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ゆめ か うつつ か
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やわらかい匂いで目が覚めた。

露にしとど濡れそぼった体は、戸外で夜を明かしたことを意味している。

季節は春、夜はまだ明けきらず、薄明の中、どこからか鳥の声がする。ふわり、何かがわたしの頬を掠めた。つい先ほどから、優しくわたしの体に降り注ぐ羽のような感触がある。わたしはまぶたを閉じたり開いたり、しばしまどろむ。

やがて陽がのぼり、山のふちを朱に染める。こぼれるような光があたりを照らし出してはじめて、わたしは桜の花弁をしとねに眠っていたのだと気付く。

そうだ、わたしはこの山に桜を観にやってきた。樹を探して山深く分け入るうちに睡魔に襲われてここに身を横たえたのだ、とわたしは思い出す。またふわりと花弁が降ってくる。

見上げると、そこは視界を埋めつくすほどの、桜。

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①バスは街を抜け、荒野をとろとろと走っている。

輝くような晴天だが、太陽は空の低いところを這うように移動してなかなか沈まない。と、いうことは、西へ向かっているのだな、とわたしは思う。

時折幻のように現れる平屋は土と枯れ枝で出来た粗末なもので、軒先にはキラリと光るガラス瓶が並ぶ。「あれは、この土地の珍味だそうだよ」と、後ろの席の男が言う。「黒蜥蜴をね、ああやって天日に干して、スープのだしにするんだ」。

延々と続く侘しい風景にたまらず来し方を振り返ると、毒々しいほど紅に染まった雲がもくもくとわき上がっている。

あの場所には夕べが訪れているのだろうか。この真昼はどこまで続くのだろうか。わたしはどこへ行くのだろうか。

バスはとろとろと走り続ける。


②歯を磨いていると、口の中から止めどなく土が出てくる。土は後から後からわたしの口から湧きだしてくるので、歯を磨けば磨くほど口の中は土で溢れてゆく。



ようするに、はじめから罠だった。



わたしは博士の助手だ。

博士は時空間移動の権威であり、
古代生物学の大家であり、
古物鑑定の専門家であり、
人間行動学の碩学でもある。

あまりにも雑多な分野に首を突っ込んでいるため詐欺師やペテン師のたぐいだと博士をののしる人もいるが、つまり博士は、本物の天才なのであった。

博士の偉業のなかでもっともすばらしいものは、タイムマシンの発明である。

博士は文字通り世界中のいたる処、いたる時の中から珍しいものを探してきては、それを大富豪の好事家たちに高値で売りつけていた。そうして莫大な研究費用をひねり出していたのだ。正直言って博士には敵が多い。彼にとっては好奇心がすべてで、それ以外のものは塵芥に等しかった。金持ちや貴族など特有の優越感を持つひとびとにとって博士のそういう態度は侮辱以外のなにものでもないようにうつったらしい。



水棲動物マニアであるX夫人主催のその会で、博士とわたしは特別ゲストとして悠然と水槽の間を闊歩していた。ルビーのうろこを持つ親指ほどの金魚、七色の魚が群れとなって泳ぐ虹の魚群、きらきらと真珠化した巨大なサメの歯や、世にも美しい音色で鳴く亀。

そうした珍しい動物の鑑賞会後、夫人と博士と助手のわたしはタイムマシンで7000万年前に乗り込み、「シーラカンスの刺身」を客に振舞う予定だった。ところが――夫人はナイフで博士を魚のようにかっさばき、タイムマシンを奪うと、わたしを7000万年もの昔に放り出してしまった。

まったく博士ったら、と わたしは博士の遺骸を眺めて呟いた。
脳みそばかり働かせて、腕っ節のほうはからきしなんだからな。

そしてわたしは落ち着いて、7000万年後の博士にあてた手紙の暗号文面を考え始める。問題はその手紙をどうやって博士に届けるかだが、なあに、心配はいらない。博士自身にメッセンジャーになってもらおう。
暗号を骨に刻んで、あとはよさそうな土地に埋めてしまうのが一番だろうか。それか、樹液にでも突っ込んでおけば、博士は7000万年後に輝く琥珀となってよみがえるだろう。何せ「白亜紀の人間の化石」なんてオーパーツ、現代の博士が放っておくわけがない。まさかそれが自分の化石だなんて思いもしないだろうけれど。

7000万年後、博士はわたしの書いた手紙を発見し、解読し、そしてタイムマシンで助けに来てくれるはずだ。
その点について、わたしはまったく何も心配してはいなかった。


***


パラドックスの問題はおいといて。
こういう複雑なストーリーを夢で見たのは初めてかもしれない。



螺旋状の薔薇庭園を、大きな銃を抱えてくるくる降りていく。

空は目を刺すように眩しく青く、わたしは俯いてひたすらに走る。Down、Down、Down……下へ、ひたすらに、下へ。

鮮やかな紅白の薔薇の花弁が緑の葉に降り注ぐなか、枯葉色のスカートを履いた女の死体がいばらに埋もれているのが見える。

金色の靴を爪先に引っ掛かけた脚だけが投げ出されている横を、這うように駆け抜けた。鮮やかな緑金色のスカーフが所在なげにひらひらと舞っている。

この庭は死骸だらけだな、と私は思う。

底までたどり着いたら、とにかく休みたい。重い銃を投げ棄て、あの死体のように体を横たえ、目を閉じて。

ねむりたい。


ヘリポートで待ち合わせをしていたのだが、時間に遅れたわたしを置いて、ヘリは離陸してしまったらしい。

しばらく困り果てて空を見つめているうちに、突然わたしは自分にジェット噴射機能が付いていて、空を飛べるのだということに気づく。

それで、夢中でヘリコプターを追いかけた。しかし飛んでみてわかったが、ジェットというのはなかなかに体力を使ううえ、方向を定めるのがえらく難しいのだ。

結局わたしは、ヘリに『追い付いた』、いやむしろ『突っ込んだ』。

衝撃でバランスを崩したヘリは、緩やかに墜落した。斜めに傾いだ世界はちょうど夜が明けるところで、空は透きとおった燃える薔薇の色をしていた。そのなかを、わたしたちはゆっくりゆっくり墜ちていった。まるで一時間もそうして朝に向かって進んでいくような気がした。

そうしてヘリはそのまま森に落ちた。わたしは壊れたヘリコプターのなかでごろりと横になった。待っていればそのうち助けがやってくるだろう、なにせヘリに追い付くのは一苦労で、わたしはくたくたなのだ……





社内に食堂が出来た。
ビュッフェ形式だと言うので喜んでせっせと食べたいものを皿に取り分けた、

松の実入りお粥 飴色の魚の煮付け チキングリル 蒸し野菜 色とりどりの果物 杏仁豆腐……。

ところが、最後にお茶を持って戻ってくると、皿の上は無惨に食い荒らされている。どこの誰かと憤りつつ、もう一度盛り付けても、ちょっと目を離した隙に誰かが食べてしまう。食堂に居て素知らぬ顔をしている他の人々が急に憎らしく思えてきて、わたしは、手にしたタロ芋蒸しパンを怒りを込めてかじる……

と いうところで目が覚めた。悔しさのあまり泣きそうだった。

ので

その日のうちにmとビュッフェに行って鬱憤を晴らした。





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