忍者ブログ
ゆめ か うつつ か
[3]  [4]  [5]  [6]  [7]  [8]  [9]  [10]  [11]  [12]  [13
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

お隣におかしな人たちが集団で越してきて、一週間経った。

新しいお隣さんは少なくとも二十人程は居ただろうか、大半はぼくのパパくらいの年頃のおじさんで、それに何人か女のひとも居た。お隣はそんなに広い家ではなかったし、奇妙なことに彼らには誰も決まった勤めが無いようで、いつも交代で庭をぶらぶらしているか屋根で日光浴しているか、その誰もがギラギラと異様な熱心さでうちを覗いてくるので、薄気味悪いことこの上なかった。いつもおっとりと物静かなお姉ちゃんも、「何だか気持ちのわるい人たちね」などと肩をすくめたほどだ。





庭越しにうろうろしているお隣さんの、できるだけ優しそうなおばさんを選んで話しかけてみた。「お隣さんこんにちは!何をしているの?」その人は雷に打たれたようにびくりとして、それからひきつったような声で言った。「わたしたち、お掃除をしに来ているの」「掃除?どこの?」女のひとは振り返りもせず走り去った。ママにこのことを言うと、かおいろを変えて怒っていた。ぼくはいけないことをしたようだった。





『ぼくたちはお隣に監視されている』、と気づくまで、それから3日もかからなかった。ただでさえ病弱で家にこもりがちなお姉ちゃんはお隣の無言の暴力に怯えて一歩も外に出なくなってしまった。パパとママは不機嫌そうにいらいらしているばかりだ。ぼくはどうしていいかわからない。





今日ついにパパがお姉ちゃんをバスルームに閉じ込めた。ママは「もう耐えられない」とお隣に乗り込んでいき、それから帰って来ない。みんなお隣さんのせいだ、とぼくは思う。あいつら、悪魔に喰われっちまえばいいのに。





その夜はパパが一緒に寝てくれた。ぼくは不安でなかなか寝付けず、とろとろと浅い眠りを繰り返した。この世のものとも思えない悲鳴が闇をつんざいたのはそのときだ。ぼくは恐ろしさのあまりぎゅっと目を瞑っていたが、ものすごい力で布団をはがされ、頭から水をかぶせられたので、眠ったふりもできずにおそるおそるめをあけた。そこにはやたら厳かに着飾ったお隣さんたちがいた。「おい、このこは人間だぞ」とぼくに水をかけたとおぼしきおじさんが水差しを片手に言った。「かわいそうに、ずっと悪魔に囚われていたんだね」。

ぼくの隣には枯れ枝のように奇妙にまがりくねった猿のような動物の死体が、バスルームには針金のような毛がもじゃもじゃに生えた真っ黒な怪物が転がっていた。それはどうやらぼくのパパとお姉ちゃんらしかった。

お隣さんはぼくのことを救ってやったと思っているらしく、ぼくから感謝の言葉すら引き出そうとしたが、ぼくはただ悲しかった、どうしてパパとお姉ちゃん(そしてママも)を殺したんだ、何もわるいことをしていないのに。ぼくらは楽しくやっていたのに、どうしてこんなことになったんだ。そう思って、ただ、泣き続けた。





・・・・・・・・悲しい夢だった。



PR

満月の光に導かれ、海にもぐる。やがて水底に、幾重にもゆらめく海草に守られた城が見えてくる。近づくとそれは突兀たる奇岩から成り、まるで城らしくはない。しかし私にはそれが城だということが解っている。あたりは夜明けのような薄暮のいろ、涼しげな青に満たされ、かろやかなここちよさがわたしを包んだ。いくつもの道、いくつもの迷路を捌きながら奥へ奥へと進んでゆくと、突然視界が開け、広場のようなところへ出る。そこには大きな宝石箱があり、私はそれを開く。とたんにまばゆい光がわたしを包み込む。




 
わたしは見しらぬひとの頭をひざの上に乗せ、その髪を撫でている。もうずいぶんと長いこと、わたしはこうしている。そのひとは静かに、穏やかな寝息を立てている。それだけでわたしは息詰るような幸福を感じる。 そうしているうちに、わたしの髪は伸び、肩を覆い、背に流れ、地に着くほどにもなった。かのひとは目覚めない。わたしの足は大地に根が生えたように何も感ずることはない。 草が生いでては枯れ、樹木が育ち、やがて見る間にわたしの周りに道ができ、街が出来た。かのひとはその頃ようやく目覚め、伸びをし、そしてわたしを見つめた。その眸は澄んでいて、とても美しかった。 「おはよう」 わたしは言った。 「おはよう」 かのひとも言った。 「ずいぶんと眠ってしまったようだね」 わたしはうなずき、ためらいがちに立ち上がる。かのひとは優しく微笑し、うながした。 「さあ、行っておいで」。そう、今度は、わたしが旅立つ番なのだ。
 




十歳くらいの頃に見た夢。
よほど印象深い夢はこうしていついつまでも覚えている。

 

ひどい頭痛で目が覚めた。

ああそうか、昨晩は幼い主人のいたずらで、毒キノコを食べさせられたのだ、と思い出す。

わたしはお屋敷で、こましゃくれて凶暴な子供の家庭教師をつとめているのだ。しかし、ちょうどいい、寝込んだのを幸いにこのまま仕事をうちやって気心知れた使用人仲間と飲みあかそう。こころ弾む思いで痺れた手足で起き上がり、そろそろとドアを開けると、そこに主が居た。
瞬間、卒倒しそうなほど落胆したわたしに、彼は嬉しそうに言った。

「元気になったな。さあ、来るんだ」

そうしてむりやり手を牽かれ連れられて行った先には、山ほどの宝物が積まれていた。

握りこぶし大のスノードームは紐を引くと四季が移り変わり、小さな真珠が雪のようにぽろぽろとこぼれる。淡い黄緑色をしたふきのとうのペンダント、銀細工のまつぼっくり、夕陽のような色をしたザクロのエキス……。
「全部やるよ」

だから嫌いにならないで。と、呟いた子どもの、小さくて熱いてのひらの感触に、目覚めた後ひどく心残り。


夜中に、何かとても恐ろしい夢を見て目がさめる。やたら喉が渇いていたのでキッチンに水を飲みにゆくと、男がふたり居る。首からおびただしい量の血をぶちまけた死体と、その血にまみれうずくまった裸の男と。

…………喉がカラカラだ、とわたしは思う。水を飲まなければ。グラスを取ろうと右手を上げかけ、わたしはいつの間にか血塗れのナイフを握っていることに気付く。

「……何が始まるというの」

呆然と呟くと、死体でない方の男がふと顔を上げ、言った。

「終わったばかりだよ、お嬢さん。俺の悪夢はね」

――さあ、あんたの悪夢だ――

その言葉に誘われるように、わたしは男を殺すためナイフをふりかぶる。


半月の真夜中、窓のそとに、ひっそりと咲いている白い花が見えた。

わたしは喉が渇いたので階下へと降りてきていた。冷たいミルクをコップに注いでいると、眠っていた犬がむくりと起き上がり、よりそってくる。その穏やかな、やさしいいきものの呼吸を聞きながら、わたしは、月の光を照り返して白というよりもはや銀のしずくのような花を見ていた。そこだけ月の世界のような、地球上ではないような、荒涼として凄絶な光景だった。

――かつてこうしてミルクの入ったコップを片手に、途方にくれたことがあった――

遠いときを思い出そうとわたしは束の間たたずんだ、が、見る間にコップはひび割れて硅砂となり、犬は白骨となって崩れ落ち、窓や壁は腐食していく。

ただ花だけが、つきあかりの下、凍ったように咲いていた。





・・・・・・・目覚めるたびに違う場所に居るような気がするのだった、わたしは、どうも夢見がよくない。

「夢くらい好きなのを見なさい、体に悪い」

そういって友人はわたしをコンビニに連れて行くと、いろとりどりの小さなカプセルを指し示すのだった、

密林を鳥となって飛ぶの夢 春の霞に包まれ惑う夢 宇宙を流れ星となって進む夢 海の中をくらげとなってただよう夢・・・・・・・・

「これを のめば すきな ゆめが みられる のだよ」

まるで入浴剤のように安易でここちよい夢の群れを前に、わたしはうんざりして一刻も早くこの夢から目覚めたい、と願うのだった。


カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
ryu
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
忍者ブログ [PR]