」 犯人はわかったけど、何の鍵かっていうとこでやっぱり足踏みした…エロスを感じてよい。しかし今の時代まだあるんだろうか?
「人食いの滝」 トリックは本格派。一番読み応えがあった中篇。長靴のところなんて手を叩いて納得した。
「蝶々がはばたく」 蟹食べに行きたくなった…アレルギーで食べれないけど…いわゆるバタフライ効果のお話ね、でもこれ正しいミステリではないんじゃ…。作家さんはいいかんじにボケてるのだがそのあたりを突っ込みつつ読むのが正しいのかもしれないとこれを読んで思った。ていうかこの探偵と助手は仲がいいなあ。
●「白い兎が逃げる」 ストーカーが殺される。時刻表ものはやたら気合入れて読まねばならないので嫌い…私的にトリック云々よりもすべて兎と亀のイメージがちりばめられてるところに感心した。そしてサンドイッチを全部食べちゃう「私」に大笑いした。なんだろう、トリックがなんのかんのでなくて何か途中で「あ この人が犯人だ」っていうのがわかっちゃうんだけど…
●「不在の証明」 双子の弟が殺され、兄に容疑がかかるがその時刻兄は船に乗っていて…犯人はこの人しか居ないだろうと思ってたらその人だった、これはミスリードだなあと思ってたから最初から船の時間とかはガン無視して読んでたのが幸いした。そういやミステリに双子ものって多いな・・・
「地下室の処刑」 動機の斬新さは、確か。でもミステリじゃなくて、犯罪実録ものとかそういうのでなんかこういう〔お試し殺人〕話は読んだこと、ある気がする…ブランヴィリエ公爵夫人とかあのへんか?でもそうなると愉快犯に近いか…
「比類の無い神々しいような瞬間」 ダイイングメッセージの不確実性。表題はエラリークイーン「Yの悲劇」からの引用、死の直前は比類の無い神々しいような瞬間だから何かとんでもないことを考え出すとかなんとか。そう、誰にでも分かるようなメッセージを残すよりは特定の人間にしかわからない言葉で復讐を示唆する、それが合理的。しかし香ってなんじゃ。わかんねーよ。全体的に上方文化中心な気がする。。そして紙幣の謎は…もうそろそろ賞味期限切れるだろうな…こういう時事ネタってなんかずるい。
●『スウェーデン館の謎』 福島に取材にやってきた作家の有栖川氏は、ペンションの隣のスウェーデン館と呼ばれる童話作家の住む洋館で奇怪な密室殺人に出会い、助教授を呼ぶ。足跡トリック。
短的に言うと読みづらい。短編ばかり読んでたからかも知らんけどこのトリックならも少し縮めてもよかったんで無いかな。復讐とか人間関係とかも少しデモーニッシュに作ってもいいと思う。解説の宮部みゆきさんの文章が面白かった。
●『マレー鉄道の謎』 かつての友人、マレー華僑の大龍が支配人をするキャメロンハイランドのホテルへ向かう有栖川氏と助教授。そこで起こる密室殺人、目張りされた密室で死んでいた男の謎。
c・ハイランドは行ったこと無いけど金持ちか欧米人の巣窟というイメージ。どうせあたしはバックパッカー。此処最近こつをつかんできて、この人の作品は冒頭に必ず事件の本質部分が隠されてるので、冒頭の事件や人物を注意深くみておけば大体最後まで読まずとも犯人が判るようになってきた。トリックが分かるのではないとこが悲しいけど、まあ人間関係や動機がわかれば大体犯人もあてられるよね。マレーに数回行ったことある人物としてはマレー描写に今更新しさを覚えないし、マレー語について??なとこもあったし(マレー語は英語表記だから一見して意味不明な言葉ではないと思うんだけど…)、…松本清張がキャメロンハイランドを舞台に小説書いてるのは知らなかったから読んでみたいと思ったな。『熱い絹』ね。覚えておこう。
●『英国庭園の謎』 暗号文。謎を解く根気はなかったけど犯人はわかった。うーんドラマとしてはかなり後味わるいなこれ。。無意識かもしれないけど作者が謎の確信に迫るところって、けっこうリキ入れてることがある…「ここはおかしいよ」「ここは伏線ですよ」っていうフラグがわかりやすい、それはトリックの難解さではなくて文体や描写の癖みたいな…だからいくつか読んでると段々わかってくるんかな…
●「雨天決行」 女流エッセイスト殺し。「ウテン」=ヴ。はわかんなかったけど犯人は当たった。この作者フェアだからちゃんと読者に謎解きさせてくれるのが優しい、けどあの短さに容疑者つめこんでもほんとにすぐわかる。でもって動機は弱い=コナン化。それよりも後書、有栖川氏の相合傘の相手が助教授だったら本気でヒく。
●「竜胆紅一の疑惑」 売れっ子作家のスランプと殺される、という疑惑。これも犯人まるわかりだった。うーんもうすこし犯人をさりげなく登場させてたらよかったのに。
「三つの日付」 何を当てればいいのかという…日付ネタは古くなるとダメだな。1992年ってあたしまだ小学生だよ…メキシコのカレンダーは3/21が祝日だというお話し、アミーゴとか言う助教授が不気味。お前はそんなキャラじゃない。
「完璧な遺書」 作家殺し(やけに多いな)の隠蔽に遺書を偽造したがワープロの変換機能の特殊性からミスをする。狂言回しの有栖川氏が名前しか出てこないからか、犯人視点で書かれてる。しかしこの機能をほとんど使わないあたしからしたらあんまり現実味が…みんなそんなに使ってるのかなあ変換機能…
「ジャバウォッキー」 関西に住んでないとでてこないよ!!>明石天文台 土星ネタも古いからわかんない。だからさー時事ネタはさー。路線もわかんないし…というわけでなにやら途中までは真剣に謎を解こうと思ってたけどハンディがあるのでやめた。言葉遊びはまあ面白かったかな。オチも小粋だし全体的に動きがあってテンポよい、この作者はあまり修辞なんか気にせずこのくらい紋切りのほうが良い気がする。犯人、山沖も異常なキャラがよかった。
『乱鴉の島』 だから助教授と有栖川氏は仲が良すぎてキモいってば!四六時中一緒に居るんじゃなかろか。
烏と鳥の間違いで黒根島にたどり着いてしまった二人。島には神秘の詩人を囲む集いが。場違いな子供二人、クローン人間研究、あきらかに某IT企業社長を髣髴とさせるオタク社長ハッシーを含む二人の犠牲者。
吊橋効果と子供の意味について、詩人海老原とその企みについてはぴんときたけど、今回は犯人がまったくわからなかった。理由は、あたしはこれを推理ものとして読んでなかったから。負け惜しみじゃないよーだってこれSFだもん絶対。助教授とアリスじゃなくてもぜんぜん成り立つ、っていうかむしろそうしたほうが面白いんじゃないだろか。ミダスの黄金の指の挿話とか小粋でおもしろい作りなんだけどなあ。各章の冒頭、後半は「猿の手」やらボルヘスやらアトム、全部「生まれ変わり」の示唆じゃん・とか思っていたので何かもっととんでもない秘密や謎があるのかと思っていたらあたしの予測範囲内だったのでちょっとがっかりした。
『絶叫城殺人事件』
●「絶叫城殺人事件」 絶叫城ってなんじゃいと思ってたらゲームの題名だった。。ナイト・プローラー。
5/19 追加
『幽霊刑事』 もと日立企画イベントの推理劇だったそう。探偵役の刑事が最初から幽霊で登場、助手が霊媒刑事。うん期待に違わぬギャグっぷり。本文もね。でも霊媒刑事がイタコの血筋だから霊が見えるって…恐山まで行ってきた人間として言わせて貰うと安 易 過 ぎ 。そんな体質だったら他にもいろんな霊が見えてたはずだぜ?
まあそんなツッコミはともかく・主人公を殺した犯人が密室で殺されちゃう、果たして黒幕は!?ってんでその謎を解くんだが…うおいラスト近く展開速すぎね?幽霊となっての感慨とか不安とかそんなんもっと短くてよかったんでね?主人公の恋人がけなげ。あと助手の早川くんがいい人すぎる。で 肝心の謎解きだけど、んー係長が本部のスパイだっつうのははじめのほうでわかってたけどそれは本筋の謎と関係ないとこで展開してたし 言動とかからなんとなくこいつが犯人かなーとは思ったものの、長いので途中で推理に飽きてしまった…麻薬が絡んでたのね、伏線生きてるわー。こうなると劇のほうを見たかったな。
『幻想運河』 バラバラ殺人、ヤヌスの両面、ドラッグを使った証人工作。うん 今んとこ 長編だとこれが一番かも。もう少し縮めてくれればの話だけど。しっかし言葉遊び好きだなーこの作者。この作品の中にでてくるアソビは、印刷まで凝っててあたしごのみのつくり。オランダのアムスと大阪、どちらも以前一度だけ行ったことがあるので一応イメージはわかった。ドルーズとガタリのミルプラトーが暗示的に出てきてくれて、いいかんじに学術的なのも好み。そんで、主人公のルポライターが書いた文中文の小説の、麻酔でバラバラ殺人トリックが秀逸。こええし迫力あるし狂おしい。あたしならもったいなくてこの話だけで書いちゃうけどな、正統派ミステリ作家にとっては邪道だったのか知らん。
んーでもやっぱり作中人物の感情がさらっとしすぎてて、やっぱどうにも動機が弱いような…予知の話とかもっとリアリティ持たせればなあ。
*具体的にどういうとこがジャマかというとさあ、キーワード「ヤヌス」だからって担当刑事の娘を双子にしなくてもいいじゃんとか。そういう小細工っぽいのがなんか…いただけないのです。あとドラッグでトんでる描写とか。
『月光ゲーム』 これを一番最初に読むんだった、と後悔した。ある作家の作品を、少しでも分析的に読む覚悟なら・作家がどの順番で書いたかを意識する原則を忘れていた。それにしてもデビュー作だけあって気合は言ってるなあ。。見事にミスリードに引っかかって、サリーが犯人だと思い込んでたので作者からの挑戦状の辺りですっかり戦意喪失してた。そして推理として読むとやはり冗長で・も少し短くならんかといらいらした、けど現役学生の頃に書いたときは、これ短編だったらしい。何度か書き直したみたいだけど・短編のほうを読みたいなー。とりあえず冒頭中井英夫が出てきた辺りでよし、と拳を握る。ミステリしりとりとか乱歩やら横溝のオマージュ、知ってる人ならにやりとできる会話が楽しめた。そんでクンダバファーはわからんかったけどグルジェフは、あれラヴクラフトあたりが扱ってなかったか?違ったか?
今回最初の章で確信してたのはあれだ、アリスが失恋するだろうということだけだ。
5月末
『孤島パズル』 推理小説研究会に加わった新しい女性メンバー、有馬マリアの伯父の別荘へバカンスに招待された江神さんとアリス。時価数億のダイヤを巡るパズル解き、三年前、マリアの従兄弟英人の死を巡る遺恨、やがて起こる密室殺人。凶器のライフル、モアイの向き、自転車の数。
わー 今回いろいろわかんなかった!でも謎解きはなるほど、納得いくんだよねー。あたし英人の事件を途中から忘れてた…。学生編の方が凝ってるし難しいような気がする・・・そんで、学生辺の方が犯人に優しい。
『ジュリエットの悲鳴』 短編集。わりと上質、というか面白かった。助教授と作家シリーズよりだんぜん。「裏切る目」は中井秀夫の短編を思い出したな、しかし推理小説にはいったいどんだけ色盲の話がでてくるんだ…これは片目だけという意外性の話。映像的につつじの花が突然浮かび上がるというのはやはりキレイ。インターミッションの短編もまあまあ。「パテオ」は推理じゃないけどなかなかこじゃれた一品。笑える。表題のジュリエットのなんたらはちょっとな…いまいち。あたしこのひとの青春小説描写はあまり好きではない。
やはりなんといっても「登竜門が多すぎる」だな!いやこれはすごい、ほんとに。これだけのためにこの本を欲しいとすら思った。ネーミングセンス・推理小説の知識を問われるなあ。後書き他の作家に褒められたとゆってたがあたしは冗談抜きでこれがこのひとの短編では最良だと思う。
●『ダリの繭』 わーい当たった、しかもトリックの部分も!これは珍しい。。でもどう考えても、あの髭を剃った理由はそうとしか考えられないし凶器に指紋がついているというのもそう解釈するしかない、ていうかあたしが以前考えてた推理ものに近時しててちとへこんだ。「殺そうと思っている人物が殺されてしまう」、だからこそ殺した人間のアリバイは完璧になる。ダリはともかくシュルレアリスムは好きなので今回は読んでていろいろ映像が浮んだ。鎌倉のダリ博物館行きたいなー。
6/5
『46番目の密室』 教授と作家シリーズ長編第一作なのかな?私的に某受賞作の長編よりもこっちのほうが断然良いと思った。ミステリネタの豊富さやアンチミステリ論議とか…マニアックだけどこうゆうのすき。トリックはともかくとして犯人当ては惜しいとこまでいった、前半三角関係の描写がやたら強調されてていかにも怪しいな、てのは感じてたけど、でも動機から言ったらいまいち薄いよなーと思ってたらまさかオチが男色とは…そうくるとは…とりあえずこれを書いた時点では作者自身あんまりゲイのことよくわかってなさそうだ。あんな重大な事実をいきなり種明かしのシーンでぽんと置かれてもねえ…も少し匂わせて欲しかったナー。このへん乱歩とか巧そうだ。
『暗い宿』 宿にまつわる短編集。
「暗い宿」 いくらシリーズだからって、アリス、事件に遭遇しすぎ。廃墟愛好者というとこは親しみわいたけど。自分が宿泊した宿に死体が埋まってて、でもそれはカモフラージュで…みたいな。短編だけあって、最初から犯人バレバレで謎要素は薄いしさくさく読んだ。
「ホテル・ラフレシア」 すげえ、名前からして猟奇、と思って読んだらぜんぜん猟奇じゃなくて、ホテルのミステリーイベントにやってきた助教授とアリスと心中事件。これも謎って言うよりサスペンスだな。ドラマチックではあったけどミステリではない。むしろイーグルスのホテル・カリフォルニアってそういう曲だったのか、みたいな・・・
●「異形の客」 アリス、温泉宿で事件に遭遇。だから事件あいすぎ。今回はわかりやすかったなー ひきこもりの大学生が殺される、友人が犯人。通り魔事件の隠蔽が真相だったんだけど、トリックよりは状況証拠というか、供述がだいぶあやしかった。たまにはこういうわかりやすいのがあると和む。
「201号室の災厄」 火村教授の災難。ロックスターの殺人にたまたま部屋を間違えた教授がまきこまれる。ま、苦しいトリックだなーと思ってたら案の定…ミステリではないなこれ。トリック捏造。
『山伏地蔵坊の放浪』 スナック「えいぷりる」常連の人々に、「さすらい人の夢」(ボヘミアン・ドリーム)というカクテルが好物の山伏が語るミステリ譚。語り手は「ぼく」ビデオショップオーナー青野良児。物語の冒頭にある山伏の解説が秀逸だった。勉強になる!!全体として小粋で洒脱。続き出ないかな~
「ローカル線とシンデレラ」 ご当地アイドルを救え!みたいな。クリスティのそして誰もいなくなったみたいな、乗客全員が共犯オチ。
「仮想パーティーの館」 仮想パーティーに紛れる山伏。バットマンとダースベイダーは間違えない。いくらなんでも。ゆえにわかんなかった。このトリックはありか・・・・?
「崖の教祖」 新宗教の教祖が爆殺される。話の内容的にとてもなんというかなじみが深かった。
●「毒の晩餐会」 遺産相続と隠し子。わかりやすい。どう考えても本人の服毒だろ。
●「死ぬときはひとり」 ヤクザの自殺。保険金詐欺。
「割れたガラス窓」 トリュフの晩餐に招待された山伏。割れたガラスによる犯行時刻偽装トリック、防弾ガラスがキー。しかしあたまのわるいあたしにはこのトリックはあまりぴんとこなかった。それよりも世界三大珍味が思い出せなくて気になった。トリュフ、フォアグラ、キャビアね。
●「天満博士の昇天」 特許泥棒の博士が殺される。うん、犯人はやつしか居ないと思っていた。トリックはともかく文章の書き方から。
7月追加
『朱色の研究』
紀州は行きたいと思ってたとこなのでちょうど勉強になった。太陽崇拝の話とか。
「夕焼け」キーワードに熊野、フダラク信仰まで出てくるのはよかった。中上健次の名も出てくるし、どうせ二上山だすなら折口しのぶの『死者の書』を暗示させても良かったんではー。
トリックは…①マンションの謎は分かりやすかったけど、②影の話はあんまり…三つの事件が繋がってるというのにリアリティがもてなくて、なぜかというとそれはやっぱり動機の部分に?という点があるからだなー。
アリスは共感してたが、片思いのオレかっこいい、みたいなのって正直…高校生くらいまでにしておこうぜ。そこまで自分を追い詰めるって・若干文学的過ぎてだめ、「若きウェルテル」みたような繊細な男性の心はようわからんわ。
せっかく文学にするんなら全編徹底的にやって、ペダンチックにしちまえばいいじゃんーって思う。けどある意味でキャラクター小説だからな、難しいのかな…
『作家小説』 作家をテーマにした小説短編集。謎解き要素なし。
もう返しちゃったしあんまり覚えてない、純文的なものからホラーまで、
「ライティング・マシーン」はこええかな。書かなきゃ死ぬ、ってかんじがでてた。
8月追加
『スイス時計の謎』
「あるYの悲劇」
Y → ↓の書き損じ。犯人の出現パターンが従来の正等パターンと異なって、犯人が突然出てくるが、わかりやすかったしダイイングメッセージのトリックも面白い。平面ではなく三次元。山崎=やまもと。
「シャイロックの密室」
犯人の独白から始まる。トリック重視、なのだから犯人の情報をもう少し欲しかった。磁石と閂のスライド。
「スイス時計の謎」
高校のエリート五人組同窓会メンバーの一人が殺され、時計の破片が落ちていた。その時計は五人が特別に作ったもので…時計にイニシャルを彫ったかどうか・徹底的にロジック中心の謎とき。地味…
わたしこういうの苦手だわー。そしてアリス「美少女」連呼されすぎ。
『モロッコ水晶の謎』
「推理合戦」
和んだ。推理するまでもないけどこういう掌編たくさん読みたい。キャラもの+ミステリーなんだからファンサービスにこういうの増えてもいいと思う。
『絶叫城殺人事件』
「黒鳥亭殺人事件」 共通の友人宅へ向かう助教授と作家。そこは、以前夫が妻を殺したいわくつきの家であり、またつい先日井戸から死体が発見された場所だった…友人の小さな娘と質問ゲーム「二十の扉」に興じる作家はほほえましい。グリム童話が謎解きの鍵になってラストはアンファン・テリブル風。いや…何をどう当てればいいのかの部分でまず挫折してた…二十の扉のほうはなんとなくわかったんだけどなー。
●「壺中庵殺人事件」 偽装縊死。この手のトリックはあまり好きではない。展開速い。例によってカンで犯人はあたった、容疑者が絞られてる話だと当てやすいな。
「月宮殿殺人事件」 サボテンがキー。フランスの郵便配達夫シュヴァルの話なんかも出てて、なかなかしゃれてるなあ、というのが感想。なんかまったり。
「雪華楼殺人事件」 鉄筋コンクリートの建物で人が落下し、死んだ事件。恋人だった女の子の描写がいわくありげだったけどそう繋がるのかー、いやこれ…つながってるんか?と。なんつうかこの人の文章に純文的な描写はあんまり向いて無いような気がするんだ…申し訳ないけど陳腐に見える…
「紅雨荘殺人事件」 映画の舞台にもなった紅雨荘で化粧品会社の元社長が殺され、三人の子と従姉妹に嫌疑。冒頭のおもわせぶりなシーンがなにかにつながるかと思ってたら単に映画の描写だった…この作家さまの感性に何か共感するものを感じる。あたしもなにみても泣くからな…。で 結果的に複数犯だったのかー これはわからなかった、一番怪しくなさそうな人が怪しいと思ってはいたけど…それはカンであって推理ではない。
●「絶叫城殺人事件」 絶叫城ってなんじゃいと思ってたらゲームの題名だった。。ナイト・プローラー。
これで、事件の鍵を握るマニアックな人気ゲームとやらに現実感があったらな…あんまり面白そうに思えないんだ…。ミスリードや伏線はきちんと書かれてるし途中まで読んで犯人及び動機の推理はほぼ当たった、ラスト、犯人の独白はなかなか「ありえそう」でコワイ。
この本の短編はいろいろ凝ってるけどあたしは月宮殿が一番好きかなー。まっとうな推理ものでないところ、衒学的なとこ、無機質であたたかみのあるテンポなんかが好きなので。
5/19 追加
『幽霊刑事』 もと日立企画イベントの推理劇だったそう。探偵役の刑事が最初から幽霊で登場、助手が霊媒刑事。うん期待に違わぬギャグっぷり。本文もね。でも霊媒刑事がイタコの血筋だから霊が見えるって…恐山まで行ってきた人間として言わせて貰うと安 易 過 ぎ 。そんな体質だったら他にもいろんな霊が見えてたはずだぜ?
まあそんなツッコミはともかく・主人公を殺した犯人が密室で殺されちゃう、果たして黒幕は!?ってんでその謎を解くんだが…うおいラスト近く展開速すぎね?幽霊となっての感慨とか不安とかそんなんもっと短くてよかったんでね?主人公の恋人がけなげ。あと助手の早川くんがいい人すぎる。で 肝心の謎解きだけど、んー係長が本部のスパイだっつうのははじめのほうでわかってたけどそれは本筋の謎と関係ないとこで展開してたし 言動とかからなんとなくこいつが犯人かなーとは思ったものの、長いので途中で推理に飽きてしまった…麻薬が絡んでたのね、伏線生きてるわー。こうなると劇のほうを見たかったな。
『幻想運河』 バラバラ殺人、ヤヌスの両面、ドラッグを使った証人工作。うん 今んとこ 長編だとこれが一番かも。もう少し縮めてくれればの話だけど。しっかし言葉遊び好きだなーこの作者。この作品の中にでてくるアソビは、印刷まで凝っててあたしごのみのつくり。オランダのアムスと大阪、どちらも以前一度だけ行ったことがあるので一応イメージはわかった。ドルーズとガタリのミルプラトーが暗示的に出てきてくれて、いいかんじに学術的なのも好み。そんで、主人公のルポライターが書いた文中文の小説の、麻酔でバラバラ殺人トリックが秀逸。こええし迫力あるし狂おしい。あたしならもったいなくてこの話だけで書いちゃうけどな、正統派ミステリ作家にとっては邪道だったのか知らん。
んーでもやっぱり作中人物の感情がさらっとしすぎてて、やっぱどうにも動機が弱いような…予知の話とかもっとリアリティ持たせればなあ。
*具体的にどういうとこがジャマかというとさあ、キーワード「ヤヌス」だからって担当刑事の娘を双子にしなくてもいいじゃんとか。そういう小細工っぽいのがなんか…いただけないのです。あとドラッグでトんでる描写とか。
『月光ゲーム』 これを一番最初に読むんだった、と後悔した。ある作家の作品を、少しでも分析的に読む覚悟なら・作家がどの順番で書いたかを意識する原則を忘れていた。それにしてもデビュー作だけあって気合は言ってるなあ。。見事にミスリードに引っかかって、サリーが犯人だと思い込んでたので作者からの挑戦状の辺りですっかり戦意喪失してた。そして推理として読むとやはり冗長で・も少し短くならんかといらいらした、けど現役学生の頃に書いたときは、これ短編だったらしい。何度か書き直したみたいだけど・短編のほうを読みたいなー。とりあえず冒頭中井英夫が出てきた辺りでよし、と拳を握る。ミステリしりとりとか乱歩やら横溝のオマージュ、知ってる人ならにやりとできる会話が楽しめた。そんでクンダバファーはわからんかったけどグルジェフは、あれラヴクラフトあたりが扱ってなかったか?違ったか?
今回最初の章で確信してたのはあれだ、アリスが失恋するだろうということだけだ。
5月末
『孤島パズル』 推理小説研究会に加わった新しい女性メンバー、有馬マリアの伯父の別荘へバカンスに招待された江神さんとアリス。時価数億のダイヤを巡るパズル解き、三年前、マリアの従兄弟英人の死を巡る遺恨、やがて起こる密室殺人。凶器のライフル、モアイの向き、自転車の数。
わー 今回いろいろわかんなかった!でも謎解きはなるほど、納得いくんだよねー。あたし英人の事件を途中から忘れてた…。学生編の方が凝ってるし難しいような気がする・・・そんで、学生辺の方が犯人に優しい。
『ジュリエットの悲鳴』 短編集。わりと上質、というか面白かった。助教授と作家シリーズよりだんぜん。「裏切る目」は中井秀夫の短編を思い出したな、しかし推理小説にはいったいどんだけ色盲の話がでてくるんだ…これは片目だけという意外性の話。映像的につつじの花が突然浮かび上がるというのはやはりキレイ。インターミッションの短編もまあまあ。「パテオ」は推理じゃないけどなかなかこじゃれた一品。笑える。表題のジュリエットのなんたらはちょっとな…いまいち。あたしこのひとの青春小説描写はあまり好きではない。
やはりなんといっても「登竜門が多すぎる」だな!いやこれはすごい、ほんとに。これだけのためにこの本を欲しいとすら思った。ネーミングセンス・推理小説の知識を問われるなあ。後書き他の作家に褒められたとゆってたがあたしは冗談抜きでこれがこのひとの短編では最良だと思う。
●『ダリの繭』 わーい当たった、しかもトリックの部分も!これは珍しい。。でもどう考えても、あの髭を剃った理由はそうとしか考えられないし凶器に指紋がついているというのもそう解釈するしかない、ていうかあたしが以前考えてた推理ものに近時しててちとへこんだ。「殺そうと思っている人物が殺されてしまう」、だからこそ殺した人間のアリバイは完璧になる。ダリはともかくシュルレアリスムは好きなので今回は読んでていろいろ映像が浮んだ。鎌倉のダリ博物館行きたいなー。
6/5
『46番目の密室』 教授と作家シリーズ長編第一作なのかな?私的に某受賞作の長編よりもこっちのほうが断然良いと思った。ミステリネタの豊富さやアンチミステリ論議とか…マニアックだけどこうゆうのすき。トリックはともかくとして犯人当ては惜しいとこまでいった、前半三角関係の描写がやたら強調されてていかにも怪しいな、てのは感じてたけど、でも動機から言ったらいまいち薄いよなーと思ってたらまさかオチが男色とは…そうくるとは…とりあえずこれを書いた時点では作者自身あんまりゲイのことよくわかってなさそうだ。あんな重大な事実をいきなり種明かしのシーンでぽんと置かれてもねえ…も少し匂わせて欲しかったナー。このへん乱歩とか巧そうだ。
『暗い宿』 宿にまつわる短編集。
「暗い宿」 いくらシリーズだからって、アリス、事件に遭遇しすぎ。廃墟愛好者というとこは親しみわいたけど。自分が宿泊した宿に死体が埋まってて、でもそれはカモフラージュで…みたいな。短編だけあって、最初から犯人バレバレで謎要素は薄いしさくさく読んだ。
「ホテル・ラフレシア」 すげえ、名前からして猟奇、と思って読んだらぜんぜん猟奇じゃなくて、ホテルのミステリーイベントにやってきた助教授とアリスと心中事件。これも謎って言うよりサスペンスだな。ドラマチックではあったけどミステリではない。むしろイーグルスのホテル・カリフォルニアってそういう曲だったのか、みたいな・・・
●「異形の客」 アリス、温泉宿で事件に遭遇。だから事件あいすぎ。今回はわかりやすかったなー ひきこもりの大学生が殺される、友人が犯人。通り魔事件の隠蔽が真相だったんだけど、トリックよりは状況証拠というか、供述がだいぶあやしかった。たまにはこういうわかりやすいのがあると和む。
「201号室の災厄」 火村教授の災難。ロックスターの殺人にたまたま部屋を間違えた教授がまきこまれる。ま、苦しいトリックだなーと思ってたら案の定…ミステリではないなこれ。トリック捏造。
『山伏地蔵坊の放浪』 スナック「えいぷりる」常連の人々に、「さすらい人の夢」(ボヘミアン・ドリーム)というカクテルが好物の山伏が語るミステリ譚。語り手は「ぼく」ビデオショップオーナー青野良児。物語の冒頭にある山伏の解説が秀逸だった。勉強になる!!全体として小粋で洒脱。続き出ないかな~
「ローカル線とシンデレラ」 ご当地アイドルを救え!みたいな。クリスティのそして誰もいなくなったみたいな、乗客全員が共犯オチ。
「仮想パーティーの館」 仮想パーティーに紛れる山伏。バットマンとダースベイダーは間違えない。いくらなんでも。ゆえにわかんなかった。このトリックはありか・・・・?
「崖の教祖」 新宗教の教祖が爆殺される。話の内容的にとてもなんというかなじみが深かった。
●「毒の晩餐会」 遺産相続と隠し子。わかりやすい。どう考えても本人の服毒だろ。
●「死ぬときはひとり」 ヤクザの自殺。保険金詐欺。
「割れたガラス窓」 トリュフの晩餐に招待された山伏。割れたガラスによる犯行時刻偽装トリック、防弾ガラスがキー。しかしあたまのわるいあたしにはこのトリックはあまりぴんとこなかった。それよりも世界三大珍味が思い出せなくて気になった。トリュフ、フォアグラ、キャビアね。
●「天満博士の昇天」 特許泥棒の博士が殺される。うん、犯人はやつしか居ないと思っていた。トリックはともかく文章の書き方から。
7月追加
『朱色の研究』
紀州は行きたいと思ってたとこなのでちょうど勉強になった。太陽崇拝の話とか。
「夕焼け」キーワードに熊野、フダラク信仰まで出てくるのはよかった。中上健次の名も出てくるし、どうせ二上山だすなら折口しのぶの『死者の書』を暗示させても良かったんではー。
トリックは…①マンションの謎は分かりやすかったけど、②影の話はあんまり…三つの事件が繋がってるというのにリアリティがもてなくて、なぜかというとそれはやっぱり動機の部分に?という点があるからだなー。
アリスは共感してたが、片思いのオレかっこいい、みたいなのって正直…高校生くらいまでにしておこうぜ。そこまで自分を追い詰めるって・若干文学的過ぎてだめ、「若きウェルテル」みたような繊細な男性の心はようわからんわ。
せっかく文学にするんなら全編徹底的にやって、ペダンチックにしちまえばいいじゃんーって思う。けどある意味でキャラクター小説だからな、難しいのかな…
『作家小説』 作家をテーマにした小説短編集。謎解き要素なし。
もう返しちゃったしあんまり覚えてない、純文的なものからホラーまで、
「ライティング・マシーン」はこええかな。書かなきゃ死ぬ、ってかんじがでてた。
8月追加
『スイス時計の謎』
「あるYの悲劇」
Y → ↓の書き損じ。犯人の出現パターンが従来の正等パターンと異なって、犯人が突然出てくるが、わかりやすかったしダイイングメッセージのトリックも面白い。平面ではなく三次元。山崎=やまもと。
「女彫刻家の首」
首がビーナスのものと挿げ替えられた死体。何のためか?
髪型が関連するだろうというのは分かった。しかし普通美容院帰りに帽子被る人は少ないぞ…
これも、犯人がラストで事故死する・有栖川作品では珍しいパターンではないのかな。
「神に裁いてくれなんて誰が頼んだ」という台詞がいい。
首がビーナスのものと挿げ替えられた死体。何のためか?
髪型が関連するだろうというのは分かった。しかし普通美容院帰りに帽子被る人は少ないぞ…
これも、犯人がラストで事故死する・有栖川作品では珍しいパターンではないのかな。
「神に裁いてくれなんて誰が頼んだ」という台詞がいい。
「シャイロックの密室」
犯人の独白から始まる。トリック重視、なのだから犯人の情報をもう少し欲しかった。磁石と閂のスライド。
「スイス時計の謎」
高校のエリート五人組同窓会メンバーの一人が殺され、時計の破片が落ちていた。その時計は五人が特別に作ったもので…時計にイニシャルを彫ったかどうか・徹底的にロジック中心の謎とき。地味…
わたしこういうの苦手だわー。そしてアリス「美少女」連呼されすぎ。
『モロッコ水晶の謎』
○「助教授の身代金」
犯人は最初から妻だろうなーと思っていた。殺害者と脅迫者が分離しているというのは作中でもほのめかされてたしね。それにしても逆探知ってものの数秒なんだな。そして携帯電話型の盗聴器の話が…こええー。普通にどこにでも使われてそうで。
犯人は最初から妻だろうなーと思っていた。殺害者と脅迫者が分離しているというのは作中でもほのめかされてたしね。それにしても逆探知ってものの数秒なんだな。そして携帯電話型の盗聴器の話が…こええー。普通にどこにでも使われてそうで。
「ABCキラー」
「助教授」~的な発想で、ABCDの殺人はどこかで分離してるんだろうとは思ったけど、残りの人間関係を読むのがめんどくなって推理やめた。どっちかというとアリス(作者)の薀蓄部分、クリスティのABC殺人事件のツッコミが面白かった。確かにLとかV、Pとかって日本じゃ無理。名前と地名をあわせるんだから…
「助教授」~的な発想で、ABCDの殺人はどこかで分離してるんだろうとは思ったけど、残りの人間関係を読むのがめんどくなって推理やめた。どっちかというとアリス(作者)の薀蓄部分、クリスティのABC殺人事件のツッコミが面白かった。確かにLとかV、Pとかって日本じゃ無理。名前と地名をあわせるんだから…
「推理合戦」
和んだ。推理するまでもないけどこういう掌編たくさん読みたい。キャラもの+ミステリーなんだからファンサービスにこういうの増えてもいいと思う。
「モロッコ水晶の謎」
これまたロジック中心…しかもロジックの中枢が占いにあるもんだから調子狂うわ。人間関係的な謎(畝美苗がボギーを好きだから屋敷を去りたくないだとか)はともかくとして、なぜ毒杯を殺したい人物に受け取らせたかの真相、きわどい。火村先生実はかなりロマンチストなんじゃね?それか全ての物事を客観視できる人間か。それは神だが。でないとこういう発想出てこないぜ。というわけで火村助教授の新しい一面を見たおもい。
*
「海のある奈良に死す」
アリスの同業者、赤星が取材旅行中に殺され、若狭湾に浮んだ。
海のある奈良=小浜というのは知らなかった。でも人魚=八尾比丘尼、ってのはかなり分かりやすかったなー。民俗的な要素を取り入れると私はがぜん好感度が上がる。。
あと面白かったのは駅の名前。合格祈願に切符買うとか、面白い。
しかし毒入りウイスキーを飲ませるためのサブリミナルビデオってのはちょっと強引な気が。
9/
●『双頭の悪魔』
学生アリスシリーズ三作目、前二作のヨミはぼろぼろだったけどようやくなんとなくつかめてきた。
四国の山奥、芸術家達が暮らすユートピアからマリアが帰ってこない。江神さんはじめ、推理研のメンバーはマリアを連れ戻しに行くが、土砂崩れで夏森村とユートピアが分断され、その双方で事件が起こる。
これまたロジック中心…しかもロジックの中枢が占いにあるもんだから調子狂うわ。人間関係的な謎(畝美苗がボギーを好きだから屋敷を去りたくないだとか)はともかくとして、なぜ毒杯を殺したい人物に受け取らせたかの真相、きわどい。火村先生実はかなりロマンチストなんじゃね?それか全ての物事を客観視できる人間か。それは神だが。でないとこういう発想出てこないぜ。というわけで火村助教授の新しい一面を見たおもい。
*
「海のある奈良に死す」
アリスの同業者、赤星が取材旅行中に殺され、若狭湾に浮んだ。
海のある奈良=小浜というのは知らなかった。でも人魚=八尾比丘尼、ってのはかなり分かりやすかったなー。民俗的な要素を取り入れると私はがぜん好感度が上がる。。
あと面白かったのは駅の名前。合格祈願に切符買うとか、面白い。
しかし毒入りウイスキーを飲ませるためのサブリミナルビデオってのはちょっと強引な気が。
9/
●『双頭の悪魔』
学生アリスシリーズ三作目、前二作のヨミはぼろぼろだったけどようやくなんとなくつかめてきた。
四国の山奥、芸術家達が暮らすユートピアからマリアが帰ってこない。江神さんはじめ、推理研のメンバーはマリアを連れ戻しに行くが、土砂崩れで夏森村とユートピアが分断され、その双方で事件が起こる。
何のために香水が使われたか・は、死体が発見された時点でほぼ検討がついたけど、時間に関わるトリックはめんどいので投げていた。シドさんか八木沢さんか、の二人に絞ってはいたけど。
夏森の方は手紙の受け渡し方が郵便配達夫の彼しかできないだろうというのを予想してたので、簡単だった。
関わり無い事件を繋ぐのは交換殺人しかありえないと思ってたし、香水の匂い当てのくだりで「匂いをかぎ分けられる本人が犯人だったらどうすんだろ」と思ってたのでこの辺はわりとわかりやすかった。
夏森の方は手紙の受け渡し方が郵便配達夫の彼しかできないだろうというのを予想してたので、簡単だった。
関わり無い事件を繋ぐのは交換殺人しかありえないと思ってたし、香水の匂い当てのくだりで「匂いをかぎ分けられる本人が犯人だったらどうすんだろ」と思ってたのでこの辺はわりとわかりやすかった。
別件の感想としては、郵便配達夫シュヴァルの話が出てきて嬉しかったね。中学時代から好きな逸話だ。あとパノラマ島の話もこの前読み直したばかりだったのでタイムリーだった。つうか最後に掲げられた参考文献、あたしも所有している本があった。にやり。トリック・犯人共にかなり当たって嬉しかったなー。
2008/05
△『女王国の城』
学生アリスシリーズ四作目。
姿を消した部長を追って長野 木曽にある信仰宗教団体の街に入り込んだアリスらは殺人事件に巻き込まれ、都市に閉じ込められる。
2008/05
△『女王国の城』
学生アリスシリーズ四作目。
姿を消した部長を追って長野 木曽にある信仰宗教団体の街に入り込んだアリスらは殺人事件に巻き込まれ、都市に閉じ込められる。
今回は江神氏が囚われてたり過去があきらかになったりと大活躍でした。でも正直、中盤だれた。あと一人称が頻繁に入れ替わるとこがあってよみづらかった。
トリックはこれが一番易しかったなあ。ただ文章は前の方が好きかも。洞窟のナゾはイヤリングの記述が思わせぶりだったのでわかりやすかったし、そう考えたら犯人は当時子供だった誰かだろうと。ついこないだYの悲劇を読んだばかりだったしそういう先入観があったのかもわからん。冒頭の暴走車も、なーんかひっかかってたらちゃんとなぞかけがあって、やっぱりこの作者フェアだなーと改めて。あやしいところは全部ちゃんと裏がある(笑)
ただトリックはともかく動機とか考えるのめんどうで、途中から投げた。
自分のかつての専門分野に被ってて読んでて辛いものがあった、UFO信仰と女教祖と新宗教……いろいろモデルが髣髴としたわ、P・Lとか、T教とか。そして正直推理小説を読む気力の無いときに読んだのでななめよみはいなめない。
トリックはこれが一番易しかったなあ。ただ文章は前の方が好きかも。洞窟のナゾはイヤリングの記述が思わせぶりだったのでわかりやすかったし、そう考えたら犯人は当時子供だった誰かだろうと。ついこないだYの悲劇を読んだばかりだったしそういう先入観があったのかもわからん。冒頭の暴走車も、なーんかひっかかってたらちゃんとなぞかけがあって、やっぱりこの作者フェアだなーと改めて。あやしいところは全部ちゃんと裏がある(笑)
ただトリックはともかく動機とか考えるのめんどうで、途中から投げた。
自分のかつての専門分野に被ってて読んでて辛いものがあった、UFO信仰と女教祖と新宗教……いろいろモデルが髣髴としたわ、P・Lとか、T教とか。そして正直推理小説を読む気力の無いときに読んだのでななめよみはいなめない。
うっかりすると忘れる。
*
宮崎市定 『中国文明論集』 岩波文庫のやつ。「羨不足論」(奢侈論)が面白かった。時代によって奢侈の定義が異なるというのはあたりまえのようでいて気付きにくい・毘沙門天信仰がミスラ神だったとかいろいろ面白かった、一冊手元に欲しい。
辺見庸 『反逆する風景』 『ものくう人々』の補完的な書だけどやっぱり読み物としては後者のほうが面白いのは否めない。作ろうと思って作ったものと作意の無い文章の差異かしら。
A・タブッキ 『夢の中の夢』 青土社1994 ダイダロスからカラヴァッジョ、ランボー、チェーホフ、フロイトなんかの「夢」を小品にしたもの。やったもんがち的。ダイダロスの「迷宮」と「叶わぬ恋」、このイメージは好き。
ジャン・ジュネ 『葬儀』 やっぱ最悪。久々に読んだけどなじめない。読んでて心から気持ち悪くなれる本なんだよねえ、そういう意味ですごいと思う。生理的嫌悪。ジャンヌダルクの生理の話なんか、よくそんな下品かつ最低最悪な想像が出来るよな、と。死んだジャンは英雄だったか否かそれすら忘れてしまったけどただあの途方もない気持ち悪さだけは覚えている。
永井荷風 『夢の女』 貧しい家族を養うため娼妓に身を落とした明治の士族の娘の話。さもありなん。妹が駆け落ちしてしまうくだりに衝撃。女は強い。ゾライズム。
*
A・有栖川氏の国名シリーズを何冊か読んだけどまたそのうちまとめて感想書く。初期のものから順に読んでるんだけど次第にこの人の書き方に慣れてきた、ら、謎解きの要がどこに置かれてるのか段々判るようになってきた。すなわちどういう部分を「読ませたい」のかということで、それは半七のほうもそうで、段々岡本綺堂の文章に慣れてきたら半七の語り口…読者に謎の全てが開示されず、肝心なところは半七が全部語ってしまうというやり口に慣れてきた。そういう面白さもある。
*
宮崎市定 『中国文明論集』 岩波文庫のやつ。「羨不足論」(奢侈論)が面白かった。時代によって奢侈の定義が異なるというのはあたりまえのようでいて気付きにくい・毘沙門天信仰がミスラ神だったとかいろいろ面白かった、一冊手元に欲しい。
辺見庸 『反逆する風景』 『ものくう人々』の補完的な書だけどやっぱり読み物としては後者のほうが面白いのは否めない。作ろうと思って作ったものと作意の無い文章の差異かしら。
A・タブッキ 『夢の中の夢』 青土社1994 ダイダロスからカラヴァッジョ、ランボー、チェーホフ、フロイトなんかの「夢」を小品にしたもの。やったもんがち的。ダイダロスの「迷宮」と「叶わぬ恋」、このイメージは好き。
ジャン・ジュネ 『葬儀』 やっぱ最悪。久々に読んだけどなじめない。読んでて心から気持ち悪くなれる本なんだよねえ、そういう意味ですごいと思う。生理的嫌悪。ジャンヌダルクの生理の話なんか、よくそんな下品かつ最低最悪な想像が出来るよな、と。死んだジャンは英雄だったか否かそれすら忘れてしまったけどただあの途方もない気持ち悪さだけは覚えている。
永井荷風 『夢の女』 貧しい家族を養うため娼妓に身を落とした明治の士族の娘の話。さもありなん。妹が駆け落ちしてしまうくだりに衝撃。女は強い。ゾライズム。
*
A・有栖川氏の国名シリーズを何冊か読んだけどまたそのうちまとめて感想書く。初期のものから順に読んでるんだけど次第にこの人の書き方に慣れてきた、ら、謎解きの要がどこに置かれてるのか段々判るようになってきた。すなわちどういう部分を「読ませたい」のかということで、それは半七のほうもそうで、段々岡本綺堂の文章に慣れてきたら半七の語り口…読者に謎の全てが開示されず、肝心なところは半七が全部語ってしまうというやり口に慣れてきた。そういう面白さもある。